本格的な宇宙船配属
訓練施設の大広間に、候補生たちが集められていた。壁一面に張り巡らされた巨大スクリーンには、最終試験「心理試練」と「ワープ訓練」の結果が次々に映し出されていく。名前と評価ランクが淡い光の文字となって浮かび上がるたび、会場には歓声とため息が入り混じったざわめきが走った。
「……来た、来た! 次は俺たちの班の番だ!」
ユウマが椅子の背から乗り出し、緊張で手を組み合わせる。
そして、スクリーンに表示された。
《第7班:リク、サナ、ユウマ、ミカ、アオト 合格》
さらに、その横には「安定した連携・強い信頼関係」との評価文。
「やった……! 本当にやったんだ!」
ミカは両手で口を覆い、涙があふれるのを隠そうとした。
「フッ、当然だろ。俺たちのやったことは、評価されるべきことなんだ」
アオトは冷静を装いながらも、その口元がかすかに緩んでいた。
リクは思わず両手を握りしめ、隣のサナに視線を向けた。
「サナ、俺たち……これでようやく第一歩だな」
「うん。怖かったけど……でもみんなと一緒だったから、ここまで来られた」
その瞬間、五人は自然と手を重ね合った。まだ震えが残る手のひら。しかし、それは「仲間」という確かな実感でつながっていた。
配属までの3週間の準備期間、それぞれが出された課題をこなし、気持ちを作り上げていった。
3週間後、第7班は司令部の呼び出しを受けた小部屋に向かい、与えられた椅子に静かに座っていた。
そこに現れたのは、銀髪の女性教官――オルガ准将だった。冷徹な眼差しと、整った軍服の姿が、これからの厳しさを象徴しているように見えた。
「第7班。心理試練とワープ訓練、いずれも高い評価を得た。お前たちを本格的に宇宙船クルー候補として配属する」
言葉が落ちた瞬間、五人の胸に緊張が走った。
「配属先は――旗艦。地球圏防衛と深宙探索を担う最新鋭の艦だ」
ユウマが思わず小声でつぶやく。
「アルカディアって……あの、最大級の旗艦かよ!」
サナは一瞬顔を輝かせたが、すぐに不安げに眉をひそめた。
「そんな大きな船に、私たちが本当に通用するのかな……?」
「通用させるんだよ」
リクがきっぱりと答えた。その瞳には、決意の炎が宿っていた。
配属命令を受けた夜、第7班の五人は訓練校舎の屋上に集まった。地上の街灯の明かりを遠くに見下ろし、頭上には広がる星空。彼らはこの数週間で積み上げてきたものを噛みしめていた。
「俺はさ、大湖で育ったから宇宙はずっと遠い場所だったんだ。けど今は、こうして星を自分の船で渡れるんだって思うと……ワクワクが止まらねえ!」
ユウマは両手を広げて笑った。その笑顔が、皆の緊張を少し和らげる。
「私は……植物の研究がしたくて志願したの。宇宙船で新しい生命に出会えるなら……その記録を残して、みんなの未来に役立てたい」
ミカは胸に手を当て、はにかむように語った。その声は小さいけれど、確かな強さを秘めていた。
「僕は合理主義者だ。数字やデータしか信じない。でも……心理試練で学んだ。人間の“感情”は、時に理論を超える。あの経験を無駄にはしない」
アオトは星を見上げながら呟いた。その横顔は以前よりも柔らかく見えた。
「私は……正直、怖いよ。でも、それ以上に楽しみ。みんなと一緒に進めるなら、きっと何だってできる」
サナが少し涙ぐみながら笑うと、リクが彼女の肩にそっと手を置いた。
「俺たちは第7班。絶対に一人じゃない。これから先、どんな闇の中でも――この手を離さなければ、必ず乗り越えられる」
その言葉に、五人は無言でうなずき合った。
数日後、宇宙港のドックに巨大な艦影が現れた。
旗艦――全長数キロ、数万トン級の艦体が静かに待機しており、青白いライトに照らされて金属の表面が輝いていた。
リクたちは制服に身を包み、搭乗ゲートの前に立つ。胸の高鳴りを抑えられないまま、彼らは互いの顔を見た。
「さあ、行こうぜ。俺たちの航海の始まりだ!」
ユウマが拳を突き出す。
「未知の星々へ……」
ミカが小さく呟き、その拳にそっと触れた。
「データも、感情も、全部記録してやるさ」
アオトが続き、少し照れながら拳を合わせる。
「怖いけど……楽しみ!」
サナも笑って手を重ねた。
そしてリクが最後に、力強く言葉を放つ。
「第7班――アルカディアへ、出航だ!」
五人の拳が重なり合い、光り輝く艦へと歩み出した。
その背中は、すでに「候補生」ではなく「未来を拓く乗組員」としての覚悟を背負っていた。




