第1話 転生
気が付いた時、俺は森にいた。
釜を持った男が俺を追い掛けて来ている。
「うぉぉ」
シュビーン ザッッ 矢が左腕を掠めた。
「うそだろ!」
俺は叫ぶ
突如、木の影からゴブリンが現れ釜男に槍を振り回す釜男は避けて地面に倒れながら体勢を立て直す。
「ドン大丈夫か」
ゴブリンが俺の方を見ながら叫ぶ。
釜を持った男の後ろに弓をかざした男が見えた瞬間、俺の後ろから斧を持ったゴブリンが走り去って行く。
シュビーン
甲高い矢が放たれた音が聞こえた。
身体を捻り矢を避けながら斧を持ったゴブリンが弓を持った男に近づいて斧を投げたが、弓を持った男は木の影に隠れる。
「クッ!外れた」
斧を投げたゴブリンが叫ぶ。
弓を持った男が、狙いを付けて矢を射ぬこうとしたその時、突如現れたタイガーが、弓を持った男の首もとに噛みつき森の奧に消えて行った。
それを見た釜を持った男は、一目散に走り去った。
俺は何が起こったのか解らず立ち尽くす。
辺りを見渡しながら槍を持ったゴブリンが話し掛けてくる。
「あぶねぇとこだったな! シルバータイガーが何でこんな所に? 兎に角だ、長に報告しに村に帰ろう」
「…」
「おいドン聞いているのか?」
木に刺さった斧を取り、こちらに近づいてくるゴブリンを見ながら俺は自分の手のひらを見つめる、薄い緑色の手のひら、手の甲、左腕から矢を掠めた時に出来た傷口から青色の血が出ていた、俺は頭を抱えながらその場にしゃがみこむ。
「おい!大丈夫か頭でも打ったか?」
俺はそうじゃないと思い立ち上がった。
斧を持ったゴブリンが近づき。
「怪我したか」
俺の肩に手を回す。袋から草を出し、俺の腕の傷に草を刷り込む。
「大丈夫そうだな!村に帰ろう」
獣道を進むと水場があり、そこで休憩を獲る。俺は泉に近づいた鏡面反射した泉に、耳の尖った団子鼻のゴブリンが映って見える。
俺は頬をつねった痛い夢ではない、そのゴブリンが自分であることを俺は理解した。