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【本編完結】ドールと呼ばれた公爵令嬢の乱逆  作者: いか人参
第一章 婚約解消編

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特訓の成果


ファニスとの特訓を重ねたアレシアは、いよいよ本番の日を迎えた。



朝から入念に、いつもよりも時間を掛けて身支度を整えた。


イオンから贈られたドレスは、前回よりも少し控え目で、彼女のプラチナブロンドの髪とよく合う、淡い水色のものだった。

広がった裾は、動くたびにふわりと舞い、表面に縫い付けられた細かい粒子のような宝石が煌めく。


可憐だが、どこか儚げな印象だった。





支度を整えたアレシアは、前回同様、ティモンともに王宮へと向かう。


イオンは立場上、迎えに来ることが出来ないため、入場前に控え室で落ち合うことになっている。





控え室までアレシアを送り届けたティモン。


今回は、アレシアも主催者側となるため、彼が一緒にいることは出来ない。

ティモンは一般客と同様、会場内でイオンとアレシアの入場を待つこととなる。




「姉様、せっかくのパーティーなんだから、余計なことは気にせずに楽しんで来てね。」


「安心しなさい、ティモン。私が貴方の分も稼いでくるわ!特訓の成果を見せ付けてやるんだから。」


「…ほどほどにね。」


今日のアレシアの見た目は極上だったが、中身は相変わらずの姉であった。



こんないつもの姉様で本当に大丈夫かな…逆に王子に恥をかかせないかな…



ティモンは、姉ではなく、王子の心配で頭がいっぱいだった。






「アレシア、迎えに行けなくてごめんね。」


控え室に入るとすぐ、申し訳なさそうな顔をしたイオンが出迎えてくれた。


だが、アレシアを見た瞬間、ぱっと彼の顔は輝き、蕩けるような笑顔に変わった。




「君はどんな時でも美しいけれど、今日は一層美しく輝いている。こんなに素敵な君が今宵僕の隣にいてくれるかと思うと、胸の高鳴りが止まらないよ。僕の心臓は持ち堪えてくれるだろうか。」


「ふふふ、私も今宵どれだけ稼げるかって考えると、胸の高鳴りがおさまらないわ!私の本気を見せてあげる。」


「…ああ、楽しみにしているよ。」


言語も使用した単語も同じはずなのに、2人は理解し合うことが出来なかった。





婚約パーティーの開始時刻、イオンとアレシアは護衛に先導され、隣接している会場へと向かった。


会場へと続く大きな扉の前で、入場の声掛けを待つ2人。




大丈夫、大丈夫。


何度も何度も練習してきたんだから。


私は女優、私は女優、私は女優…




アレシアが心の中で自身を鼓舞していると、入場の合図が耳に届いた。



「さぁ、行くよ。」


振り向いたイオンが笑顔で腕を差し出してきた。



これまで何度も取ってきた彼の腕。

マナーだから、婚約者だから、差し出されたから、そんな義務のような感覚で。


でも今のアレシアは違う。


彼女は、初めて自分の意思で彼の腕を取った。その瞬間、不思議な感覚に包まれた。

歯痒いような、安心するような、照れ臭いような、それは今まで感じことのない感覚だった。



よく分からないその感情に蓋をするように、彼女は今から始まる舞台に気持ちを切り替えた。






イオンのエスコートで会場入りしたアレシア。2人は、ゆっくりと歩きながら席へと向かう。


主役の登場に、招待客から盛大な拍手が送られる。会場は2人に対する祝福で溢れていた、表向きには。



あいつは…国王派だったな…嫌な顔を隠しもせずに…


自分に対してならまだしも、隣のアレシアにまでそんな目を向けるなど…




イオンは隣にいるアレシアを見た。 


彼女はイオンの視線に気付き、ゆっくりと彼に目を向けた。


アレシアは、彼と目が合った瞬間、恥じらうように目を逸らして頬を赤く染めた。



え…



初めて見る彼女の姿にイオンの心は鷲掴みにされた。

呼吸が止まりそうなほど、息が苦しい。それでも、アレシアから目を離すことが出来ない。


胸が苦しいのに、視線を逸らしたくない、呼吸が止まったとしても、このまま見つめていたい…




動揺の止まらないイオンをさらに追い詰めるかのように、アレシアは、ゆっくりと視線を上げ、潤んだ瞳で窺うように彼の瞳を捉えた。



「皆様の前で…そんなに見られては恥ずかしいですわ…」


「っ…」



潤んだ瞳、赤く染まった頬、合いそうで合わない巧みに晒される視線、震える声、彼女の全てがイオンの心を掻き乱した。


鼓動が早くなり、アレシアのことしか考えられなくなる。ふっ飛びそうになる理性を必死に抑え込んだ。


ここは王宮、取り乱した姿など見せるわけにはいかない…


イオンは必死にとり繕い、どうにか平常心を保っていた。




今まで型にハマった笑顔しか見せてこなかったアレシア。そんな彼女が恥ずかしそうに頬を染め、瞳を潤ませている。



その破壊力は凄まじかった。



彼女の姿を目にした周りの男性達は、一瞬で魅了された。

パートナーがいる男性でさえ、惚けた顔でアレシアに見入っていた。

彼女の美貌と魅惑的な姿に、女性すら頬を朱色に染めている。





一方、特訓の成果を発揮できたアレシアは、



よしっ!これで掴みはオッケーね!



と心の中で拳を握っていた。

アレシアは、周囲にバレないよう、偶然を装いながら何気なくファニスのいる方を見た。



彼は、手で数字を示してアレシアに見せた。


結果を確認した彼女は、満足そうに頷き、大輪の花のような、輝く笑顔を見せた。



そんな2人のやり取りなど知らない周囲は、恥じらう姿から一転、華やかな笑顔を見せたアレシアに再度心を射抜かれていた。


床に膝をつく者や壁に手をつく者まで現れたのだった。









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[一言] wwwww 幾ら稼げたか気になる! 楽しく読ませてもらってます! ありがとうございます!
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