表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

タイトル未定2024/05/02 12:32

輝く朝日が差し込む寝室で、ヴィオレッタは柔らかなシルクのシーツに包まれながら目を覚ました。彼女は前世の記憶を持っていることに気づいている。


「私が、あの乙女ゲームの悪役令嬢だったなんて…信じられない」 ゆっくりとベッドから起き上がり、窓辺へと歩みを進めるヴィオレッタ。外に広がるアルトリア公国の景色を眺めながら、断罪エンドを迎えた前世の自分を思い出していた。冷や汗をかきながら、切羽詰まった表情で呟く。


「あの時は、誰からも愛されず、孤独のまま処刑されてしまった…二度とあんな思いはごめんだわ」 「でも、今度は違う。きっと運命を変えられる」


そう心に誓うと、ヴィオレッタは真っ先に自分の行動を改めることにした。執事のアルフレッドが部屋に入ってくると、ヴィオレッタは優しく微笑んだ。

「いつもありがとう、アルフレッド。今日も宜しくね」 驚きを隠せないアルフレッドに、ヴィオレッタはさらに丁寧に話しかける。 「昨日は少し気分が優れなかったみたいだけれど、今日はすっかり元気よ」 こうしてヴィオレッタは、周囲への態度を変えていった。使用人たちと穏やかに会話を交わし、領民の悩みにも耳を傾けるようになる。

「おはよう、メアリー。今日のお茶はカモミールにしようかしら」

「はい、ヴィオレッタ様。カモミールは心を落ち着けてくれますよね」

「そうね。メアリーがいつも美味しく淹れてくれるお陰よ。いつもありがとう」 メアリーは嬉しそうに微笑んだ。 徐々に、彼女に対する評価は上がっていく。

ゲームの攻略対象との関係改善にも力を入れた。

王子のエドワードとは、馬術の話で盛り上がった。

「ヴィオレッタ様は、馬術がお上手ですね。今度一緒に乗馬にでも行きませんか?」

「ええ、ぜひ!エドワード様とご一緒できるなんて光栄です」

公爵家の嫡男、ルークとは読書の趣味が合った。

「このシリーズ、面白いですよね。次の巻が待ち遠しいです」

「わかります!ルーク様とお話できて嬉しいわ。また感想を聞かせてくださいね」

大臣の息子、クロードとは庭園の散策を楽しんだ。

「こちらの薔薇、素晴らしい色をしていますね」

「クロード様、薔薇がお好きなのですか?」

「ええ、特に赤い薔薇が好きです。情熱的な色だと思いませんか?」

「わたくしも赤い薔薇が一番好きですわ」

そんな中、ゲームのヒロイン・リリアだけがヴィオレッタに冷たい視線を向けていた。挨拶をしても無視をされたり、ヴィオレッタが何かを言う度に嫌そうな顔をされたりと、明らかな敵意を向けられていた。 ある日、ヴィオレッタはリリアがメイドのエミリーを罵倒する場面に出くわした。

「エミリー、またやらかしたの?本当に使えないメイドね!」

「申し訳ございません、リリア様…」

「謝って済むと思ってるの?次は容赦しないわよ!」リリアの冷たい声が、廊下に響き渡る。エミリーは怯えた様子で、うつむいている。 私の知っているリリアさんは、こんなに冷酷な人じゃなかった…一体何があったの? ヴィオレッタは困惑しつつも、二人に気づかれないよう、そっと立ち去った。

事態は、思わぬ方向へ動き出す。リリアがヴィオレッタの悪い噂を城中に撒き散らしていたことが発覚したのだ。

「ヴィオレッタ様が使用人を虐げていると…? 信じられません…」 衝撃の事実に、ヴィオレッタは言葉を失う。

リリアの不審な行動を綴じ込めていくヴィオレッタ。周囲の人々に話を聞いてみたり、彼女の行動を観察したりと、真相を探ろうとする。そんなある日、宮廷の書庫でリリアが怪しげな古文書を読んでいる姿を目撃する。

「…まさか、リリアさんがあの禁断の魔術書に興味を持っているの?」 危険を感じたヴィオレッタは、すぐさま宮廷魔術師のオリヴィエの元へ。事情を話すと、彼は深刻な表情で頷いた。

「あの『漆黒の書』は危険な代物だ。リリア様が関心を示していたとは…事態は思った以上に深刻かもしれない」 さらに、ヴィオレッタはリリアの出身地について調べてみることにした。伯爵家の令嬢として育ったはずのリリアについて、詳しい情報を集める。 伯爵家を訪ねると、意外な事実が明らかになる。リリアは伯爵家の実子ではなく、孤児院から引き取られた養女だったのだ。孤児院時代の彼女は、孤独で心を閉ざしていたという。

「リリアは他の子供たちとなじめず、いつも一人で本ばかり読んでいました」 ヴィオレッタは複雑な思いに駆られる。孤児院育ちということを隠し、養父母の期待に応えようとするリリア。その心の内を理解できるようで、理解しがたい。

そんな折、リリアの行動はエスカレートする。

大広間に集められた貴族たちの前で、リリアは大きな声で叫んだ。

「ヴィオレッタ様が王族の方々を侮辱したそうじゃありませんか!」 突然の出来事に、ヴィオレッタは言葉を失う。身に覚えのない罪を着せられ、窮地に追い込まれていく。 動揺を隠せないヴィオレッタに、リリアが寄ってくる。

「これで私の勝ちよ、ヴィオレッタ。あなたはみんなから信用を失ったわ」

「リリアさん、どうしてこんなことを…」

「私はあなたを許せない。私の邪魔をしないで!」 リリアは憎しみに満ちた目で、ヴィオレッタを見据える。戸惑うばかりのヴィオレッタに、彼女は背を向けて立ち去っていった。

しかし窮地に追い込まれたヴィオレッタを救ったのは、信頼できる仲間たちだった。

ルークとエドワードが力を合わせ、ヴィオレッタの潔白を証明する証拠を提示してくれたのだ。

「陛下、これをご覧ください。ヴィオレッタ様が王族の方々と親しく談笑している記録が残っています。彼女が王族を侮辱するはずがありません」

「私も証言します。ヴィオレッタ様は心優しい方です。決して悪口など言う方ではありません」 こうして、ヴィオレッタの疑いは晴れた。彼女は感謝の気持ちでいっぱいだった。

「ルーク様、エドワード様、ありがとうございます。」

「お礼なんて不要ですよ。私たちはヴィオレッタ様の味方ですから」 ルークとエドワードに励まされ、ヴィオレッタは微笑む。彼女には心強い仲間がいることを実感した。

宮廷舞踏会の日が近づいてきた。ヴィオレッタはリリアの真意を確かめるため、彼女を注意深く観察することにした。 舞踏会の夜、大勢の人々が華やかなドレスに身を包み、優雅に踊る中、ヴィオレッタはひときわ美しいドレスで登場した。 「ヴィオレッタ様、今宵は輝いておられます」 「ありがとうございます、クロード様」 ダンスを楽しみながら、ヴィオレッタはリリアの様子を伺っていた。しかし、リリアの姿が見当たらない。 不審に思ったヴィオレッタは、人気のない庭園へと向かう。すると、そこで信じられない光景を目にした。 禁忌の魔法陣に囲まれ、呪文を唱えるリリアの姿が。

「リリアさん…あなた、一体何者なの…?」

衝撃の事実を前に、ヴィオレッタの心は大きく揺れ動くのだった。


第二幕:真実の発見と対決

前世の記憶をたどるヴィオレッタ。彼女はリリアの真の目的を探るべく、古代魔法の書物を紐解いていた。

「この呪文は…人々の苦しみを力に変える、禁断の術…!」 衝撃の事実が明らかになる中、さらなる真実が発覚する。

「リリアが前世で私を利用していたなんて…」 事態のあまりの重大さに、ヴィオレッタは愕然とする。 古代の魔導書には、生贄の魂を捧げることで強大な力が得られると記されていた。その力の源である苦しみや絶望といったネガティブな感情は、犠牲者の数が多いほど強くなるという。 魔法陣に込められた呪文は、まさにその禁断の術式だった。周囲の人々を不幸のどん底に陥れ、その魂を生贄に変えようとしている。 リリアはヴィオレッタを悪役に仕立て上げ、彼女を道具として利用。ヴィオレッタを処刑することで、リリアは多くの人々を絶望させ、強大な力を手にしようとしていたのだ。 過去にも同様の出来事があったことを示す記述を見つけ、ヴィオレッタは言葉を失う。

証拠を集め、真相を伝えようとするヴィオレッタ。しかしリリアは、魔力で仲間たちを次々と洗脳し、彼女を孤立させようと画策する。 リリアはヴィオレッタの元に近づき、彼女をじっと見つめた。

「みんな、ヴィオレッタのことをどう思う?」 不気味な空気が漂う中、リリアが呪文を唱える。すると、ヴィオレッタの仲間たちの目の色が変わった。

「俺はリリア様についていく。ヴィオレッタなんて関係ない」 エドワードの冷たい言葉に、ヴィオレッタは愕然とする。

「エドワード様…どうして…」 ルークも、クロードも、リリアの言葉を信じ込み、ヴィオレッタから離れていく。 リリアの魔力によって洗脳されてしまったのだ。 「みんな、お願い…!私たちの絆を思い出して!」 ヴィオレッタは必死に訴えるが、彼らの耳には届かない。

しかし、ヴィオレッタは希望を捨てなかった。彼女は仲間たちとの思い出を語り始める。

「エドワード様、覚えていますか?私たちが初めて出会った日、あなたは私に優しく話しかけてくれました」「ルーク様、あなたと読書の話で盛り上がったこと、私の宝物です」「クロード様、あなたと見た薔薇の花園は、今も忘れられません」 ヴィオレッタの真摯な思いが、魔力に覆われた心を少しずつ溶かしていく。記憶がよみがえり、洗脳が解ける。

「ヴィオレッタ様、私は....一体何を!」 ようやく我に返った仲間たちが、ヴィオレッタの元に駆け寄る。

「よく思い出してくれましたね。私も、みなさんとの絆を忘れたくありません」 ヴィオレッタは感極まり、涙を流す。仲間たちに支えられ、彼女は再び立ち上がった。

「もう終わりだ、リリア!」 仲間たちと共に、ヴィオレッタはリリアに立ち向かう。

「あなたの野望も、禁断の術もここまでよ!」 しかしリリアは、怒りに震えながら反論する。

「私は孤独だった…誰からも愛されることなく、ただ利用されるだけ。もうあんな思いはごめんよ。この力があれば、私は自由になれる!」リリアの叫びに、ヴィオレッタは胸が痛んだ。彼女もまた、孤独に苦しんできた過去がある。しかし、だからこそわかることがあった。

「あなたの痛みは理解します。でも、力を得たところで、本当の幸せは掴めない。誰かを不幸にしてまで得た自由に、意味なんてないわ」真摯に語りかけるヴィオレッタ。リリアは一瞬、悲しげな表情を見せる。

「わかってない!あなたには何もわからないのよ!」


怒りに我を忘れ、リリアが禁断の力を解き放つ。 ヴィオレッタたちは、全力で応戦する。激しい魔法の応酬が始まった。

「私たちの絆の力、見せてあげる!」 エドワードとルークは剣を抜き、クロードは魔法の盾を展開。ヴィオレッタは彼らの力を借りて、リリアに立ち向かう。

「こんな結末は望んでいなかった…でも、もうどうしようもないわ…」 圧倒的な力の前に、リリアは徐々に追い詰められていく。 そして、彼女の力が暴走し始める。

「リリア、やめて!その力はあなたの身を滅ぼすだけよ!」


ヴィオレッタが必死で叫ぶが、リリアには届かない。 激しい力に飲み込まれながら、リリアは最期の言葉を残した。


「私は…自由になりたかっただけ…」 悲しげな笑みを浮かべて、リリアはその場に倒れこんだ。

ヴィオレッタは、彼女の死を看取る。


「安らかに眠って、リリア」 涙を流しながら、ヴィオレッタは決意を新たにするのだった。


リリアを失ったヴィオレッタは、彼女への思いを胸に刻んでいた。復讐心ではなく、理解しようと努める。そんな中、ヴィオレッタはリリアが育った孤児院を訪ねる。

「リリアは、いつも一人ぼっちで寂しそうでしたわ…」 リリアは他の子供たちと上手く馴染めず、孤立していたのだと院長は語る。両親を知らず、愛情に飢えていたリリアは、孤児院でも心を開くことができなかった。


「あの子は、愛されたくて必死だったのね…」


リリアの孤独に思いを馳せ、ヴィオレッタは目に涙を浮かべる。「リリアの分まで、私がこの国を幸せにするわ」


その決意は、強さに満ちていた。

ヴィオレッタは、孤児院の子供たちを助け、国中を巡る。人々の笑顔を増やすことが、彼女の使命になった。 子供たちに愛情を注ぎ、貧しい人々に施しを与える。リリアのように、誰もが幸せになれる国を目指して。 ヴィオレッタは国民から「慈愛の聖女」と呼ばれるようになっていた。

そしてヴィオレッタは考える。リリアの最期の言葉の意味を。


「あの子は、本当は力を求めていたんじゃない。自由に生きたかっただけなのかも」


リリアもまた、自分の意志で人生を歩みたかったのかもしれない。 ヴィオレッタは、前世に囚われず、自分の意志で生きる道を選んだ。

幾年月が過ぎ、アルトリア公国はかつてない平和を謳歌していた。 公爵夫人となったヴィオレッタは、『薔薇の園』を訪れる。 リリアとの思い出が、美しい花々と共に蘇ってくる。

「リリア、きっとあなたもこの景色を見ているのね」

そう呟くヴィオレッタの瞳には、優しさが満ちている。

「私はあなたの分まで、精一杯生きるから。安心して」

ヴィオレッタの言葉は、風に乗って大空へと響き渡った。 かつての悪役令嬢は、真の聖女となったのだ。

人々から慕われ、尊敬される存在となったヴィオレッタ。 彼女はリリアの人生をも受け入れ、自らの生き方で多くの人を導いていった。 誰もが幸せに暮らせる国を作ること。それが、リリアへの答えでもあった。 「愛こそが、私の原動力です」 ヴィオレッタの周りには、いつも穏やかな笑顔が溢れている。 彼女は自らの人生を力強く歩んでいた。

満開の薔薇が、希望に満ちた未来を祝福するように輝いていた。 ヴィオレッタの人生は、新たな伝説を刻み始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ