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それから数日後。紅狼騎士団の一行は砦を出発した。
総勢およそ百名。最底辺とはいえ騎士団である以上、移動には騎獣を含めた隊列を組む。だが、真紅の毛並みを持つ六本足の巨大狼が整然と並ぶ様は、道行く人々の目を奪った。
「おい見ろよ、紅狼だ」
「へっ、あれが最下位の騎士団だってさ。模擬戦の賑やかしだな」
「だがあの赤い狼……本物なら、並の騎士団じゃ手に負えねえぞ」
囁かれる声の中、紅狼騎士団は沈黙を保ったまま進んでいく。
馬よりも遥かに大きく、鋭い爪と牙を持つ騎獣“エリヴァール”に跨ったアルの姿は、圧倒的な存在感を放っていた。赤い髪が風に揺れ、長槍が太陽を反射して光る。
「なあ、団長。俺ら、もし帝都でなんか揉め事に巻き込まれたら……どうすんだ?」
ワイズが馬鹿っぽく聞いた。アルは軽く笑って、こう言った。
「そんときゃ、紅狼らしく吠えるだけさ」