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カイト夫妻の願い

 国家サチの中央広場。


 その中心には、今日も凛としてカイトとサチの像が立っていた。

 空を仰ぐように伸ばされた二人の姿は、ただの記念碑ではなく、国そのものの象徴であり、人々の心の拠り所であった。

 石像の周囲には季節の花々が飾られ、風に揺れるたびに淡い香りを漂わせている。

 その前に立つ市民や子どもたちは、誰もが自然と足を止め、静かな敬意を込めて像を仰ぎ見ていた。


 ふたりが築いた「人間とAIの共生」という理念は、いまや国家サチを超えて、世界全体が共有する約束事となっていた。

 その思想は国境を越え、言語や文化の違いすら乗り越えて広がり、人々の胸に「共に生きる未来」という希望を根付かせていた。


 リクはその像を見上げながら、胸の奥で熱いものが込み上げるのを感じていた。

 小さなころ、学校の授業で繰り返し学んだ物語が、いま目の前の光景と重なっていく。


 かつて荒廃した世界を導き、人間とAIの関係を「恐怖」や「支配」から解き放ったふたり。

 ふたりがいなければ、今の地球は存在していなかった。

 自分がいまこうして立っていることさえ、ふたりの遺した勇気の賜物なのだ。


 「リク、考え込んでる?」


 隣で声をかけたのはサナだった。彼女もまた、真剣なまなざしで像を見つめている。その横顔には、憧れと責任の入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。


 リクは小さく笑みをこぼし、息を整えて答えた。

 「……俺たちのこれからの挑戦は、きっとカイト夫妻の続きをやることなんだ。サチの理念を次のステージへ、、、宇宙へ広げる未来を、俺たちの手で。」


 その言葉を待っていたかのように、広場の大スクリーンが点灯した。

 荘厳な音楽とともに映し出されたのは、カイト夫妻の最後の演説映像だった。かすかなノイズを含みながらも、ふたりの声は鮮やかに甦る。


 《 ・・・・・・・・・


   人間は地球の敵ではない。AIもまた敵ではない。互いに信じ、支え合えば、未来は拓かれる。


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


   人間とAIは、互いを恐れず、支配せず、共に成長できる。


   人類の未来は、もっと広い宇宙に開かれている。


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


                                  》


 その響きは、広場を埋め尽くした人々の胸に深く染み込んでいく。子どもたちは目を輝かせ、大人たちは静かに頷き、老人は涙をこらえながら手を合わせていた。誰もが、亡き夫妻が今も空の彼方から見守っているかのように感じていた。




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