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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
最終章 帝国編

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支えて、支えられて


湯浴みを終え、真っ白なワンピースに着替えたアレシアは、自分達の部屋へと戻った。


月明かりの綺麗な夜、バルコニーには向かい合った席が用意され、テーブルの上にキャンドルと花が飾ってある。

寄り添うように置かれた、白と黄色の薔薇はアレシア達のようであった。



「月が綺麗だね。」


イオンは月光に照らされて美しく佇んでいた。

彼も湯浴み後なのであろう、普段結んでいる髪はとかれ、神秘的な雰囲気が漂っている。


彼はアレシアの席に回って椅子を引くと、丁寧な動作で彼女のことを席に着かせた。



「ありがとう。」


相変わらず宝物のように自分のことを扱ってくれるイオンに、アレシアははにかんだ笑顔を見せた。


二人の着席と同時に、グラスが置かれワインが注がれた。

イオンが酒を飲むことは滅多にない。アレシアに至っては、成人してからまだ間もないため酒を口にしたことはない。不思議な気持ちで目の前のワイングラスを眺めた。



「帝国の件も落ち着いたことだし、乾杯しようか。」


イオンは軽くグラスを持ち上げてアレシアに微笑みかけた。



「ええと、私これ飲んでいいの?」


過保護なイオンのことだから自分に酒を飲ませることはないだろうと思っていたアレシア。いきなり勧められた酒に戸惑う。


イオンとワイングラスを交互に見てくるアレシアを見て、イオンが小さく吹き出した。



「ごめん、君のは葡萄ジュースだ。」

「はっ!!?」


まさかのジュース発言に、アレシアは立ち上がりかけた。



「酒は身体に良くない。それに、使用人達に君の赤らんだ顔を見せたくはないからね。どうしてもと言うなら、誰もいない二人きりの時にしよう。」

「分かったわよ…」

「うん、良い子だ。」


イオンの嫉妬に慣れたアレシアは言い返すことなく頷いた。そんなアレシアのことをイオンは嬉しそうに眺めた。




「アレシア、無理をしてないかい?」

「えっ??」


メインの料理を食べ終わる頃、イオンが真剣な表情で唐突に尋ねてきた。

突然の言葉に、アレシアは聞き返すことしか出来なかった。



「帝国では何度も命を狙われ、それなのに帰国後は休むことなく事業の立ち上げ準備をして…君に負担がかかっていないか心配なんだ。僕のせいで無理をしていて…それで僕のことを嫌になってしまったらどうしようって…」


「イオン…貴方そんなことを…」


「最初は君がいればそれだけで良かったのに。心を手に入れたと思ったら手放せてやれなくなった。全て囲って全て自分のものにして、それでもまだ足りなくて…こんなにも君のことを欲している。いつか君のことを丸ごと飲み込んでしまいそうで怖い。こんなのおかしいと思うだろ?」


イオンは、どこか思い詰めたような寂しい顔で笑ってみせた。

普段見せることのない彼の弱い顔に、アレシアはぎゅっと胸が締め付けられた。



「おかしくないわよ。それがイオンでしょ?私のことを好きで好きで堪らない人が貴方で、そんな貴方のことを好きなのが私よ。それに、国のことも私が好きでやっているの。何も出来なかった私が貴方を見て、貴方のようにこの国のためにありたいとそう願った結果よ。」


一気に想いを告げたアレシアは、グラスを手に取り葡萄ジュースを煽った。



「イオン・サフィックス国王陛下!」

「はい」


いきなりの敬称呼びに、イオンは思わず姿勢を正し、膝の上に手を置いて真正面からアレシアのことを見た。



「私に愛されている自覚と自信を持ちなさい!」


アレシアの言葉に雷に打たれたような強い衝撃が走った。


いつまでも可愛らしい自分だけの少女だと思っていたアレシアが、自分のことを叱咤し道を示そうとしてくれている。それはもう紛れもなく王妃の貫禄であった。

そんな強く美しい人が自分に愛されている自覚と自信を持てと言ってくれている。イオンにはこの上ないほどの言葉であった。


心の内に形容し難い感情が込み上げた。それはもう、愛情や恋情などといった言葉では言い表せられないほど高貴な感情であった。

つい最近まで表情を変えず意志を示さずただ自分の隣にいただけの存在が今はこんなにも頼もしく、そして温かく自分に寄り添ってくれている。


彼女はもう、イオンが一方的にただ守るだけの対象ではなかった。



「本当にもう…君には敵わないな。アレシア、心から愛している。」


イオンの頬を一筋の涙が伝った。


いつもニコニコと何事にも動じないイオンが見せた何の飾り気もない素顔。

弱くて枯渇した心を持つその姿は、イオンにとっては気恥ずかしく、アレシアにとってはとても好ましいものであった。



「いつでも慰めてあげるから、私の前では弱いところも見せて。」


アレシアは慈愛に満ちた笑顔を向けた。だが、返ってきたのは怪しい笑みだった。



「アレシア、疲れてないって言ったよね?」

「ええ。」

「弱いところを見せてもいいんだよね?」

「もちろん。」

「じゃあ、寝室に行こうか。」

「へ…?」


イオンはクスッと微笑んでアレシアの席まで移動すると、彼女の手を取って立ち上がらせた。



「もう耐えられない。今すぐ慰めて。」

「は!!?」


言葉の意味を理解した時には遅かった。

そのままずるずると寝室まで引っ張っていかれてしまった。



数十秒前まで向かい合って優雅な晩餐を堪能していたはずなのに、一転、気付いた時にはベッドの上で両手首を拘束され、青い瞳に見下ろされていた。



「イオン、食事がまだ途中なのにお行儀が悪いわよ。使用人の皆が困っちゃう。」

「ああ、確かまだデザートが残っていたね。」

「いやっ!違うわ、そう言う意味じゃ!!」


話題を変えようと思ったが、アレシアは墓穴を掘ってしまった。有利になったイオンはにっこりと天使の微笑みを浮かべた。



「アレシアが嫌と言うなら無理強いはしない。今すぐにでも席に戻ろう。」


試すように見つめてくる青い瞳。



「えっと、じゃあ…戻りましょ…んっ!!」


これ幸いと席に戻る提案をしようとしたが、口付けで妨害され、最後まで言葉を発することが出来なかった。



「やっぱりやめた。こういうのを女性に委ねるのは男らしく無かったね。ねぇ、アレシア。僕の愛を受け取ってくれるかな。」


優しく語りかけるようなひどく甘い声音に、アレシアは青い瞳を見つめ返した。



「僕の一生をかけても、君への愛を伝えられるかどうか…もう一分一秒無駄にすることは出来ないな。」


「私だって、一生をかけてでも貴方の愛を全て受け取って見せるわよ。」


つい強気な口調になってしまった。


そんなアレシアの勝気な言葉にスイッチの入ったイオンは、アレシアのことを強く抱きしめ、言葉を返す代わりに深い口付けをした。


アレシアに煽られたイオンが理性を保てるはずがなく、翌朝まで本能のままたっぷりと愛を伝え続けたのだった。





こちらで本編完結となります!

ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます。

また気が向いた時に彼らの今後を少し投稿できればなと思います(´∀`)

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