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Disfear Bullet  作者: たる。
第五章 闇の中の真実
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page36 確信

「ティア!」

 体を跳ね起こすと、そこにはあの白光ではなく、見慣れた部屋の壁があった。

 ……そこは、自室のベッドの上だった。

「どうして……」

 クロナは少しだけ混乱して、記憶を手繰り寄せた。確か自分は戦線にいたはずだ。そして最後に……。

「!」

 感覚が生々しいまでに鮮明によみがえる。着せられていた部屋着を思わずたくしあげ、自分の体を見下ろしたが、そこには傷ひとつ残っていない。あんなにも鋭く巨大な爪に引き裂かれたというのに……。

「……ティア……?」

 体には、あの、全身を包み込み、染み渡っていった光の感覚も、じんわりと残っていた。……ただの夢ではない……?

「目が覚めたですか、クロナちゃん?」

 ノックの音とともに、部屋の外から声が聞こえた。

「……ああ。入れ」

 答えると、リリアが入ってくる。手には治療道具を一式持っているようだった。

「よ、良かったのです……。流石のクロナちゃんも今度こそは死んじゃうかと思ったですよ」

「そんなことはいい。これは一体どういうことだ」

 全ての疑問を「これ」という言葉に詰め込んで投げつける。わからないことがあまりにも多すぎた。

 クロナの無茶苦茶な、しかし尤もな問に、リリアは少し考えてから、順を追って話し始める。

「……リリアはその場にいなかったので、聞いた話ですけど……。救援部隊がクロナちゃんたちの救助に向かった時、クロナちゃんはルインに、その……切り裂かれたそうです。その後は、なんとか他のリリーフも無事に撤退することが出来たみたいですけど、クロナちゃんだけはどうしても助からない状態だったみたいです。傷は心臓を抉り、骨を砕き、……体をほとんど完全に切断してたみたいですから……」

「ゾッとしないな……」

 想像以上に恐ろしい状態になっていたと知り、流石のクロナも身震いをする。一瞬で脳が情報を遮断したのも無理は無い。何せ即死の怪我だったのだ。

 しかしそれならなおさら、自分が無傷でいるのが理解できなかった。

「うちのリリーフにここまで治療に特化した奴がいたか? 公式ギルドにすら、ここまで腕の立つ治療リリーフはいないだろう」

「……それが」

 リリアは少し迷うような素振りを見せる。何か、言いづらそうな、口止めでもされているような……。

 しかしクロナは、言われずとも何者の仕業なのか予想できていた。

 フィアだ。彼女の治療は確かに強力だった。あれだけの力を持つドレッドなら、人間の致命傷を癒すくらいどうということは無いはずだ。

 ただ、一つだけ落ちない部分がある。

 ドレッドの魔力を流されたのだ。それもあれだけの怪我を癒すだけの量を。それなのに自分は苦痛を感じるどころか、夢のなかで安らぎを感じてすらいた。

 それに、夢のなかで逢った彼女は……。

「そのことで、合わせて伝えなくてはならないことがあるのです」

「なんだ」

「クロナちゃんが出ている間に、ディスフィアの残留魔力の解析が終わったのです、そしたら……」

「ドレッドの魔力が混じっていたのだろう?」

「違うのです。それだけじゃなかったのです」

「何……?」

 それを聞いて、まさかと、クロナの中に一つの可能性が閃く。

「……それはまさか……」

 もしこの可能性が当たっていれば、頭の中に渦巻いていた謎は一度に氷解することになるだろう。

 クロナは一息置いて、その可能性を口にする。

「それはまさか……。……私の、妹の魔力ではないだろうな」

「! ……はい、そのとおりです」

 やはり、か。

 魔力には個人特有の波形がある。そしてその波形は、親族のものであるとほとんど同じ形を形成する。……姉妹ともなれば、その形はほぼ一致するだろう。

 そして、その魔力がディスフィアに混じっていたということは……。

「……フィア……やっぱり、お前は……」

 残留魔力に含まれていた三つの魔力。クロナ、フィア、そして、ティア。

 全て合点がいった。彼女の容姿も、気味が悪いほどの演技力も、何もかも。

 クロナはゆらりと、操り人形のように立ち上がる。

「ク、クロナちゃん、まだ危険で……」

「邪魔をしないでくれ」

 自分を押さえつけようとするリリアを冷たく突き放す。静かな口調とは裏腹に、その目には、黒々とした狂気が炯々と輝いていた。

「武器を渡せ」

「ク、クロナちゃん……?」

「早く寄越せ。今すぐにでも行かなくてはならない」

 クロナの脳裏に浮かぶのは、憎き仇の姿。よりによって愛しき妹の姿を騙っていた化物。今なら全て納得がいく。何よりも憎んでいたドレッドを簡単に受け入れてしまったことも、姿も声も、本物と見紛うほどであったことも。

 そのはずなのだ。あれはティアを殺し、その魔力の根源たる魂を喰らい、自らのものとしていたのだから。本物を利用して化けていたのだ。

「早くしろ、リリア」

「は、はい!」

 クロナに気圧されたリリアが、慌てて工房に武器を取りに向かう。

「待っていろ、今にこの手で……」

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