無題
「あの、そもそもハンニバルって何者なんですか?それに何の目的が?」
「それについては私から説明しても良いかしら?」
口を開いたのはユリアだった。
「まず、澄は中世にいた魔女という職業は知ってる?」
「ええ、一応。」
「魔女というのはう実は人じゃなくて魔族と呼ばれるものなのよ。」
何だそれは、聞いたことないぞ
そんなことはお構いなしにユリアは続ける。
「中世では魔族に対抗するため一方的に魔族を殺害していった。」
「それが『魔女狩り』という訳か」
「ええ酒井さん、その通りよ。これにより魔族は力を失い歴史から消えていった。ハンニバルはその魔族たちの末裔にあたるの。といっても生き残った魔族も少なくないし末裔が魔力を持つわけでもないからハンニバルも特別ではなかった。あることを除いて。」
「あること?」
「『先祖返り』〜つまり魔族の血を他の家族より濃く引いてしまったの。これによってハンニバルは魔力を持って生まれてきたの。ここまではいい?」
「う、うん。」
「澄、首を横に振りながらyesって言っても分からないわよ。」
「だっていきなり過ぎて...」
「とりあえず最後まで説明するわね。ハンニバルが願っているのは魔族の発展なの。そのために力を使って新しい世界を作ろうとしているわ。学校で新しい世界のルールを習わなかった?」
「それは、そのルールは、喜ぶべきものは歓喜の声を挙げ、悲しむべきものは悲嘆に暮れるものであった・・・だね。」
「流石酒井さんね。」
「だてに3浪してないよ。」
「魔族とは闇を好むモノ。この世界をハンニバルは暗黒と不安が覆う文字通り混沌とした世界にすることで喜ぶべきものつまり魔族たちは歓喜の声を挙げ、悲しむべきものつまり人間は悲嘆に暮れるものであったということになるの。」
「つまり、どういうことですか?」
「澄は読解力が足りてないわね。一言でいうと魔族ハンニバルが魔族がすみやすいような世界を武力で作り出そうとしているってわけ。」
澄は考えた
魔族?魔法?そんなのあるわけが無い。僕は化学部だぞ信じれるものか。でも二人が嘘をついている訳でもないし、一体なんなんだ?夢ならいい加減覚めてくれ。
「澄君、大丈夫かい?顔色が悪いよ?」
バタン!!
「え?澄?ちょっとどうしたの!?」
「まさか僕がつけた古傷のせいなのか?」
ぐ〜〜
澄の腹は大きな音を出した。
「そう言えば今まで何も食べてなかったわね。」
「ならこの先に川と小屋があるから一休みしよう。澄は僕が担ぐよ。」
小屋はかなり古く扉も壊れていた。
と思ったら壊れてなかった
(あれ、今この小屋壊れてたように見えたんだが・・・まさか!)
「その小屋は罠だ!」
澄がそう叫んだ途端、小屋が最初見たようなボロ小屋に戻り中から数人の♂が飛び出してきた。
「くそ、まさかばれるとはな・・・まぁいい!デスっちまいな!」
「Yes,my lord!」
そして、その♂たちはアーミーナイフ片手に襲いかかってきた。
「ちっもう追っ手が来てたのか、しゃーなしだな」
ビン底はそういうとポケットから石包丁を取り出した。
「ビn・・・酒井ダメだ!そんな武器じゃ!」
「ガキは黙ってな、俺がここをくいとめる、その間にお前らは逃げろ!」
「行くわよ!澄!」
「ビン底ぉぉぉぉぉ!」
「俺、この戦いが終わったらコンタクトにするんだ・・・」
それが、俺たちの聞いたビン底の最期の言葉だった・・・
「ここまで来ればひとまず安心ね・・・」
「そうだな、怪我はないか?ユリア」
「ええ・・・大丈夫よ」
ユリアはそう言いながらも悲しそうな顔をしていた。
「やっぱりユリア、ビン底のこと心配なのか・・・?」
「あれでも今まで共に戦ってきた仲間だから・・・」
「ユリア・・・」
「でも、これからは澄が側にいてくれる・・・だから、大丈夫・・・それに・・・」
「それに?」
「それに、ようやく二人になれた・・・私、多分澄のことが好き、よくわからないけどこの気持ちは感謝とかとは違うの・・・この気持ちが何なのか・・・確かめたい」
そう言ってユリアは澄を押し倒した・・・
ドサッ
二人はその場に倒れ込む
澄「なっっっっ!?
いっいきなりどっどうしたんだよ
さっきまでのクールなキャ…」
ユリアは澄の唇にそっと手を当てた
ユリア「私も分からないの、何でこんなことをしたのか
体が勝手に動いたというか何か私達の知らない世界の人が急な展開を要求したみたいな…」
澄「そっそうかやっぱりそうだよなユリアが俺のこと好きなわけないよな
アハハハァ」
しかしユリアは一向にどいてくれない、ずっと顔を赤らめたままであった
「……お願い」
ユリアの吐息が、耳元をくすぐる。
心臓がバクバクとうるさい鳴っている。
澄には、目の前の状況に、自身の欲望を抑えられるだけの理性など、存在していなかった。
澄はばっと身を起こすと、ユリアの肩口に手を当て、はやる気持ちを抑えながらゆっくりと押し倒す。
「きゃ……!!」
「……いいんだな」
「……ぁ……」
ギリギリのところで本能のままに動こうとする体をなんとか押しとどめ、最後の確認。
自分の体で、影がかかってしまっているユリアの顔は、それでもそうとわかるくらい、赤く色づいていた。
上気した息が、上がる体温が、部屋を熱気に包んでいく。
「……えぇ……澄になら……」
「……どうなっても知らないからな!!」
澄はそう叫ぶと、噛みつくようにその白い首筋に吸い付いた。
「んっ……!!」
ユリアが上ずった声を上げると、澄はさらに自身の情欲を高ぶらせる。
ユリアの髪から薫る、鼻先をくすぐるミルクのような匂いや、少しだけしょっぱいような、ユリアの汗の味。
何もかもが、澄の理性を破壊し、興奮させる。
細い首筋から、うっすらと浮いた鎖骨まで舌を這わせると、そのくすぐったいようで、快楽にも思えるもどかしい感覚が、ユリアを襲った。
「っ…ん、くっ……あっ……!!」
ユリアの表情がゆがみ、頬はいっそう紅潮する。
澄はその顔を見て、ごくりとつばを飲み込むと、ユリアの服の裾に手をかけた。
まるで内側から明かりを灯したような、透き通る肌がのぞく。
細く、触ったら折れてしまいそうなそのくびれに手を這わすと、ユリアは体をびくびくと小さく跳ねさせた。
いよいよ、と澄がその裾をたくし上げようとした時、ユリアがその手を掴んだ。
「澄……お願い……もう、我慢ができないの……」
「それって……どういう……」
「その……あなたのを……」
「俺のって……何のことだ……?」
「……うぅ……言わせ、ないでよ……!!」
ユリアは、先ほどまでとは違う、羞恥の赤色に頬を染める。
恥ずかしそうにもじもじと体を動かすユリアは、いじらしく、クールな様子からはかけ離れた可愛さを醸し出していた。
「……いい、のか……?」
「……言った、でしょ……もう我慢できないのよ……」
「ユリア……」
「澄……」
互いの吐息がぶつかる距離まで、顔が近づく。
潤んだ瞳が、澄を見上げる。
その、どこか懇願するような目に、澄は脳が沸騰してしまったかのような感覚に陥る。
そして、どちらからともなく唇が近づく。
ユリアの柔らかそうでベビーピンクの唇が澄のそれと重なる瞬間。
「――いい加減にしなさいよおおぉぉぉーーーーーーー!!」
そんな叫び声と、耳をつんざく轟音とともに、小屋の壁が破壊された。
「へ……?」
あまりの出来事に、澄はポカンと口を開いて固まる。
ぱらぱらと瓦礫が落ちる音と、崩れた壁のちりの向こうから、声が聞こえた。
「あたしが心配してきたっていうのに……あんたは何やってんのよ!!」
聞き慣れた声。
あまりにも、聞き慣れているその声は、ここにいるはずのない人間のもの。
だが、粉塵越しに見えるシルエットは、やはり見慣れたもので。
澄は反射的にその名を口にしていた。
「灯……!?」
「そうよ、あんたの妹の灯よ!!」
ちりの向こうから現れた少女――灯はその勝気な瞳でこちらを睨みつけ、ツインテールを揺らしながら、いまだにユリアの上に覆いかぶさったままの澄の元へカツカツと歩み寄る。
そのあまりにもな状況に、ユリアは決まり悪そうに目を伏せた。
「な、なんでお前がここに!?」
「……そうね、説明したいのは、山々なんだけど……」
灯はそこで言葉を切ると、右手に持っていた銃を振りかざす。
「まずは、いっぺん死になさい!!!」
光速に迫る(ように澄には見えた)速度で振りかぶられた銃の、そのグリップが澄の眉間に突き刺さる。
ほんとに死んでしまいそうな激痛が、ガツンと頭を揺らすと同時に、澄の意識はブラックアウトした。
次の瞬間澄にはフラグが折れる音が聞こえた
心が折れる音も聞こえた
ユリアはしんでしまった!
澄はめのまえがまっくらになった。
そして気付くとベッドの上に寝ていた
特に変わったことはあまりなくケガをしたところは見当たらないし気分がわるいわけでもない
変わったことといえば財布のなかのお金が半分になっていることぐらいだ
まぁ、そんなことは今はどーでもいい
一体ここはどこなんだ?
「なんだったんだ一体?確か何かすごく楽しい時間を誰かに壊されたような…思い出せねえー…
しかしそれにしてもここは一体…」澄は辺りを見渡したそこには普段生活をしている所とは何か違った物を感じさせた。
そんなことを思っていると突然澄の心に語ってくる声があった。
「お前は彼女を助けたくはないのか?」
「は?一体なんだ…どこから俺に話しているんだ…彼女、助ける?何か大切なものを忘れているきが…」次の瞬間澄の頭にあることばが浮かび上がった。
「ユリア!!!!!」
目の前にいたのはハンニバルだった。
「お前は誰だ!?ユリアは無事なのか!?」
澄はすぐには目の前にいるのがハンニバルとは気づかなかった。
「おやおや、少し記憶がなくなっているようですね、まぁ無理もありませんか。あいつの『力』はなかなか強力ですからね」
「『力』?いったいそれはなんなんだ?それにお前は誰なんだ?」
「おっと、本当に忘れてしまったようですね
私の名前はハンニバルですよ」
「ハンニバル… ハンニバル……思い出したぞ!ユリアをどうした!まさか殺すつもりじゃないだろうな!」
「さぁ、どうでしょうねぇ我々にとってユリアは危険因子でしかない。生かしておく意味がないですからね。」
「じゃあどうすればいいんだよ…指をくわえて眺めることしかできないのかよ…!」
「そうとは限りませんよ。今ここにいる私は影の私であって本物ではない。ここらへんにいる私の手下はお前の妹に倒されてしまいましたからね。そうそう彼女はもう捕まってしまいましたよ」
「灯が捕まっただと!どうすればいいんだよ!俺がこんなだめな兄だったせいで!」
「悔しいでしょうねぇ。この状態から抜け出す方法はただ1つ」
「なんだそれは?」
「『力』、それは一人に1つずつ与えられているもの。元から『力』の種類が決まっている者もいれば、自分の好きな『力』を作り出した者もいる。しかし、普通の人間にはその『力』を開放できないようになっているのです。だが私の手下、その中でも特に能力の高い者は私が『力』を開放させています。時々自分だけで開放させてしまう者もいますがね。あなたとユリアが、いや、あなたが小屋のなかでしたことは私の手下の『力』によるもの。灯は一人で幻を見てるあなたを助けに来たのですよ。まぁ彼女は捕まってしまいましたがね。どうです?手下になりますか?あなたならすぐに『力』を開放することができるでしょう」
突然の出来事にすべてが理解できなかった澄に残されたみちはただ1つ―
「ハンニバル、お前の手下になるよ。ただ忘れるなよ、手下といっても必ず裏切ってやるからな!」
「では契約成立ですね。あなたはハンニバルの手下となりました。『力』も直に開放されるでしょう。がんばることですね。さぁ、今のあなたを止める者は一人もいません。扉はあちらですよ」
「今は逃がしてやる、と?」
「そういうことになりますね」
澄は小屋を飛び出し走り出した。
澄の後ろ姿を眺めるのはハンニバルの他にもう一人いたなんて澄は知りもしなかったのだ。
???「いいの?あの坊やを野放しにして」
ハンニバル「くっくっく、すべては計画通りですよ」
???「ふふふ、あなたもずるくなったものね」