13 革命と王子
大聖堂ではミッキーのお兄ちゃんならぬ、大司教が外を見ていた。
「まだおいぼれにもこの国のためにできることがあろうて」
オリーブのピクルス瓶を撫でる。
「聖女を頼んだぞ、弟よ……」
ノックの音の後で、ガチャッと扉が開く。
使用人の服を着た、長い髪をふんわりと三つ編みにした女性が入ってくる。どことなく猫のような風貌で、足音も立てない。
「お呼びでしょうか」
「あああっ! ポーリーヌちゃん! ねえねえ枕が硬くってさあ、昨夜はわし、よく寝られなかったんじゃよぉ」
「そうでございましたか」
「全然、その、わしとしては膝枕? とやらでもいいんじゃが、いや~、眠気が、祭司の途中に眠気が来たら大変じゃからのぉ」
「羽毛の枕を発注いたします」
「あああん冷たい! でもそこがいいんじゃ~!」
*
その頃、王子はというと。
ベッドルームに尻餅をつきながら、信じられないものを見る目で目の前の魔女を見つめていた。
初めてだ。
女性に手を出そうとして、こてんぱんにやられるなんて。
「ありえん……」
と、王子は呆然とした。
強引に迫ろうとしたら、逆に床にはりたおされた。
女性の力ではない。
「ま、魔法か?」
「いいえ。わたくしの腕力だけですわ。案外ひ弱なのですね、王子様は」
「なんなんだ、お前は」
「アナタたちが召喚した、聖女ですわ」
「聖女なんかじゃない。お前は……」
王子は聖女の下腹部に視線を落とす。
「いやん、そんなとこばっかり見ないで」
「まさか……男か!?」
「あら、女だなんて一言も言わなかったわよ。見た目で判断したのはアナタでしょう?」
「気持ちが悪い!」
「あら、ご挨拶ね。下着を脱ぐまでは、鼻の下を伸ばしていたじゃないの」
「死ねッ!」
王子は力任せに壁に飾ってあった斧を投げつけた。
「ふ、くだらないわねぇ」
聖女は指一本で斧を止める。
「物理攻撃が効かない!?」
「だって。魔女だもの」
「女じゃないだろう!」
「魔女も魔法使いも同じようなものよ」
「やめろ、うわ、近付くな、頼む。やめてくれ」
「あらぁ、予想外。王家の血が強いって本当だったのね。魅了魔法が効かないなんて」
「近付くなッ」
「無・理・よ。私以上に魔力のある存在はいない。私は今世紀最大の魔女」
「男じゃないか!」
「魔女よぉ。身勝手に異形の魂をこちらの世界に呼んでいるやつらがいて助かったわ。王もクソね。逃げ出したわよ、隣国の騎士と一緒に。駆け落ちってやつね。あんたたち、男として見限られたのじゃない。さあ、次は王様ね」
「やめろ、ゆるさん」
「許さないって、どうするの? そろそろ立場を理解なさったら。アタシはこの国の男たちを魅了して、ここを桃源郷にするのよ」
王子は着の身着のまま、裸足で廊下に駆けだしていった。
「おい! 誰か! 聖女を呼び戻せ、アリーチェだ! あいつなら魔力がある」
「無駄よ。この世界の人間に魔力なんてないわ。力があるのは、アタシたちのような、美しく気高い魔物だけ」
「嘘だ、そんなわけがない」
「試してみる? 体を動かせないでしょう。うふふふ。何してもらおうかしらぁ?」
「くっ……!」




