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Disfear Bullet  作者: たる。
第四章 破滅の影
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page28 群れる《鱗》

 ディスフィアの修復はすぐに終わった。リリアが「残留魔力の詳細を調べさせろ」と言って聞かなかったのでそれについては自由にさせることにした。

 装備の修復が済むなり、クロナは依頼を受けて外に出てきていた。隣には、またギルドの誰かからもらったのかやたらとフリフリした衣装に身を包んだフィアがいる。……あのギルドにはもしかしてこういう趣味の連中が何人もいるのだろうか。

「ねえお姉ちゃん、今日はどこにいくの?」

 すれ違う人の視線を意識してか「ティア」を演じるフィアに、クロナは目を合わせないまま答える。

「気味が悪い。普通に話せ」

「えー、今日のお姉ちゃんいじわるだよ。わたしはこんなにお姉ちゃんのこと好きなのに」

「戯言を。斬り殺すぞ」

「むー……」

 あくまで演技を止めるつもりのないらしいフィアがむすっと頬をふくらませる。

 ドレッドの目撃情報のあった地点へ向かうべく、町の外へ出る。そこには、いつかドレッドに滅茶苦茶にされて草一つ生えなくなってしまった荒野が広がっていた。元は町の一部があったのだが、今では見渡す限り何もない荒れ果てた大地がだけが延々と広がっている。

 そんな場所に出て人もなくなったところで、フィアはようやく素の口調に戻った。

「あの喋り方、そんなに気味が悪いかしら。結構自信があるのだけれど?」

「だからこそ、なおさら気味が悪い」

「ふぅん。ワタシがワタシだと知るまでは、可愛がってくれたのに」

「…………」

 口をつむいでしまう。……フィアがドレッドであるとわかった上でティアの演技を見せられると、あまりにも似すぎていて気味が悪いのだ。

 冷静になればなるほど違和感を感じる。……正確には、違和感を感じない自分に、だ。 フィアの演じる「ティア」は、フィアが言う通り彼女の正体に気づくまで何一つ疑問を感じさせないほどまでに違和感がない。それが奇妙だった。

 ……もしかしたら魔力に毒された時、心までもが侵蝕されたのかもしれない。

 人の魔力の源は、言うなれば魂だ。フィアの魔力はクロナの魔力の根源たる魂までも侵蝕して、そのために彼女に対して感じるはずの違和感も抑えつけられて……。

「……そんなはずはない、か」

 そういった原理で精神攻撃をしてくるドレッドも、過去に戦ったことがある。しかし、魂が魔力に毒されていれば必ずそうと自覚できるはずだし、治療を受けた時に解るはずだ。

 つまり、違和感の原因はやはりフィア自身にあるということ。

 ティアの演技をするフィアは、まるでティアの亡霊だ。

 だからティアのフリをしたフィアと話すのは嫌だった。そもそも、この化物とこれ以上一緒にいたくない。

「……フィア。お前が私に求めたのは、私にお前の身を守らせることだったな」

「そうよ」

「わざわざ私を名指しで手助けを求めてきたのは何故だ」

「……さあ、どうしてかしら」

「じゃあどうしてわざわざ正体を露わにしてきた」

「さあ? アナタが好きだから、とかかもしれないわよ?」

「私は真剣な話をしているのだが?」

「くす。嘘だと思う?」

 フィアは立ち止まると、こちらをじっと見つめてきた。血のように紅く深い瞳は相変わらず何かに濁っていて、底が見えない。

「……もういい」

 面倒になって、話を打ち切る。……やはり、純粋に助けを求めてきたとは考えづらい。

 この際なんでもいい。字面通りの意味なのならフィアにとっての目先の脅威をさっさと排除して追い出せばいいし、何か裏で悪巧みをしているというのなら、フィア自身をどうにかしてしまえばいい。

 ……しかし、やはりわからない。何故わざわざ正体を明かしたのか。どうして、こちらをいいように動かせる道具を、自ら捨ててしまったのか。

「……ワタシだって……そんなこと…………」

 そんな頭の中の疑問に答えるように、フィアが何かを呟く。

「何か言ったか?」

「なんでもないわ。ほら、もう無駄話してる場合じゃないみたいよ」

 クロナの問いかけを遮るようにして、フィアが荒野の空を指さす。

 舌打ち混じりに空を見上げると、そこには幾つかの黒い点が現れていた。

「あれは……?」

 黒い点は少しずつ大きくなってくる。どうやら空から落下してきているらしい。

 その姿は段々とはっきりしてくる。どうやら鱗のような形をしているらしく、形は十数体程度。

 鱗形の塊は次々と雨のように降ってきては地面に突き刺さる。落下してきた鱗は地面に倒れると、裏から六本の細い足を生やして自立した。

「くす、人みたいに大きな虫だなんて気持ち悪いわね」

 笑い混じりで他人事のように言うフィア。確かに巨大な虫のようにも見える、気持ち悪い外見のドレッドだった。

「見たことのないタイプだな。どう出る……」

 十数の鱗が全て地面に落下し、足を生やして自立する。

「おい、お前も手伝え」

「嫌よ面倒くさい」

「つべこべ言うな。来るぞ……!」

 ドレッドの動きは世辞にも俊敏とは言いがたかった。六本の足をガサガサと動かし地面を這って迫ってくる。

 とにかく早く殲滅しよう。そして、隣にいるドレッドの真意を聞き出してやろう。そう決め込み、クロナは銃剣を抜いた。

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