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Disfear Bullet  作者: たる。
第四章 破滅の影
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page29 落ちる影

 鱗形ドレッドは、やたらと堅いことを除けばそれほど恐るに足る相手ではなかった。動きは遅く、攻撃も鈍い。特殊な力を持っているわけでもない。

 ただ、数が多かった。最初の十数体に続き、戦っている間にも空から次々と落ちてくるのだ。クロナが確実に数を減らしているにもかかわらず、周囲にいるドレッドの数はむしろ最初より増えていた。

「なんだか最近、群れのドレッドとばかり戦っているような気がするな」

 近づいてきた一匹を斬り捨てながら悪態をつく。こうしている間にも、数は増え続けていた。

「全く、気持ちが悪いったらないわ」

 フィアは相変わらず十分な力を発揮しないままクロナの背に立っていた。しかしさすがにこれだけの数に囲まれて無抵抗ではいられないようで、鎌を出さず、魔法だけを使って戦っているようだ。

「クロナ、また適当に魔力爆発させて一気に倒せないの?」

「昨日の今日でそんなマネが出来るか」

「ふぅん。さすがにそこまで人間辞めてはいないのね」

 つまらなさそうに言い捨てながら、魔法の槍を放つ。二体の鱗をまとめて射抜くが、狙いすましたかのようなタイミングで三体の鱗が目の前に落ちてくる。もうウンザリだといった様子で溜息を吐いた。

「もうイヤよこんなの……。クロナ、なんでもいいから片付けてくれない?」

「無茶を言うな。お前のほうこそ力は有り余っているだろう、まとめてどうにかしろ」

「ワタシだって昨日の今日で万全にはなれな……クロナ!」

 フィアの放った槍がクロナの頭上ギリギリをかすめる。クロナがとっさに身を捻ったその上で、鱗が貫かれていた。

「気を抜かないでくれる? 死んじゃったら元も子もないわ」

「余計なお世話……だ!」

 クロナの弾丸がフィアの頬をかすめて、背後に居たドレッドを撃ち抜いた。

「……乱暴ね。もうちょっとでワタシの頭が吹き飛んでたわ」

「悪かったな。この混戦ではまともに狙いも……?」

 憎まれ口を叩きながらまた背中合わせになって周囲を見回した時、クロナの目に奇妙なものが映った。

 それは、フィアが鱗を貫いた魔力の槍。今まさに粒子になって消えようとしていた。

 そうして空気中に溶けて消えゆく魔力の中に、何か別の物が混じっていた。フィアの真紅の魔力光に混じっていたそれは、白色をした光の粒のような……。

「クロナ、ボサッとしないで!」

「! ……ああ、とにかく片をつけよう」

 見間違いだろう。そう思うことにして、クロナは戦いに集中する。

 その後の戦いは数十分に及んだ。弱いくせに数ばかり多いドレッドを相手にジリジリとした消耗戦になるも、ようやく鱗を根絶やしにする。

「はぁ……はぁ……面倒な相手だ……」

「全く……こんなのに居着かれたら面倒極まりないわね……」

 鱗の群れを殲滅したクロナは、フィアと背中をくっつけたまま地面に座り込む。そして、さっきまで気味が悪いとばかり思っていた相手をすっかり信用して背中を預けていたということに気付いた。

「……どうしてだ……」

 少し意識が別の方へ向くと、すぐにこのドレッドのことを信用してしまっている。やはり、気味が悪い。

「何考えてるのよ、クロナ?」

「……いいや、何も」

 背中から問いかけてくるフィアには何も答えず、クロナはスッと立ち上がった。バランスを崩したフィアがズルリと倒れてくる。

「ちょっとクロナ、急に立たないで……あら?」

 と、仰向けに倒れてクロナに抗議しかけたフィアが、何かに気付いた。

「……クロナ、あれ」

「どうした。まさか、第二波が来るというわけでは無いだろうな」

 フィアが空を指差すものだから、まさかと思いつつもそちらへ目をやった。

 ……しかして、事態は想像以上に深刻であるらしいことを知る。

「あれは……!」

 上空にあったのは、一つの黒点。しかしそれは今までの鱗とは全く形が違う。

 それには翼があった。頭もがあり、長い尾もあった。

 それは、クロナも一度だけ目にしたことがあるドレッド。……クロナの知る中でも、トップクラスに凶悪で狂暴なドレッドだった。

「クロナ、知っているの?」

 笑い混じりに指差すフィア。一方クロナは、珍しく動揺を顔に出して答えた。

「ああ……。私の記憶が確かなら、あれは……」

 黒点は少しずつ近づいてきた。地に落ちる影はとてつもなく大きい。

 はっきりと視認できる姿は、すでに近くにいるようで、実は遥か遠い。遠近感が狂うほどに、そのドレッドは巨大だった。

「あれも殺っていくの?」

「……まさか。私達二人では歯がたたない。面倒になる前に今は退くぞ」

「え? ち、ちょっと!」

 フィアの手を引いて荒野を後にする。

 ……以前は町もあった緑豊かな平原を今のような不毛の大地にしたのは、ほかでもないあのドレッドなのだ。


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