お月見ドロボーとハロウィンパーティー
ここは、とある国のとある街。
この街では、9月の中旬から10月末に掛けての期間、ハロウィンパーティーが開かれます。どのお家もみんな、玄関先にはジャック・オー・ランタン! 大きなかぼちゃをくりぬいて、明かりを灯し、ハロウィンの夜を待ちます。
けれど、一軒だけ……かぼちゃの飾られていないお家。
住んでいるのはやんちゃ坊主のテオ。
彼は、パパとママが早くに天国に行ったので、おばあさんと二人暮らし。力の弱いおばあさんと、まだまだ小さなテオの手では、かぼちゃはくりぬけません。
「はん! そんなの、なんでもないやい!」
テオは、ぽんっと小石を蹴ります。やんちゃ坊主なテオは、本当はおばあさん思いの優しい子。決して悲しい顔は見せません。
そんなある月夜の晩、街では事件が起きました。
なんと、家と言う家のかぼちゃが、一夜にして全てなくなってしまったのです!
大人達は大慌て。子供達は、泣いたりはしゃいだり大騒ぎ。
「かぼちゃが誰かに盗まれた! 月夜の晩の、お月見ドロボー! 出てこい、出てこい、お月見ドロボー」
テオは、街のガキ大将。我先にと手を挙げます。
「なんだい、なんだい! みんな慌てるな! おいらがきっと、お月見ドロボーの正体を突き止めてやるって!」
大人達は、子供達の為にも、再びノミを握ります。
えんや、えんや、えんこらさ。くりぬけ、くりぬけ、かぼちゃのおめめ。
作れや、作れや、かぼちゃのお顔!
それでも、作業は一苦労。明日は、なんと、ハロウィン当日です!大人達は大奮闘。街の家々の玄関先に、再びかぼちゃが現れました。
さて、さて、テオはどうしているでしょう?
日の光が峰の間に沈んで、星空が見え始めたその頃に、生垣の隙間に身を隠します。
「ぜったい、突き止めてやるぞ、お月見ドロボー」
そして、夜空に満月が輝く頃。待ちくたびれたテオがコクコクと首を動かしていたら、かぼちゃに手を伸ばす小さな4つの手。テオは大慌て!
「現れたなお月見ドロボー! 絶対に捕まえてやるからな!」
勢いよく飛び出せば、今度は小さな手の持ち主が大慌て!
一目散に飛び出します。犯人は、なんとテオと同じくらいの小さな男の子と女の子!
「待て待て!」
えっほ、えっほ、テオは一生懸命足を動かします。辿り着いた先は街の外れの月見の丘。満月が輝く、この辺りで一番綺麗な丘です。
けれど、あの子供達は見当たりません。そこにいたのは見知らぬ男女。月夜に照らされ楽しそうにダンスを踊っています。何処からともなく音楽が聞こえ、彼らはテオを手招きで誘います。「おいで、おいで、一緒に踊ろう!」
テオは、恥ずかしさに頬を染めながら、そっとその手を取ります。
右へ左へ、手をパンパン、足をたんたん!
「テオ、テオ、ずっと見ていたよ」「テオ、テオ、あなたが大好きよ」
テオは、怖くなんかありません。テオはその二人が誰か分かった気がしたのです。だって、お鼻や瞳や口の形が、テオにそっくりだったんですもの。
楽しい時間はあっという間。気が付けば、あの生垣の後ろで一人、小さくうずくまっていました。
「あれれ? 僕はどうしてここに……」
そこに、テオを呼ぶ街人たちの声。
「テオ、テオ、どこにいるんだい?」
テオがおずおずと出て行けば、おばあちゃんとその側で、街の子供達が大きなジャック・オー・ランタンを持っていました。一人の大人がいいました。
「テオよ、ごめんよ。気が付かなくて。テオが元気に声をあげてくれたから、僕らやっと気づいたよ。これは街のみんなからの贈り物だ。来年も、再来年も、きっと作るよ」
テオは大喜び! さあ、ハロウィンパーティーの始まりです。
みんなで楽しくお菓子を貰いに回りましょう!
「トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうよ?」
貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
読んでくださった皆様に、素敵な事が沢山ありますように(。>ㅅ<)✩⡱
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