無題
澄「………うぅ痛っ
結構寝てたな」
そこには白い砂浜とヤシの木のような物しか見当たらなかった
澄「日本だよなぁ……ここ?」
そう言って携帯を取り出したが圏外にはなっていなかった
(上手く潮に拾われたか
…そういえばあの女の子は!?)
辺りを見たが誰も人気はない。澄は怪我を気にしながらも辺りを探し出した
「いてて……もうちょっとかっこよく避けられる気がしたんだけどなー……」
澄は腕に巻かれた布を上から軽くさするように押さえながら、呻き声とともに呟いた。
布にはうっすらと血の色が滲んでいる。
ちなみに布はカッターシャツの裾を破いたもの。
丈が短くなってしまったが、どうせ度重なる銃撃や爆発でボロボロだ。
もうこれは捨てよう。
そんなことを考えながら、澄は海岸沿いを歩きながら、少女の姿を探した。
「この辺にはいないか……となると」
この後ろにみえる小さなジャングルのような森の中にいるのだろうか。
……入るのか?
この中に?
虫やら蛇やらその他たくさんの何かが居そうなんだが……
……毒とか持ってたら死ぬぞ、俺。
そうして、澄が森を前にして二の足を踏んでいると、木が突然がさがさと揺れ、不気味な鳴き声が誰もいない海岸に響いた。
「……入りたくねぇ……」
澄は心底嫌そうに声を漏らす。
ふと、あの少女の顔が浮かんだ。
――お前は間違っている。
そう言ったあの少女の顔は、無機質で、無感情で。
でも、その瞳の奥には、深い憎悪と、悲しい決意がちらついていた。
「……あんなに可愛い子に、あんな顔させておくわけにはいかないよな」
澄は、はぁ、と息を吐く。
軽い諦めを込めて溜息をついた澄だったが、その顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた。
「俺"たち"は生き残るんだ。そのためなら、世界だって敵に回してやるよ」
ま、まずはあの子を見つけないとな。
今までの殺伐とした出来事を吹き飛ばすように、努めて明るく、楽天的に呟く。
澄はもう一度周りを見渡して、少女の姿がないことを確認すると、森の中に入っていった。
「にしても、ほんと歩きにくいな……」
澄は根が張り出し、蔦が這いずる地面を、一歩一歩足元を確かめるように歩を進める。
森のなかは、澄の懸念していたものほどは、悪くはなかった。
というより、異様に静か。
たまに木の幹をつたう甲虫がいるだけで、虫はほとんどいないし、動物だって見かけない。
聞こえるのは、風で木の葉が擦れる音と、時折響く鳥の声だけ。
澄はその異様さを感じながらも、今は少女を探すことが先決、と敢えてその疑問には目を向けず森の中を歩く。
その時、後ろで茂みががさがさと音を立てた。
「っ、何だ!?」
澄はばっと振り返り、身構える。
といっても、持っている武器は弾切れの拳銃のみという貧相な装備の澄は、内心ひどく焦っていた。
沈黙が流れる。
数十秒間茂みとにらみ合っていた澄は、何も起こらないのを確認すると、体の力を抜いて、安堵の溜息をついた。
「気のせいか……脅かすなよ……」
「――動くな」
かちり、と頭の後ろに何かが押し当てられた。
……これ、銃だろ。
どう考えても。
なんかひんやりしてるし。
かちり、とかいったし。
安堵からの突然の生命の危機に、澄は心臓をばくばくとさせながら、冷や汗をだらだら流す。
やばい。
やばいぞこれは。
これ一歩でも動いたら即パーンて頭はじけ飛ぶんだろ?
分かってる、皆まで言うな。
でも分かったところで、この状況からどう逃げ出すかなんて全く思いつかない。
頭の中をぐるぐると目まぐるしく回転させながら、澄は数秒間の静寂を味わう。
と、そのとき頭に当てられていた銃が離れた。
「…………?」
「……ごめんなさい、追っ手かと思ったら、あなただったのね」
「……え?」
パッと振り向くと、そこには先ほどの少女の顔。
少女は透き通るような白磁の肌を、羞恥で少しばかり赤く染める。
「えと……君は、さっきの……?」
「えぇ。……助けてくれたのよね?」
「あ、え、うん、まぁ」
澄はもごもごとどもりながら少女の言葉に応える。
というのも、典型的なモテない男子高校生の澄は、きわめて女性との対話経験が少ないからだ。
しかも相手は美少女。
緊張しないはずがない。
「ありがとう。あなたのおかげで助かったわ、澄さん」
「ど、どういたしまして……って、あれ、そういや名前……」
教えたっけ、と思って首を傾げる澄。
すると、少女はあぁ、と思い出したような表情になり、口を開いた。
「それは今から説明する。とりあえず私の名前から教えておくわ」
そして、少女はふわりと微笑んだ。
「私の名前はユリア。世界の終わりを終わらせるものよ」
「……え?世界の終わりを終わらせる…?もうすでに世界の終わりが始まってるみたいな言い方だなぁ」
「始まってるわよ、あなたも見たでしょ?ハンニバルが、さっきの男がしたことを。これからしようとしていることを…
悔しいけどあいつの計画はかなり進んでいるわ。早く私たちも動かないと取り返しのつかないことに…」
「ちょちょ、ちょ待て。確かにあいつは新たな世界がどうとか言ってたけど…つーか私たちって何だ?仲間がいるのか?」
「仲間はいるわ、澄もその中の一人よ。」
「…えっ?なんで俺も仲間なんだよ!つーかなんで名前知ってるんだよ!さっきもそうだったけど!」
「そうね、でも説明は後回しよ。まずはこの島を抜け出す方法を考えなくちゃ。
」
そういって歩き出すユリア。澄は合点がいかないことだらけだったが、とりあえずユリアに
ついて行くことにしたのだった。
すると、道端にあるものが落ちていた
「なんだこれ…」
澄はそう言ってそれを手に取った。
それは、見覚えのあるものだった…
「ビン底眼鏡?こいつはたしか…酒井の…まさか近くにあいつが…ユリアに言うべきか…一応言っておくか。」そう思ってユリアの方を向こうとしたその時、背後から物音がして、人の声がした「ようよう、お二人さんお似合いだねー。」
そこには某のび太が眼鏡を外したときのような3の目をした男が立っていた。
澄はなぜ眼鏡をつけていないのか疑問に思ったが、よく考えるとこいつが眼鏡をつけていないのは当たり前だ。
眼鏡は自分が持っているのだから。
彼はどうみても
お向かいの酒井さんだ。
数時間前に澄の溝を
殴ったその人だった。
「眼鏡返せや」
「ってことは、酒井さんも『世界の終わりを終わらせるもの』なのか?」
「そうよ、彼も選ばれた一人」
ユリアは頷くように言った。
「じゃあ、さっき
殴ってきたのは...」
「澄君が、ハンニバルの手下と思ったのさ」
酒井さんは眼鏡を
人差し指でずり上げ、
続けた。
「俺も最初は意味が分からなかったよ。
何せいきなり世界を救え、だからな。
そして、この世界に飛ばされたんだ。」
「この世界?」
「そう、僕らがいま
いるこの世界は現実世界じゃない。
家の外は砂漠になっていただろう?
この世界に来れるのは
選ばれた『世界の終わりを終わらせるもの』、
もしくはハンニバルの
手下ってことさ」
「それで俺がハンニバルの
手下だと思ったんですか...」
納得した澄だったが、もう一つ疑問があった。