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Disfear Bullet  作者: たる。
第三章 死神
22/41

page21 激昂

「うああああ!」

 ただ目の前の物を切り伏せることだけを考え、銃剣を振るう。捨て身の攻撃は普段の数倍早く、重い。しかしその動きはあまりにも単純で、直線的すぎた。

「くすくす……。当たらないわよ、そんなの」

 刃がその胸元を捉える寸前で、死神の姿が掻き消える。

「ほら、こっちよこっち」

「クッ……。大人しく、消えろ!」

 背後に現れた影に向かい、刃を振るう。それもまた、かわされる。

「ほらほら、どうしたのよ。せめて一発くらい当ててみなさい?」

「クソッ!」

 現れては消える影を、追いかけては、逃げられる。

 その動きの先を読むことも普段のクロナになら可能なはずだった。しかし、今のクロナにはそれができない。

 何かに取り憑かれたかのように、直情的に刃を振るうだけ。物を考えずに爪を振りまわす獣と変わらなかった。

 くすくすという笑い声と共に、木の上に影が現れる。

「ほら、チャンスをあげるわ。撃ってみなさい」

 的はここだと言わんばかりに腕を大きく広げ、挑発してみせる。

「死ね! バケモノが!」

 誘われるがままに、クロナは引き金を引く。正気を失った状態でもなお、彼女の狙いは正確だった。

 赤黒い魔力の銃弾は、真っ直ぐに少女へと飛んで行く。

「くす……」

 笑い声。

 銃弾は、正確に彼女の心臓を貫いた。

 射ぬかれた少女の影は、ふらりと後ろに倒れ……。

 空中で、無数の羽になって消えていく。

「な……!」

「獣みたいになっても、狙いは正確なのね。くすくす……」

 嘲るような、笑い声。

「そこかぁッ!」

 振り向きざまに振るった刃は、真後ろで鎌を振り上げていた少女を切り裂いた。

 それもまた、羽になって消えていく。

「ほらほら、こっちよ?」

「本物はどれか」

「わかるかしら?」

 嘲り笑う死神の少女が、右に、左に、正面に、背後に、次々と現れる。

「この……バケモノが!」

 雄叫びと共に、正面の少女に銃弾を放ち、右の少女を切り裂き、左の少女を蹴り飛ばし、背後の少女を突き刺す。

 その全てが、羽となって消えていく。

「はぁ……。だめね。全然駄目」

 崩れた廃屋の壁の上に、少女が腰掛けていた。

「ねえ、そろそろいいんじゃない? ワタシ、アナタの本気が見たいのだけど」

「クソッ、クソッ!」

 文字通り空を斬るような戦いに、クロナの中の怒りは増すばかりだった。

 もはや何も考えず、現れた死神少女に向かって突進していく。

「ハァアアアア!!」

 跳躍。そして、刃を振るう。

 切り裂いたのは羽ではなく、ドレスであり、肉であり、実像であった。

 右肩から大きく袈裟懸けに切り裂かれ、傷口から噴水のように血が吹き出す。

 今度こそ傷つけられた少女は、後ろに倒れながら、……くすりと笑っていた。

「……残念でした」

 吹き出した大量の血飛沫は、空中でその姿を変える。

 時が止まったかのように雫となって宙に留まり、そして、無数の魔力の矢へと、姿を変じる。

「お終いね」

 倒れる直前で体勢を変えて背後に飛び退いたフィアが、楽団の指揮者のように片手を上げる。それに合わせ、バラバラの方向を向いていた魔力の矢は一斉にクロナの方を向く。

「さよならよ、クロナ」

 上げた手を、スッとクロナに向けて振り下ろす。

 宙に留まっていた無数の矢は嵐のようにクロナへと襲いかかった。

「っ!?」

 フィアを切り裂いた姿勢のままのクロナは、かわすこともできないまま矢の嵐に呑み込まれた。

 その様を眺めながら、フィアは地上に降り立つ。

「あっけないわね……」

 傷をすっかり治癒してしまったフィアは、つまらなさそうに呟くと、真紅の嵐を背に歩みだした。

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