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STATIC【白と黒の物語】  作者: ー霧雨ーAI(Claude)との共同制作
第一章 運命の歯車
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第7.5話「穏やかな日常」(雪音視点)

7話の雪音視点です。

仁の視点で楽しみたい方は飛ばしても大丈夫です。

「今日はありがとうございました」


礼を言われて、私は彼の顔を見つめた。

みんなと違うからか、どうしても気になってしまう。不思議な感覚だった。


今日一日、この人間の少年と一緒に働いた。最初は緊張していたけれど、だんだんと…悪くない気持ちになっていた。


でも、まだ自己紹介もしていない。名前も名乗っていない。


「あの…」


勇気を振り絞って声を出した。胸がどきどきしている。


「私…白川雪音…と…申し…ます。改めて…よろしく…お願いします……」


深く頭を下げた。やっと言えた。頭があの時は真っ白になってしまって何も言えなかった。


「白川さん。改めて、よろしくお願いします」


丁寧に答えてくれた。優しい声だった。


『え!?雪音ちゃん名乗ってなかったん!?』


ハーモニアさんが驚いている。恥ずかしい。


「えと…その…緊張…して…しまって…」


本当に恥ずかしかった。でも、名乗れて良かった。


『そーいえば仁君、雪音ちゃんの事名前で呼んでなかったな……』


そうだった。彼も私の名前を呼んでいなかった。


「雪音…で、大丈夫…です…」


「僕のことは好きに呼んでください」


『じゃあ雪ちゃんと仁ち~で!』


「却下」


『え~!!二人とも可愛いのに~!!』


ハーモニアさんが文句を言っている。でも、なんだか楽しい雰囲気だった。私の頬が少し緩んでいるのが分かった。


こんな風に笑えるなんて、久しぶりだった。


「仁ち~…さん…また…よろしく…お願い…します……」


試しに言ってみた。でも恥ずかしすぎて顔が赤くなっている気がする。

でも多分夕日のせい。


「あの、無理に呼ばなくて大丈夫ですよ…というか俺が恥ずかしいです」


彼はわかりやすく照れている。それを見て、少し安心した。


『え~雪ちゃんに名前呼ばれて嬉しいだけちゃうの~?』


「恥ずかしいものは恥ずかしいだけだっ!」


仁君の耳まで真っ赤になっている。可愛い、と思った。

彼が赤いのは夕日のせいだけじゃない。


「仁…さん…で、いい…ですか…?」


本当はハーモニアさんみたいに仁君って呼んでみたいけど…


「雪音さんの方が年上でしょうし呼捨てで大丈夫ですよ」


「えと…なら…仁…君で……」


「ありがとうございます。ではまたこちらこそ、よろしくお願いします」


良かった。ちょっぴり嬉しい。

その時、ハーモニアさんが私の耳元に寄ってきた。


『雪音ちゃん、仲良くなりたいなら「またね」って言ってみ?』


またね?そんな風に誰にも言ったことなかった。

いつもは、「お疲れ様でした、またお願いします」この言葉も大事な言葉…でも、仲良くなりたい。


「また…ね…仁…君……」


言った瞬間、心臓が爆発しそうになった。顔が燃えるように熱い。こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだった。


でも、言えて良かった。私の新しい一歩だった。


深々と頭を下げて、家の方へ向かった。でも数歩歩いたところで、ハーモニアさんには挨拶していない事を思い出した。


振り返ると、仁君がまだこちらを見ていた。


ハーモニアさんへの感謝の気持ちと、なぜか照れ隠しのような気持ちが混じって、思わず口から出た言葉があった。


「ありがとう…おばあ…ちゃん…」


そう言ってお辞儀をして帰った。


冗談を言える関係になりたかった。普通の人みたいに、軽い冗談で笑い合える関係に。

後ろでハーモニアさんが怒っている気がするけど、とっても私は恥ずかしかったのだ。


家に帰ってからも、あの言葉を思い出すたびに顔が熱くなった。


「また…ね…仁…君……」


なんて。家に着いた後もドキドキしている。

初めてこの村で敬語以外を使ったからだろうか。でも、嫌な気持ちではなかった。


---


それから数週間後。


私の生活は少しずつ変わっていった。


仁君とハーモニアさんと一緒に過ごす時間が増えて、村での仕事も楽しくなっていた。


そして、ハーモニアさんから魔法を教わることになった。


得意な魔法と言われて思いついたのは氷を作る事だった。

元々住んでいた所は私が魔法を使うのは良く思っていなかったがここ数週間で私の世界は変った気がする。


みんな優しくて暖かい。そう素直に思えてきたのだ。

仁君とハーモニアさんには感謝してもしきれない。


『ただ氷魔法って結構特殊やから扱えん人が多いのに凄いなぁ~!』


「いや…その…偶然…」


ハーモニアさんに魔法を褒められたのはとっても嬉しい。

魔法を褒めてもらったことなんかなかった。

だからかちょっぴり恥ずかしい…。


でも仁君は戦闘することを考えているようだ。

本当はそんな危ない事はしてほしくない。

でも彼は目の前で家族も仲間も奪われたと言っていた。

私も仁君とハーモニアさん、みんなが居なくなるのは耐えられないと思う。


「仁君…頑張って……」


実はここ数週間練習していたのだ、詰まらずに仁君って言えるように。

やっと…詰まらずに言えた…。


仁君が笑顔だと私も嬉しい。

こんな日々が続けばいいのにと思った。


帰り際にハーモニアさんに声をかけられた。

いつも私に声をかけてくれる。


『雪音ちゃん、氷魔法はすごく便利やで。食べ物の保存とかにも使えるし』


「本当…ですか…?」


『ほんまほんま!村の人にも喜ばれると思うで~。氷って扱いが難しいからなぁ。村で使ってるの見たことないで』


「わ…分かりました…聞いて…みます……」


『大丈夫大丈夫~!ウチも一緒に行ったるで!』


その後、ハーモニアさんが村人に私の氷魔法のことを話してくれた。


するとどうだろうか。村人たちから連日引っ張りだこになった。

氷魔法で食材を新鮮に保つ。こんな風に人の役に立てるなんて思わなかった。


「ありがとう、雪音ちゃん。本当に助かるわ」


そんな言葉をもらうたびに、心が温かくなった。


そして何より驚いたのは、給金が上がったことだった。


「雪音ちゃんの氷魔法のおかげで、食材の無駄が減ったの。だから、これからはこれがあなたのお給料よ」


ミラベルさんが渡してくれた金額は、今までの数倍近くあった。


「え…あの…多すぎ…ます…」


「いいえ、あなたの技術に対する正当な対価よ」


初めて、自分の能力が認められた気がした。ハーフエルフの私でも、みんなの役に立てるんだ。

もっと頑張りたい…。


---


ある日、見張り所で仁君とリーフさんの模擬戦があるという話を聞いた。


娯楽の少ない村では、こういう催し物は貴重だった。村人たちも集まって、簡単な賭けをしている。


「リーフさんの圧勝だろうな」


「仁君も真面目で頑張ってるけど、相手が悪い」


周りの会話を聞いていると、賭けはリーフさんが圧倒的らしい。

リーフさんは村長の護衛だけでなく、村では孤高の女戦士で体格のいい人とも打ち合える生きる伝説のような人だ。

様々な武器を使いこなせるのもまた彼女の強さを物語っていた。


でも賭け事は良くない。仁君は知っているのかな。


そこまで人数も多くない村なのに見物席はいっぱいだった。

見るためには何故か用意されている指定席の券を買わないといけない。


どうしよう…。購入するしかないかな…。


券を購入しようと倍率を見た瞬間、カチンときてしまった。

20倍以上の差がある。

頭では分かっているのだ。そう簡単に勝てる相手でない事。


そして私は……

有金全て仁君に賭けた。


やってしまった……どうしよう……。


冷静になってとんでもない事をしてしまったと。

見張り番の人にも全力で止められたが頭に来ていたのだ。


村のみんなは軽い娯楽感覚で少額でリーフさんを選んでいる。

仁君の倍率は私のお金で20倍以上という倍率から10数倍まで下がった。

私の賭け金がどれだけ大きいのかと改めて実感し恐ろしくなる。

元々負けても良いので同じように指定席が貰える額で仁君に賭けるつもりだった。


それがどうだろうか、負けたら無一文になる。

いや一応家に少しの貯金はあるのだが…。


今後の生活を心配しながら待っていると遂に始まった。


しかし一瞬で賭けのことは忘れてしまった。


仁君の動きが…すごかった。


リーフさんの連撃を間一髪で躱し、受け流し、最後に一気に間合いを詰める。


私もこんな風に戦えるようになりたい。そう思った。


「そこまで!!」


………戦いが終わった瞬間、複雑な気持ちになった。


仁君がリーフさんの上に倒れ込んでいる。リーフさんの胸に、仁君の顔が……。

明らかな事故なのに、なぜか凄くモヤモヤする…。


二人が爽やかに握手しているのを見てふと思った。

そういえば一度も仁君に触った事がない……。


そっか私まだ仁君と握手したこともなかったんだ…。


自分の気持ちを理解したものの、やっぱりスッキリしなかった。


あれ…そう言えば……。


「雪音ちゃん!!すごい配当だよ!!!」


興奮気味に差し出してくれた金額を見て、目を疑った。


有金を全部賭け正直終わったと思っていた、それが十何倍にもなって返ってきた。


「え…えと…こんなに…」


周りは興奮しているが、困惑しかなかった。むしろ怖い。こんなにお金を持ったことも見たこともない。


でも、それよりも気になることがあった。


さっき感じた、あのもやもやした気持ち。

正直お金よりもそっちの方が気になっていた。

自分の中で決着が着いたはずなのに…。


最初は境遇に興味があっただけ。ただの人間の少年。


でも今は違う。


彼が頑張っている姿を見ると応援したくなるし、女の人と触れているのを見ると…なんだか嫌になる。


この気持ちは何だろう?


私にはまだ、その答えが分からない…。


もうすぐ収穫祭の時期だ。

その時は村のみんなみたいに少しおしゃれをしてみたい。


---


あっという間に時間は流れていった。

三人でいる時がとても楽しい。


仁君はリーフさんの指導で村の中でも頼られる狩人になっていた。

農作業も狩りも雑用も仁君は手が空いていれば色々と手伝っていた。


彼は私だけでなくみんなに優しい。


使った事がないと言っていた弓も剣も…戦いとは無縁の私から見るととても上手に見えた。

家で隠れて棒で素振りしてみたけど彼みたいに上手く使えない。


私も村の人とかなり話せるようになった。


前住んでいた所ではお金が入ったと噂が立つとそこに悪い大人が群がる事があったが、この村では誰も態度を変えることはなく、良い意味でみんなとの距離が縮まった。

みんな本当に優しい…。


ミラベルさんとハーモニアさんが私の収穫祭の時の服を選んでくれた。

仁君には当日まで内緒だと。

彼がビックリしてくれたら嬉しいかも。


そういえば仁君に賭け事の話は正直に話したが、彼もまた態度を変える事はなかった。

でも何故か困った顔をしていた気がする。

賭け事で得たそのお金で仁君はハーモニアさんと一緒に色んなお店を回って私に必要そうな物を選んでくれた。


パンを買うだけで精一杯だった私はもう遠い昔のようだ…。


でも不穏な噂が流れていた。

AI軍が近くまで来ているかもしれないと。

仁君がこの村に身を寄せるようになったきっかけ…。


仁君とハーモニアさんの役に立ちたい…。


私も何か教えて貰おうかな……。


明日着る予定の服を見ながら、ドキドキして中々眠れない夜になってしまった。


明日は収穫祭だ。

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