第一章 新しい家族⑥
「ぐぬぬ…まさか妾がこんなチンケな男に呼び出されるとは…
一生の不覚じゃ…」
とりあえず空間の割れ目から引き摺り出した幼女を捕獲してみた。
…まさか親父の適当教訓の
"ロープは常に持ち歩け"と"捕縛術は習得しておけ"が役に立つ日が来るとは…
「で、お前は一体なんなのよ?」
「教えて欲しければこの紐を解け!この無礼者が!!」
ミノムシ状態で怒鳴り散らす幼女。
「あっそう、じゃあさよなら。
火穂、行こうぜ。」
「え、ちょっ…」
「おい!妾をこの状態で放置するつもりか!?おい、こら、待て…、待てってば…待ってよう…ふぇえ…」
泣いた!?以外と豆腐メンタル!
「あんた…なにこんな小さな女の子泣かせてるのよ…」
火穂にも白い目で見られてしまった!
「わ、悪かった、ほどいてやるから名前とか教えてくれ。」
「ひっく…もう、おいてかない?」
なんだこの子!泣くと可愛い!
そう思ったが内心でとどめて紐を解く。
「こほん、では気をとりなおして…
妾はミスリル!お主の持っているその銀色の"魔女の鍵杖"の精霊なのじゃ!
もっと敬うがよいわ!あーっはっは!!」
途端に元気になり、さっきまでの泣き顔が嘘のように自己紹介を始めるミスリルという幼女。
「ミスリル…?どこかで聞いたことあるような…」
「なんじゃお主、"錬魔銀"を知らんのか?」
思い出した。たしかRPGとかで出てくるオリハルコンとかと一緒に出てくる大体が入手困難な鉱石系アイテムだ。
「で、"みーすんちゃん"が杖の精霊だとすると、お前と契約することで俺は魔法を使えるようになるってことか?」
「何をするにも3日かかる本に乗って移動している小さいヤツと同じようなあだ名を付けるな!キャラが被って不愉快じゃ!」
ほう、此奴はアニメ『超珈琲ゲーム カプテューヌ』を知っているのか…
それはさておき。
「まぁ出来ぬことは無いが、結構訓練が必要じゃぞ?」
「え、直ぐに魔法は使えないのか?」
「妾と契約するだけで魔法が使えるなら猿でも出来るわい。」
ん?なんか火穂にも同じ様なことを言われたような?
「まず、妾の魔法態型は三つある。
一つ目が基本として、妾自身の魔力を使用者に供給して魔法を使う。
これは手軽だが、あまり強力な魔法が使えない。
二つ目はこれの応用。魔女の魔力と妾の魔力を融合させて、使用者に供給して魔法を使う。
この場合は、対象と身体を一時繋げる必要がある。」
繋げる!?
なんかいやらしいなオイ。
「あんた、何想像してんのよ?」
「イエナニモ。」
白を切る。
「まあ、手を繋ぐとかでいいんだがな。この方法だと、強力かつお主らは属性魔法タイプの魔力を持っているから、属性を持つ攻撃が使える。」
なるほど。火穂の魔力なら炎属性。
風音なら風属性って感じか。
「そして三つ目。魔女自身が妾と接続して"属聖魔装"となること。」
お?なんか強そうなものが出てきたな。
「ねぇ、それって私達自身があなたと合体するってこと?」
「まぁざっくりと言えばな。心配せずともちゃんと後で戻れるからな?」
いや、戻れなかったら酷いだろ…
「超強力かつ使用者自身の強化も出来るが、展開できる時間が限られていて使用者と魔女がお互い強い信頼関係で繋がっていないとまず展開自体ができないという諸刃の剣だが。」
ふむ、いろいろあるんだな。
最終的には特訓次第で属聖魔装とやらを自由に展開できるようになるのが目標ってとこか。
ここのタイミングでチャイムが鳴り響く。昼休み終了か。
「そろそろ教室に戻るか。」
ミスリルは杖に戻り、二人で教室に戻る。
☆○□◇□○☆
授業終了後、俺と火穂は共に家路についていた。
クラスメイト達の質問攻めを適当に流し、ロリケンを火穂が陰で黒焦げにして学校を出た。
…やっぱ憶えてたんだな…
続く!
次回、帰宅途中の二人を襲う影が!?
新章突入
第二章 異端の影
乞うご期待下さい!