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Disfear Bullet  作者: たる。
第五章 闇の中の真実
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page38 狂乱の鋭牙

「くすくす。良いわね、アナタの本気。楽しいわ。こんな頭の足りてない化物の相手より、ずっと楽しい」

 フィアはルインの死体の上に立ち、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべてクロナを見つめた。その様子は、この「命のやり取り」を遊戯として捉えてさえいるようだった。

「……わからないな」

 対するクロナの中には、疑問が渦巻いていた。

「何が目的だ。どうしてわざわざティアの姿を取って接触してきた? あの"依頼"はどういうつもりだ」

 「守ってほしい」。そう言った時、彼女が嘘をついているようには見えなかった。しかしそれが嘘であったことは、この光景が証明している。

 もしもこちらの命を狙っていたのなら、油断している隙に攻撃してくればよかった。不覚にも、隙はいくらでもあったのだから。

「今はそんなことどうでもいいじゃない。余計な言葉も疑念も、殺し合いの中には必要じゃないわ」

 フィアはおかしそうにくすくすと嗤う。答えるつもりはないらしい。

「答えろ。どうしてこんな回りくどいことをする。いや……、どうして"私を殺さない"?」

 再びの問いかけに、フィアの嗤いがぴたりと止む。

「……どうでもいいって言ってるじゃない」

 不快そうに小さく呟くフィアの微笑には、深い影が落ちていた。

「わからなくてもいいじゃない、そんなこと! 今はただ殺しあえばいいのよ!」

 乱暴に振るった鎌が衝撃波を放つ。

 何かがおかしい。そんな直感がクロナの脳裏を過ぎる。彼女は狂喜の裏に、何かを隠している。そしてそれは、彼女にとってさえ得体のしれない何かだ。

 考えながらその単調な攻撃をかわしている間に、フィアは再びあの嗤いを浮かべていた。

「さあ、もっと楽しませて頂戴。"ワタシを見て"、ワタシを殺しに来なさい……!」

 狂喜を滲ませて、フィアが鎌を振りかざす。

「この……!」

 真正面から突っ込むクロナ。銃剣の刃が、歪な笑みを浮かべるフィアの鎌と重なる。――その瞬間、クロナはあらぬ方向へ銃口を向け、引き金を引いた。

 銃口近くで弾ける爆風。その時フィアの目には、クロナが一瞬で姿を消したように見えただろう。

「ふざけるなぁッ!」

 クロナは反動の激しい魔弾を放ち、その衝撃で強引に動きを変えた。そしてフィアの懐に迫り、腹に剣先を突き立てる。

 腹に剣を刺されたまま、なおもフィアは嗤う。

「ああ、楽しい……。こんな風に自分と対等な相手と殺り合うのは久しぶり。でもそれ以上に楽しいのは……」

 刺された刃が握られる。手から血が流れ出すのも構わず、フィアは恍惚としていた。

「アナタがワタシを憎んで、全力で殺しに来てくれてること……。さあ、もっとワタシを憎みなさい。くすくす……」

「言われるまでもない……そんな風に嗤っていられなくなるまで、殺し尽くしてやる!」

 銃剣を更にねじ込む。そしてそのまま、引き金を引いた。

 眼前で激しい爆発が起こる。……銃口が歪み、自身すら巻き込まれる覚悟で、爆破の魔弾を放ったのだ。

「ッ……!」

 吹き飛ばされてなお、クロナはフィアの姿を捉えていた。受け身を取り、そのまま更に同じ魔弾を放った。反動で吹き飛ぶ体の動きを変え、吹き飛ばされるフィアに迫る。

 あまりにも強引な挙動。双方向から叩きつけられる力が体を痛めつける。

「ああああああああッ!」

 更に爆発、加速する。体が上げる悲鳴をねじ伏せ、剣を振りかざした。

 爆発の勢いのまま銃剣を振りきる。ボロボロになった刀身がフィアの体を荒々しく抉り、右肩から袈裟懸けに引き裂いた。

「っ……くす……」

 苦痛に声を漏らしながらも嗤いを保ち続けるフィアが、左腕をすっと持ち上げた。吹き出した血が固体化し、形を変えていく。

「させるかぁッ!」

「な……ガァッ!」

 剣を振り切った体をそのまま大きく回転させ、踵でフィアを蹴り落とす。矢の形を為そうとしていた血飛沫が、再び液体になって散っていった。

 クロナの蹴撃を受けたフィアは死体の山を大きく離れ、地面に落下する。あまりの勢いに大地が抉れた。

「カハ……く、ぁ……」

 呻き声を上げ、体を起こそうとする。しかし体は言うことを聞かず、力が入らないようだった。

 その間に着地したクロナは、倒れたフィアに向かって駆け出し、ボロボロの銃剣を回して逆手に握り締める。

「これで……」

 残る魔力を全て一点に凝縮させ、これ以上ないほど鋭い魔力の刃を形成する。

「終わりだッ!」

 両手でしかと握りしめた刃を、その胸に突き立てんと振りかざす。漆黒の刀身は月明かりさえ飲み込み、闇の塊となって襲いかかった。

「…………」

 フィアは抵抗することもなく、ただ、笑った。

「……!」

 あまりにも鋭い刃は、音もなく突き刺さる。

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