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父親との対戦


「なんだと…?誰に向かってそんな口を聞いているんだ!お前に拒否する権限などない。いいから黙って言うことを聞け!!」



初めて言い返してきたアレシアに、驚きを隠せないネストル。

アレシアに言うことを聞かせようと、焦りで声が大きくなり、早口になった。



「お父様、私は正式に婚約解消をお伝えするため、改めて王子とお会いするつもりですわ。まだ今は婚約中の身ですから。」


ネストルとは対照的に、余裕たっぷりの微笑みで堂々と話し始めたアレシア。

見たことのない娘の姿に一瞬怯んだネストル。



「い、いきなり、何の話をしてるんだ!時間稼ぎのつもりか。もうここにお前の居場所はない。さっさと出て行け!」



「アルティーノ家はずいぶんと長い間、領民から必要以上に搾取していましたね。私とても驚きましたの。それはもう衝撃が強すぎて…今すぐ誰かに話を聞いてもらいたいくらいに。そうですわね…例えば、これからお会いする予定の王子とか。」


にっこりと微笑み掛けるアレシア。



ゆっくりと机に向かって歩き、証拠となる書類を引き出しから取り出して、ネストルに差し出した。


これは、ティモンに頼んで用意してもらった証拠だ。物言わないアレシアの前で隠すことなく、長年堂々と不正を行っていたため、彼女はアルティーノ家が行っている悪行のほとんどを知っていたのだ。





ネストルの顔が真っ赤から一気に真っ青になった。

彼は、自分の悪行を認めるかのように、受け取った紙をビリビリに破いた。



「お、お前という奴は…父親を脅すのか!この恩知らずが!!」



ネストルは大声で怒鳴りつけた。


その怒気の強さに部屋の外にいたティモンは、恐怖で身体を震わせた。中に入りたいが、恐怖で足が動かない。



「ふふ、聡いお父様ならお分かりになりますでしょう?不正ばかりしてきた公爵家当主とまだ王子との婚約を正式に解消していないわたくし、どちらの方が権力がありますかしら?」



怒り狂う父親をものともせず、アレシアは愉快そうな笑い声を上げた。




見たことのない娘の姿に、ネストルは明確な恐怖を抱いた。


どうしてこんなことに…


もうすぐだったのに…


今まで何のために…


ネストルは、がっくりとその場に膝をついた。

自分の負けだ…そう思った。



正気を失ったネストルは、顔面蒼白の顔で無言のまま、自らアレシアの部屋を去って行った。






「姉様!すごいよ!!あの父親を黙らせるなんて!」


姉の姿に感動したティモンが勢いよく部屋の中に入ってきた。


「ありがとう。証拠を用意してくれたティモンのおかげよ!あいつを黙らせることが出来てすっきりしたわ!!」


アレシアは晴々とした顔で笑った。


「本当に!堂々とした悪役ぶりに僕は感動したんだ!」


「悪役って…まぁ確かに、ちょっと性格の悪すぎる言い方をしたけどね…」






その日のうちに、アレシアの両親は邸を去り、領地へと引っ込んだ。娘に不正をバラされることを恐れたためだ。

なにより、アレシアの変貌ぶりが、トラウマになる程怖かったらしい。






よし、これで目先の問題は解決した。


残るは王子か…


何事もなく婚約解消出来るといいのだけど…単細胞な父親と違って、王子は何を考えているか分からないタイプだから慎重に策を練ろう。


念の為、婚約解消を拒否された場合についても考えておかなくちゃ。



せっかく自ら呪縛を解いたんだ。



王子との関係も無しにして、私はここから自分の人生をやり直すのよ。







その翌日、午後に王子がアレシアの見舞いにやってくるという先触れが届いた。



思ったよりも早かったわね…



よし、ここが私の正念場。

何としても穏便な婚約解消を勝ち取るのよ!


王子との決戦に向けてアレシアは気合いを入れた。



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