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STATIC【白と黒の物語】  作者: ー霧雨ーAI(Claude)との共同制作
第一章 運命の歯車
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第3話「調和の時代の魔法」

黒く焼けた戦場の端から歩くとこしばらく、仁の部隊が使用していた軍用車両が隠されるように放置されていた。

が、明らかに発見された跡があった。


『あちゃ~これはえげつないなぁ~』


投棄した際にはなかった攻撃の後がいくつもあった

故障しているとは知らず逃走されないようにAI軍が入念に破壊したのだろう

攻撃で車体の各所に穴が開き、タイヤも無残に引き裂かれている。

とても動かせる状態ではなかった。


「クソっこんな状態かよ...」


仁が車両を一周して確認した後、諦めたように言った。


「修理とかいう次元じゃないぞ。さすがに無理じゃないか…?」


仁はここに来るまでにハーモニアに敬語禁止を言い渡されていた

『ウチと仁君は一心同体や!敬語禁止!!』

「さっき会ったばかりじゃないですか...」

『まぁ~た敬語やんかぁ!!』

ハーモニアとのこのやり取りで敬語を使う事はできないと悟った為、仲間と話すような言葉遣いをする。

正直ハーモニアが明るく気さくだとは言え、エルフ相手にため口を使うのは気が気でない。

ましてや命の恩人なのだから。



「ダメだ、扉も変形して開かない、見たところエンジンも完全にやられてる。それに無事だと思ってた電子系統もダメそうだ」


『ちょっと待ってなぁ~』


ハーモニアが車両に近づいて、興味深そうに眺めた。


『ん~随分と複雑やなぁ』


「1000年前から流石に技術は進歩しているだろうしな」


『ウチの時代にも馬車とかはあったけど、高速で自分で動く機械見るんは初めてや』


ハーモニアがボンネットを開けて、エンジンを覗き込んだ。

実体がないのにどうやって開けたのか...多分魔法なのだろう


『うーん...これはえげつないほど複雑やな。でも...!』


彼女が手をエンジンにかざすと、淡い青い光が漂い始めた。


『原理は一緒やな!エネルギーを変換して動かす。何かを燃やしてこのエンジンってのを動かして、それで車輪を回すんやろ?』


「そうだけど...」


『魔法も科学も、根っこは同じなんよ』


ハーモニアはニコリと笑って見せるも、仁は半信半疑だった。

現代の内燃機関と1000年前の機械では、技術レベルが全く違う。


『機械修復』


ハーモニアが呟くと、青い光が車体全体を包み込んだ。


壊れたピストンが元の位置に戻り、穴の開いた部品が塞がっていく。しかし、完全な修復ではない。

穴が開いていた所は少しいびつな形をしており、電子制御システムなど、ハーモニアが理解できない部分はそのままだった。


『めっっっちゃ細かいのある~!これが仁君が言ってた電子機器ってやつかぁ~!』


ハーモニアがテンションとは裏腹に困った顔をしている。


「電気信号でコントロールしているって話だが、俺もよく知らない。ハーモニアは電気ってのは分かるのか?」


『ん~一応知っとるけどウチの時代には、電気を使った道具なんてほとんどなかったからなぁ~』

「存在してた事に驚きだよ」


1000年も前に電気技術が存在していたことに衝撃を受ける。

数百年前に電気技術が普及していたのは知っていたがまさか1000年も前に存在していたとは…。


ただハーモニアはむむむと唸りながらも移動車両は形を取り戻した。


『うはぁ~!つっかれた~!!とりあえずこれで動くんちゃうかな!!』

「…魔法って本当に凄いんだな」


『そうやで~!魔法は凄いんよ~!仁君にも素質あるからウチがしっかりと教えたるで!』


これ以上にもないドヤ顔を披露しながらニコニコしているハーモニアはとても美しかった。

…半透明だけど。


『多分これをこうすれば~!』

ハーモニアの指先に青い光が纏うとエンジンが動き始めた。


だがガタガタと大きく揺れており本当に走れるのか心配になる。


そう言えば鍵持ってなかった


『ささ~!出発するで~!ある程度は直るけど完璧やないからな~!』

「壊れたらまた魔法で直せるんじゃないのか?」


気になったのはどの程度修復できるのかであった。

元の状態に近いものの精度だったり、形がどうしても異なったのだ。


『ん~ある程度は直せるけど見ての通り完璧じゃないからなぁ~!次は直らんかもしらん!知らんけど!!』

「わかったよ。早く行こうか…。」


『ごめんなぁウチがもっと凄い魔法使えたら良かったんやけど…』

急にしょんぼりとするハーモニアに仁の方が慌てる。

テンションの落差が激しい。


「いやいや、十分すぎるよ。ありがとう」

『よかったぁ~。褒められた~!』


屈託のない笑顔をするハーモニアは見た目より幼く見える。

エルフであり、まして実体がないので見た目の年齢は当てにならないが、1000歳以上の差があるようには思えない。

話し方は自分とは少し異なるが意味は互いに通じることにも正直今更ながらに疑問に思う。


ただそんな事よりも、1000年前の技術と魔法に仁は興味を持っていたが、まだ本調子ではない。

ガタガタと震える車両も心配なので運転席に乗り込む。


いつの間にか隣に移動していたハーモニアが興味深そうに運転席を眺めながら心配そうに見つめる。

テンションは高いが実は心配性なのかもしれない。


「よし、動かすぞ…」

アクセルを踏むと車両がガタガタと音を立てながらエンジンが唸りを上げる。


「すごい...本当に動いた」


『調和の時代では、魔法で道具を直すのは普通やったんよ~』


ハーモニアが誇らしげに答えるも、表情は安堵した様に見える。

実は自信がなかったのかもしれない。


『でも君らの時代の機械は複雑やなぁ。全部は理解できんわぁ~』


「十分だよ。これで移動できる」


仁は仲間と来た道を戻るも出発した街は距離が遠い。

タンクに一度穴が空いていたのかガソリンの残量は放棄した時よりもかなり減っており、戻るのは難しそうだ。


「俺が出発した街はこの燃料の量だと壊れなくても遠くて戻れなさそうだ…」

『ん~…ちょっと待ってな』


ハーモニアが目を閉じて、何かを探るように集中した。


『周辺の生体反応を探してみるな~!』


「探知魔法?」


『正解~!どこに人が住んでるかを調べれるんよ~!』


口調は軽いが傍から見ていても集中しているのがわかる。

しばらくしハーモニアが目を開いた。


『東の方向にしばらく行くと集落がありそうやな!』


「集落?」


仁の顔が曇った。

この辺りの東側はエルフが統括する地域のはずだ。


この地域は開拓も進んでおらず境界線もある程度進むと曖昧になっている所もある。

今回の戦闘が起こった地域はテクノスの支配域であるが、数キロ進めばエルフと接触する可能性もある。


「俺が行っても大丈夫なのか?その辺りはエルフが住んでいて人間は歓迎されないと思うんだが…」


『大丈夫や。そこは穏やかな反応を感じる。争いを好まん人たちやと思うで』


「穏やかな反応?」


『生き物にはそれぞれ独特のエネルギーがあるんや。怒りや憎しみを持った人と、優しさを持った人では、魔力の波長が違うんよ』


仁は驚いた。生体反応だけでなく、そんな事が分かるなど。

魔法とは自分の理解が及ばない事ばかりである。


「それで安全だと分かるのか?」


『100%やないけど、少なくとも即座に攻撃してくるような人たちやないと思うで』


今回は「知らんけど」を付けない辺り信用できる…いやそもそもハーモニアが出来ない事を今の所言った事はない。

今回もハーモニアの指示に従ってみよう。

車両がゆっくりと不安定なエンジン音を響かせながら、東へ進んでいく。


ふと仁は気になった内容をハーモニアに聞いてみる。

「ハーモニアは本当に1000年前から来たのか?」


『信じられへん?』


「いや、あのような魔法を見せられたら信じるしかない。でも...」


仁が言葉を濁した。


「ハーモニアみたいなエルフがいるなんて思わなかった。俺が知ってるエルフとは全然違う」

『どんなエルフを知ってるん?』



「助けてもらった時に話したように、高慢で、人間を見下して、人間をバカにしている連中だ。特に交渉事で街に来ていたエルフは最悪だった」

『そっかぁ...』


ハーモニアが悲しそうな表情を浮かべた。


『私の時代のエルフはそんなんやなかったで。もっと優しくて、他の種族とも仲良くやってた』


「争いが人を変えたのかもしれないな…」


『きっとそうやな。争いは人の心を歪めてしまう。悲しい事や…』


しばらく沈黙が続いた。荒れた道を車両が揺れながら進んでいく。


「ハーモニア」


『ん?どうしたん?』


「昔は…1000年前は、本当にそんなに平和だったのか?」


『ウチがそれに封印される数年前までは、やな…。』


ハーモニアが正直に答えた。


『問題もあったし、小さな諍いもあった。でも、みんな話し合いで解決しようとしてたんや』


「話し合いか…」


『相手の気持ちを理解しようとして、お互いが納得できる方法を探してた』


仁には信じられなかった。種族間の対立が当たり前の世界で育った彼には、そんな時代が実在したとは思えない。


「でも結局、戦争になったんだろう?」


『うん...』


ハーモニアの声が小さくなった。


『ウチがうまい事やってたらもっと違ったんかもしれんのよ….』


後悔が声色だけでも十二分に伝わってくる。

だがそれは違うだろう。


「一人で全部どうにか出来る訳じゃあないだろ?1000年前でも一緒だと思うけど」


仁が言った。


「戦争も小さないざこざだって、全部ひとりで解決なんて魔法を使っても俺は無理だと思う」


『……ありがとう』


ハーモニアが微笑んだ。


『でも今度は違う。仁君が仲間がおるからな!』


「俺はまだハーモニアを完全に信用してるわけじゃないぞ」


『分かってるで。それでええんや。信用しすぎると痛い目にあうんよ。……よく知ってる。でもウチは仁君を信じてるで』


ハーモニアなら信じてもいいのかもしれない。

気持ち的には十分信じたいという気持ちはある。

だが完全に信用して仲間になるというのは仁にとってはまだ難しいのであった。

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