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ゾット帝国外伝 丘の民の伝説編  作者: 剣竜
第4章 交錯する3人の主人公たち
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第九十八話 吠えろ!幻影光龍壊! メノウvsショーナ(後編)

『ゾッ帝の個人的な考察No.00』


これまでゾッ帝考察を書いてきましたが、結構溜まってきたので一旦別のところにまとめたいと思います。


「いま見せよう。ショーナ。ワシの真の力の一端を…!」


 その言葉と共にメノウが再び構えを取る。

しかしそれは、いつもの東洋拳法を模倣した物では無い。

今まで見せたことの無い、奇妙な構えだった。


「何が来る…!?」


 ショーナが身構える。

やはりメノウの構えに隙は無い。

下手に攻撃を仕掛けてもカウンターを受けるのがオチだ。

しかしそんなことはわかっている。

だからこそ、攻撃をしなければならない。


「(あれには何かがある。無理やりにでも止めてやる!)」


 戦闘時の構えには必ず意味がある。

それが技を最も出しやすい型である、力を最大限に引き出せるという意味の型。

精神的な安定を求めるための型もある。

もちろん、その他にもさまざまな意味が込められた構えがある。

しかし、今のメノウがとっている構えはそれらとはまた違う『何か』だ。


「臆せず来たか…!」


「当たり前だろ!」


 彼女のとる奇妙な構え。

そして身に纏った不思議な魔力。

それらすべてがショーナの警戒心を掻き立てる。


「それは褒めよう。じゃが…」


 メノウが一歩前に出る。

構えを取ってから初めて彼女が動いた。

たった一歩だった。

しかしショーナには何故か、その一歩が重く大きなものに見えた。

メノウが歩いただけ、それだけで圧倒されそうになる。

そのプレッシャーを跳ね除け、メノウへと攻撃を届かせようとする。

しかし…


「まだまだじゃ!」


 メノウの叫びと共にショーナの攻撃がかき消される。

そしてショーナの身体も数メートルほど吹き飛ばされてしまった。

受け身を取り、改めてメノウの方へと視線を移す。

そこに立っているのはメノウ。

いつもの彼女だ。

しかし、やはり『何か』が違う。

まるで数十メートルもの巨躯を持つ生き物を相手に戦っている、そんな錯覚さえ覚えた。


「なるほど、それが竜の力ってやつか…」


「本気でいくと言ったからのぅ」


 軽く左手をふり降ろすメノウ。

それだけで周囲に強風が吹いた。

ただ手を動かしただけだというのに。

今の彼女が纏う不思議な魔力、あれの作用だろうか。


「本気…か…!」


「じゃがこの力は長く使えん。悪いが一気に終わらせる!」


 メノウが地を蹴り一気に距離を詰める。

動くだけで地面が抉れ、爆風の様に激しい風が辺りに吹き荒れた。

それと共に魔力もより強くなっていく。

いままでとは違う、そう感じたショーナは回避を最優先。

全身の力をフルに使い、なんとか彼女の攻撃を避けて見せた。


「ずぉぉぉぉッ!」


 勢いを殺すことが出来ず、メノウが地面に攻撃を暴発した。

幻影光龍壊でもなんでもない、たんなる拳による一撃だった。

しかしその一撃で地面に大きな爆撃痕のようなものが出来上がった。

ただのパンチにもかかわらず、『単純な破壊力』だけならば通常時の幻影光龍壊を遥かに超えているだろう。


「うそだろ…」


「威力までは完全に制御できん。ショーナ、お前さんが避け続けて見せろ!」


 再びメノウが攻撃を仕掛けた。

それを再び避けるショーナ。

彼女の攻撃の癖はある程度把握している。

技を使うならばともかく、今の彼女がしているのは単なる突きの連続だ。

威力はともかく、それならばなんとか避けることが出来る。


「(ふたりで特訓した時と、クセが同じだからな…)」


 特訓の際にメノウが出した拳と今の攻撃の連打。

威力こそ比べ物にならぬが、そのパターンはほとんど同じものだった。

特訓の時を思い出しつつ、攻撃を紙一重で避けるショーナ。


「ショーナ」


「なんだ?」


「お主、ワシの攻撃を読んでおるのか?」


「ああ。それにまた少しだけど『驚いた』だろ?」


「…あ!」


 先ほどの戦いの中でショーナが言った通り、驚きと同時にメノウの動きが一瞬止まった。

その隙を突き、ショーナが攻撃を仕掛けた。

彼の放った衝撃波を両手で受け止め威力を殺す。


「なかなかやるのぅ」


「お前のことなら何でも知ってるからな!」


「そうか。ワシもお主のことはよく知っておる」


 その声と共にメノウが地を蹴り距離を詰める。

それとともに左手から手刀を放った。

手刀は避けることが出来たショーナ。

しかしその際に手刀から発生した衝撃波を避けることはできなかった。


「うおッ…!」


「目に頼り過ぎ。さっき言ったじゃろう?」


「くっそ~…」


「このままでは無駄に消耗し続けるだけじゃな。ならば…」


 メノウの攻撃はショーナに読まれている。

しかしメノウもまた彼の攻撃パターンは全て把握している。

このままでは単なる持久戦となってしまう。

それでは面白くも無い。


「これでどうじゃ!」


 地面に拳を放つメノウ。

大地に異常な力が加わり地面が変形していった。

隆起、陥没。

ただの拳の一撃でバトルフィールドそのものが作り変えられていく。

先ほどまで平坦だった土地はあっという間に荒地に変化した。


「ただの拳一撃で…!」


「この勝負もらった!」


 先ほどまで纏っていた魔力を解き、隆起した地面の頂上にメノウが立つ。

そしてそこから飛び降りるとともに勝負を決する最後の攻撃を仕掛けた。


幻影(ファントム)…!」


「やっぱりそれで来たか!」


 メノウが最後に使う技。

それはやはりこの攻撃しかない。

勝負を決する最後の攻撃。

それは…


「光龍壊!」


「ならこっちも使わせてもらうぜ!幻影(ファントム)光龍壊!」


 二人が同時に放った幻影(ファントム)光龍壊。

魔力を纏い全身で相手を貫く。

しかし今回は二人が同時に使用している。

純粋に威力勝負に持ち込んだのだ。

普通にやればショーナに勝ち目はない。

しかし…


「気付いておったか…!」


「ああ。龍の力を使うってのは結構魔力を消耗するみたいだな…」 


 ショーナの推測は当たっている。

メノウが使った竜の力は制御に多大な魔力を使う。

そのため短時間しか使うことが出来ない。

状態を解除したのも、メノウの魔力に限界が来たからだった。


「ぬッ!」


 二人の幻影(ファントム)光龍壊の拳がぶつかりあう。

こうなれば後は魔力、体力、気力。

それらすべてにおいて上回った方が勝つ。


「今のメノウになら…!」


 普通ならば一瞬で敵を殲滅できるほどの力を発言する竜の力。

かつて東アルガスタで合成魔獣型ハンターを瞬殺したほどの力だ。

それを耐えきったショーナの力には驚嘆せざるを得ない。


「今のワシになら…どうなるって!?」


「…くッ!俺の方も力が」


 メノウの魔力は既に限界に近づいていた。

しかしそれはショーナも同じ。

彼の場合魔力だけでは無く体力もほぼ限界だった。

いや、限界は既に超えている。

僅かに残った体力を無理やり魔法で底上げしているだけ。

その全ての力をこの幻影(ファントム)光龍壊に込めたのだ。


「うおおおッッ!」


「ぬッ…おおおぉぉぉぉぉ!」


 ふたりの叫び声が周囲にこだまする。

互いにほぼ全ての力は使い果たし、後は気力の勝負。

悠久にも思える一瞬。

その戦いを制したのは…メノウだった。


「ハァッ!」


「うッ…グァ!」


 メノウの幻影(ファントム)光龍壊、そして自らの放った魔力の衝撃に耐えきれず弾き飛ばされるショーナ。

十数メートルほど飛ばされ地面に叩きつけられ、その場に倒れた。

一方のメノウもほぼ全ての力を使い果たしその場に崩れ落ちる。

ふたりとも限界を超えて戦っていたのだ。

その戦いの結末は互いに引き分けとなった。


「大丈夫かメノウ…?」


「あ、ああ…じゃが結構効いたのぅ…」


 地面を這いつくばるようにメノウの方へと近づくショーナ。

そんな彼の手をメノウが掴んだ。


「…メノウ、お前の手ってこんなに小さかったっけ?」


「お主が成長したんじゃぞ」


「そうか…」


「疲れただろ、俺がせおっ…」


 そう言いかけるとショーナが再び倒れてしまった。


「ムリをするな。少し休め」


「そうだな…少し…休むか…」


 今回の戦いで二人ともかなりの力を消耗してしまった。 

本調子に戻るには少し時間がかかりそうだ。

そのときがくるまでしばしの休息を取ることにした。





--------------------



 数日後、予定通り二人はこの北アルガスタを旅立つこととなった。

次に向かうのは東アルガスタ。

かつてメノウが疾風の少女カツミと共に旅をし、四聖獣士と戦った地だ。


「もう行くのかい?」


「ええ。時間に余裕があった方がいいとおもいましてね」


 見送りにはあの二人が来た。

この北アルガスタの支配者シャム、そしてその連れの少女シャド。

シャムはフレンドリーに接してくれるものの、やはりシャドの方はまだツンとした態度をとっている。


「メノウちゃんは?」


「馬小屋からアゲートを連れてきてもらう様に頼みました」


「じゃあ今頃は馬用の貨車に載せている途中かな」


「そうですね」


「あ、そろそろ時間かな?」


「本当だ!また会いましょう、シャムさん」


「それじゃあ、またね」


 そろそろ東アルガスタ行きの列車が発車する時間だ。

乗り遅れぬよう、荷物を持っていそいで列車に駆け込むショーナ。

と、そこに…


「ショーナ!悪い、遅れた!」


「メノウ!」


 同じく列車に駆け込むメノウ。

アゲートは載せ終わったらしい。

それと共に列車も発車した。


「水かってきたぞ。あとパン」


「なんだ、それ買ってたのか」


「ふふふ、まぁの」


 彼に買ってきたパンと水を渡すメノウ。

列車内でも食事は買えるのだが、どうやら彼女は駅で買うのが好きらしい。

客席に座り窓を開けると、メノウはシャムとシャドに手を振った。


「じゃあのー!」


「またね、さよなら」


 それを受け、軽く手を振るシャム。

次に彼と会うのは王都ガランでの本戦となるだろう。

東アルガスタ予選を終えたその先だ。

窓を閉め、手に持った水を少し飲むメノウ。


「次は東アルガスタじゃな」


「ああ。そうだな」


「以前ミサキは言った。東アルガスタ予選が荒れると…」


「何が起こるんだ?」


「わからん。じゃが…」


「魔王教団の計画は…」


「絶対阻止してみせる…!」




次は東アルガスタ予選になります。

少し長めになるため、4.5章として投稿いたします。

(10話はいかないと思います。いや、わからんわ。断言するのやめとくわ)


五章に入る前に考察や設定集なども少し投稿します。

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