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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
最終章 帝国編

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クロエの攻略


久しぶりの畑仕事を終えたアレシアは、湯浴みをして支度を整え、自分の執務室に来ていた。

珍しくイオンは自分の執務室におり、今この部屋にはアレシアとクロエしかいない。



「クロエ、私考えたんだけど、王宮内の畑や動物達の世話仕事を平民に任せるのはどう思う?」


アレシアは自信なさげに、隣に控えるクロエの顔をチラリと見上げた。



「それは…面白いかもしれません。宜しければ詳しくお聞かせ頂けますか?」


思ったよりも良い反応であった。

好感触にホッとしたアレシアは、思い切って自分の考えを話すことにした。



「ちょっと理想が過ぎるかもしれないけど、この畑の世話や魚と鶏の育成を、仕事がなくて困っている平民に任せるの。最初の教育は初期投資として、王宮の人間を当てがい、働いてくれた人達へはこの事業で得た利益を渡すのはどう?自分たちで育てた食物を売って金銭を得る。それうまくいかないかな…」


アレシアの考えを咀嚼するように、クロエは丁寧に相槌を打ちながら聞き入っていた。



「王宮の土地は現在何も利用しておらず無価値に等しいですから、事業のために使用することは非常に有効的かと思われます。ただ、軌道に乗るまでは多少なりとも時間が掛かるかと…」


「うーん…それはそうよね…そもそも未経験の者が始めるわけだし。最初はうまくいかないよね。となると、波に乗るまで収入保障が必要か…」


「収入保障、ですか?」


聞き慣れない言葉に、クロエが引っかかり聞き返してきた。



「あ、ええと…お金が手元に入るまで時間が掛かるだろうから、それまでの期間を国で負担できないかな、なんてね…」


うっかりと前世の知識を持ち出してしまったアレシア。へへっと普段やらない不吉な笑い方で必死に誤魔化した。



「なるほど、国が負担、ですか…そのように考えたことはございませんでした。それは借り入れという形を取るのでしょうか?それとも給付でしょうか?」


「うーん…正直そこまでの構想はまだ…もちろん、国の予算に余裕があるなら給付が良いけど、なかなか難しいよね…国からの貸し付けは少し気が引けるというか、返せなかった時のことを考えるとちょっと…ね。となると、後はもう貴族から出資を募るくらいしか…」


「出資…ですか?」


「そう。これを国家事業として立ち上げて、その可能性に対してお金を払ってもらうの。事業が成功した暁には、その数%の利益を譲渡するとかそんなやつ。私は経済の仕組みにはそこまで明るくないから、このあたりの細かい話はファニスに聞いた方が良さそうね。」


「畏まりました。それでは概要をまとめてファニス様に提出致します。」




キリのいいところでお茶休憩となった。


アレシアは、紅茶とともに運ばれてきた菓子を手に取り美味しそうに頬張る。少しでも前進できたことに上機嫌だ。

クロエもアレシアに勧められて、その隣で控えめに紅茶を口にしている。



「そう言えば、クロエの好きな人ってファニスなの?」

「ゴホッゴホッゴホッ…!」


アレシアの脈絡もなく何気なく言ってきた言葉に、クロエは盛大にむせた。



「あら、図星?」


アレシアは、行儀悪くテーブル頬杖をつきながら、クロエのことをニヤニヤした顔で眺めた。

クロエは、むせたせいか恥ずかしさのせいか、涙目で頬を赤く染めている。すぐに反論したかったが、むせたせいで上手く声が発せられない。



「安心して。私こう見えて口は硬いから。」


今度はえっへんとワザとらしく胸を張り、腰に手を当てて堂々と言い切った。全くもって当てにならない言葉であった。



「ちょっと、お待ちください!私はそのようなことはひと言も…!!」


「何やら楽しそうな雰囲気だね。」


いつの間にかアレシアの執務室に現れたイオンは、全く愉快そうではない雰囲気を醸し出していた。



「国王陛下、大変申し訳ございません。お見苦しいところをお見せ致しました。」


クロエはすぐさま立ち上がり、イオンに対して最敬礼の姿勢を取った。



「…妬けるな。」


イオンはすっと目を細めてクロエのことを睨み付けた。

この狭量な男は、妻の専属護衛に対しても対抗心を燃やしているらしい。



「ちょっと、イオン!今いいところだったのに!」


冷静沈着のクロエをあともう少しで攻略出来そうだったのにとアレシアはイオンに膨れっ面を向けた。

だが、アレシアの顔を目にした瞬間、イオンは花開くような笑顔を見せた。



「愛しのアレシア。急ぎ、君に伝えたいことがあって駆け付けたんだ。もちろん君に会いたかったことが一番の理由だけどね。」


相変わらず、甘く蕩けるような顔で見つめてくるイオン。いつまで経っても慣れない美しい顔に、アレシアはたじろいだ。



「な、なによ…」


「アレシア、新婚旅行に行こう。」


「は…???」


全く予期していなかった言葉に、アレシアは固まり真顔になった。





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