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新しい挑戦

 中央広場の演説から数日後


 突然、リクの家のリビングに銀色の光が差し込んだ。

 テーブルの上に浮かび上がったのは、透き通るように輝くホログラムの招待状。


 《国家サチ 宇宙開発計画 第一期乗員候補生 選抜試験への参加を要請します》


 文字が浮かび上がった瞬間、リクは椅子を倒す勢いで立ち上がった。


 「……きた! きたぞ、ついに!」

 声が震えていた。胸の鼓動が爆発しそうなくらい早くなる。


 隣で宿題をしていたサナがびっくりして顔を上げる。

 「な、なに!? どうしたのリク!」


 リクは招待状を指差し、声を張り上げた。

 「宇宙計画の選抜試験! 俺に招待状が届いたんだ!」


 「えっ……ほんとに?」

 サナは驚きでペンを落とした。


 「見てみろよ、この光! 俺たちの時代が、宇宙に挑む時が来たんだ!」

 リクは興奮のあまり、思わず机を叩いた。


 「ちょ、ちょっと落ち着いて! 机壊れちゃう!」

 サナは笑いながら慌てて止めたが、彼女の目も同じように輝いていた。


 「リク……すごいよ。ついに、この日が来たんだね」

 彼女の声は小さかったけれど、その胸には同じ熱がこみ上げていた。


 サナが自宅に戻ると、彼女にもホログラムの招待状が届いていた。

 サナも決意を新たにして、リクとともに時代の流れに乗ることになる。


 数日後。国家サチの中央広場は、選抜候補生たちの熱気で溢れ返っていた。


 何十人という若者が、胸に同じ光るバッジをつけて集まっている。

 みな未来を夢見てここに立ち、緊張や期待に揺れていた。


 「すごい……あたり一面、同じ志の人ばっかり……」

 サナは人の波に少し圧倒され、リクの袖をぎゅっと掴んだ。


 リクは群衆を見渡しながら、中央の像に目を止めた。

 カイトとサチの像。人間とAIの共生を築いた夫妻の象徴。


 「サナ……俺たちが立ってるこの広場は、あの人たちが夢を託した場所なんだな」

 リクの声は、どこか神聖な響きを帯びていた。


 サナも像を見上げながら、そっと微笑む。

 「だからこそ、大丈夫。私たちなら、きっとその続きを紡げる」

 群衆のざわめきの中、ふたりの言葉は胸の奥で強く響いた。



 突然、広場中央に青白い光が走った。


 「……あ!」

 人々が一斉に息を呑む。


 空中に浮かび上がったのは、国家サチの中枢AI――シグマのホログラムだった。

 背の高い透明な人影のような姿、冷たい輝きを放ちながらも、眼差しには温もりがあった。


 《ようこそ、挑戦者たち。君たちは人類とAIの歴史に新たな一歩を刻む者たちだ》


 その低く響く声に、広場全体が一瞬にして静まり返る。


 《だが、忘れるな。これはただの冒険ではない。君たちが背負うのは“国家サチの理念”そのもの。カイト夫妻が遺した夢を、宇宙に届ける責務がある》


 ざわついていた心が、一気に引き締まるのを感じた。

 隣のサナは無意識に背筋を伸ばしていた。


 「責務……だって。でも、すごいね。まるで本当に見守られてるみたい」

 サナが小声でつぶやく。


 リクは拳を強く握り、心の中で答えた。

 ――必ず、この挑戦に応えてみせる。


 その後、候補生たちは班に分けられた。

 リクとサナが配属されたのは第7班。そこで待っていたのは個性豊かな仲間たちだった。


 「よぉ! 俺はユウマ。サチの大湖都市出身で、潜水ドローンの操縦士やってたんだ。波を相手にしてたから、どんな宇宙の荒波も任せろ!」

 快活な少年が歯を見せて笑いながら手を差し出す。


 「わ、私はミカ。えっと……植物学が専門で……。その、宇宙船でも緑を絶やさないように……がんばります」

 小柄で恥ずかしがり屋の少女が、指先をもじもじさせながら自己紹介する。


 「僕はアオト。データ解析とAI連携が得意だよ。宇宙船の頭脳をサポートするつもりさ」

 冷静な声で、タブレットを抱えながら微笑む少年。


 「おぉ! もう仲間がそろったんだね!」

 サナは目を輝かせて言った。

 それぞれが違う背景を持ちながらも、同じ未来を目指す仲間たちだった。

 「そうだな……このメンバーで、俺たちの未来を切り開くんだ」

 リクの声は引き締まっていた。


 その夜、宿舎の屋上。

 空には無数の星が瞬いていた。


 リクは静かに口を開いた。

 「……サナ、正直、怖いんだ」


 「怖い?」

 隣に座ったサナが振り向く。


 「ああ。宇宙は未知だらけだ。ワープで飛び立って……もし戻れなかったら……」

 リクの声は、勇気の奥に潜む弱さを隠せなかった。


 サナはしばらく星空を見つめ、それからゆっくり答えた。

 「私も、怖いよ。でもね、怖いってことは本気で挑んでる証拠だと思う。だって……カイト夫妻だって、きっと同じ気持ちで未来に飛び込んだんだと思うから」


 その言葉に、リクの胸に温かい火が灯った。

 「……そうだな。俺、怖がってるだけじゃダメだよな。進まなきゃ。」


 その時、背後で淡く光が揺れた。

 ホログラムのシグマが現れ、静かに言葉をかける。


 《恐怖を抱くことは恥ではない。それを超える勇気こそが、人間とAIを未来へ運ぶ》


 ふたりは顔を見合わせ、笑い合った。

 夜空に広がる無数の星は、未来の舞台として彼らを待っていた。


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