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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
第一章 婚約解消編

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成人の儀


成人の儀の開始時刻は、本日正午。

儀式と名がついているが実際の中身は形式的なもので、司祭が取り仕切る中で儀式に必要な動作をひと通り行い、最後には、国王陛下からお言葉を頂戴して終了となる。


その後は、関係者のみで晩餐会が開かれる。



この儀には、国王両陛下、王太子、司祭、それぞれの側近として、宰相とファニスが参加する。

加えて、3名の楽器隊、儀式の介助を行う者が2名、護衛が4名、合わせて15名ほどが会場内に入ることになる。



会場となるのは、王宮の敷地内にある、白亜の正方形の建物だ。


建物の周りには、出入り口を中心に20名ほどの騎士が配列している。関係のない者は一切近付くことが出来ない。

王宮で従事している人々にも、今日一日はこの建物の近くに寄らないようにと厳命が下されている。




物々しい雰囲気の中、護衛を先頭に、両陛下とその後ろにイオン、少し距離を置いて、司祭と宰相とファニスが続いて建物の中へと入って行った。


その後しばらくして、楽器隊の鳴らす音を合図に、儀式が始まった。




司祭の進行により、滞りなく儀式を終え、あとは国王陛下からのお言葉を頂戴するのみとなった。


イオンは事前に決めらていた位置に立つと、その場に跪き、国王に向かって(こうべ)を垂れた。 



イオンと同じ、金髪碧眼の国王は、厳かな装いに似合わない面白くなさそうな顔で、懐から一枚の紙を取り出した。

部下に書かせた、成人の儀を終えたイオンへの言葉だ。



「イオン・サフィックス、此度の儀を終え、成人と認められたことをここに宣言する。今後は、為政者の一員であるという自覚を持ち、更なる研鑽を積み、己を極限まで高めよ。そして、民のために、その命尽きるまで励むが良い。今後の活躍に期待しておる。」



本来であれば、そのままの姿勢で国王への礼を述べるのだが、イオンは許可を得ないまま、立ち上がって国王の顔を見た。



突然のイオンの行動に国王は眉を上げ、顔を顰めた。


「お前、何のつもりだ。」


国王の射るような視線にも、脅すような低く怒気の含んだ声にも動じることなく、イオンは真正面から国王を見据えていた。



「貴方の時代は終わりました。今日からは、私がこの国を良き方向へと導いて参ります。」


冷静に淡々と話すイオンの声が静かに響いた。



「お前…自分が何をしでかしているのか分かっておるのか。これは国家に背く犯罪行為だぞ。タダで済まされると思うなよ。」


「その言葉、そのまま貴方にお返ししますよ。今までご自分が何をして来たのか分かっていますか?平民の命をぞんざいに扱い、部下に不正まで働かさせて必要以上の税金を巻き上げ、自分たちの富としてきた。国家に背く行為ばかり働いて、タダで済むとお思いですか?何か一つでも民のために貴方がしたことはありますか?」


イオンの最後の言葉は、怒りが募るあまり、声が震えていた。



「お前は!一体何のつもりだ!!言わせておけば、自分勝手なことばかり言いおって。この国の権力者は私だ。私のために国を動かして何が悪い!!おい、こいつを縛って投獄しろ。国家に反逆した重罪人だ。死罪に処す!!」


静かな部屋に国王の怒鳴り声が響く。隣の王妃も顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。

後ろに控えていた宰相は無表情だった。彼は王太子派に寝返っていたのだ。



国王の命令に、控えていた4人の護衛が一斉に剣を抜いた。


彼らは、牽制するように剣を向けた。が、その相手は、イオンではなく国王だった。



「お前ら…誰に向かって剣を向けている。この意味が分かっているのか!!!」


国王は物凄い剣幕で怒鳴り付けた。だが、剣を下ろす者は一人もいなかった。国王に剣を向けたまま微動だにしない。



「無駄ですよ。彼らは僕の臣下です。貴方の言うことはもう聞きません。外にはまだ何人か貴方の味方もいたようですが…既に私の部下が身柄を拘束しています。」


「おのれ!!この私に本気で歯向かう気か!!」


「歯向かう?これはもう終わった話です。私は既に起きたことを伝えているだけです。この国に貴方の居場所はもうありません。それだけです。」


「なんだと!!??馬鹿にするのも大概にしろ!!」


「ああそれと、貴方には病死してもらいます。王妃もその心労から体調を崩され隠居した。だから、王太子である私が王位を引き継いだ。そういうことになりますね。私たちの親子喧嘩にこの国を巻き込みたくありませんから。」


イオンは、顔を真っ赤にして声を荒げる国王とは対照的に、微笑みすら浮かべて淡々と告げた。


ファニスが、イオンに耳打ちをし、それを聞いたイオンは一つ頷いた。




「国王両陛下、どうぞお大事になさってください。」


イオンが冷笑を浮かべて言い放った。

その言葉を合図に、護衛たちが国王たちの身柄を拘束した。



「こんなことが許されると本気で思っているのか!!離せ!!!勝手に触るな!!!この無礼者が!」


「や、やめなさい!何するのです!!」



イオンの手刀によって強制的に静かにさせられた二人は、護衛たちの手によって、秘密裏に今は使われていない地下牢へと運ばれた。


拘束された国王派の騎士たちは、結託して反乱を起こす可能性があるため、別々の場所に移送されたのだった。




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