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Disfear Bullet  作者: たる。
第三章 死神
24/41

page23 依頼の理由

 その後、二人はお互いボロボロの状態で帰路につく。

 クロナの言うとおり、立つのがやっとのこととなっていたフィアは、クロナにおぶられている。彼女を背負いつつ歩きながら考えを巡らせていたクロナは、一つの疑問を抱いていた。

「……それにしても、何故わざわざお前を守らなければならない?」

 背中のフィアに対し問う。今回は余裕を見せる相手の虚を衝く大砲撃で打ち倒すことができたが、あれだけの戦闘能力があれば護衛など必要ないはず。それなのにどうしてわざわざ、いつドレッドである自分に刃を向けるかもわからない人間に依頼をするのかが不可解だった。

「もちろん依頼だからよ? それとも、もう契約を反故にする気?」

「バカが。どうしてわざわざ依頼してきたのか、その理由を聞いているんだ。バカが」

「わざわざ二度も言ったわね……」

 彼女にティアを重ねることができなくなった途端、フィアに対する態度は一転していた。しかし、レノンやリリアに向ける普段の態度と違って感情を強く表に出しているという点だけは変わっていない。

「それで、どういうことなんだ?」

「……話さないと駄目かしら?」

「私はどこぞの役立たずな事務係とは違うから、そこまで気にはしないがな」

 さらりと某事務担当の青年を侮辱しつつ、クロナは続ける。

「しかし、気味が悪いのは確かだ。お前ほどの力を持つドレッドがわざわざ人間に護衛を頼むだなんて、理解できん」

「やっぱり、ドレッドの依頼は受け入れられないと?」

「これはギルドとしてではない、私個人としての疑問だ。……どういうことなんだ?」

「……そうね」

 フィアは、クロナの背中で少し黙りこむ。そして少し考えるようにして、口を開いた。

「……頼らざるを得なかったのよね」

「何?」

「言葉通り。人間を頼らざるを得なかったの。それもアナタみたいな、化物じみた規格外の強力な人間にね」

 フィアは、小さな一つ溜息をつく。

「ワタシみたいな強い自我と知性を持つドレッドなんてそうはいないわ。だから"依頼"なんてことができるのは人間くらいなの。わかる?」

「……なるほどな」

 いくら生態のよくわかっていない「ドレッド」という存在についてのことであっても、それくらいは想像がつく。少なくともクロナは、人の姿を取り、言葉を繰るドレッドを見たのは初めてだ。

「ワタシだって、別にドレッドの中で最強というわけじゃないしね。手を貸して欲しかったのよ。……どう? わかってもらえらかしら?」

「話半分に聞いておこう」

「話してあげたのに信用しないのね」

「何がどうあってもお前がドレッドであるという事実は変わらない」

 憮然とした態度。しかしフィアはからかうように問いかけた。

「けど、依頼は引き受けるのよね」

「信じるのと依頼を受諾するのとは別だ」

「屁理屈じゃないの、それ?」

「知らん」

 即答。そういうことをくどくどと考えるのは嫌いだった。フィアは、今度はため息をつく。

「アナタって本当にいい加減なのね。あのメガネが愚痴るのもわかるわ」

「お前に愚痴っていたのか?」

「まあね。ちょっとは考えてあげたら? 気苦労が絶えないようよ?」

「私の知ったことではない」

「くす、言うと思ったわ」

 他愛のない雑談が始まりかけた所で、フィアは急にまた大きなため息を吐くと、ぐったりとクロナの背中にしなだれかかった。

「はぁ……。それにしても疲れたわ。ねえ、寝ててもいいかしら? さすがのワタシもアナタのバカみたいな攻撃に疲れちゃってるのよ」

「まだまだ余裕だったんじゃないのか?」

「意地張るのもつかれたわ。……ねえお姉ちゃん、寝てもいい~? わたし、眠くなっちゃったよ~」

 「ティア」になりきり、甘えた口調で背中にしなだれかかるフィア。

「……お前な……」

 相手は愛する妹とは全く別の存在、むしろ憎むべきドレッドであるとわかりきっているというのに、演技をされると何故か惑わされてしまう自分がいることに、クロナは気付く。

「ねえ、お姉ちゃん~」

「クッ……!」

 弱い自分に対してか、それとも懲りずに演技をしているフィアに対してか、クロナは悪態をつく。

「……ああ、眠っていろ」

「わーい♪」

「……はぁ」

 彼女の演技が細部に至るまで全くきっぱり「ティア」であるのがまた厄介だった。全く奇妙でないのが奇妙で、不自然が感じられないのが不自然。少なくとも最初に会って今本性を知るまでは、彼女にほとんど完全にティアの姿を重ねられるくらいには、彼女はティアを再現していたのだ。

(……そう考えると、不気味だな。記憶を覗く力でも持っているのか?)

 自分の心に一番深い傷跡を残す記憶を再現し、更に、その記憶の中でも一番の「弱み」である部分に付け込む。クロナ自身、あの記憶が自分の弱点であることを理解していたし、今の自分ではどうしても克服できない部分であることを理解していた。

 その弱点を突く彼女の策略なのだとしたら、彼女の姿や行動についても腑に落ちる。

「……ここで考えていても、仕方ないな」

 いずれにせよ、ギルドに戻ったらひとまずは嫌でも演技をさせなければならないのだからと思い、クロナはそれ以上考えるのを放棄して、ただひたすらとギルドへ向かった。


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