一難去ってまた一難
ファニスは早速行動に移した。
まずはアレシアが見ていた書類に目を通し、使えないことを確認した上で、アレシアとティモンにいくつか質問をした。
2人の話に、頷きながら耳を傾けたファニス。
その後、アルティーノ家でやることは済んだのか、
「夕刻までには戻ります。」
とだけ告げて、どこかへ行ってしまった。
「まさか、逃げたわけじゃないわよね…?」
「さすがにそれは無いんじゃないかな。逃げたら、あの王子に怒られそうだし。」
「そうよね…とりあえず待ちましょうか。」
特段やることの無い2人は、紅茶を飲みながら、呑気にファニスの戻りを待った。
夕刻よりやや早い時間、ファニスはちゃんと戻って来た。
「お待たせしました。無事に終わりました。」
「「はぁっ!?」」
「ふふ、さすがはご姉弟。息ぴったりの反応ですね。」
「いや、そんなことはどうでも良いから。何がどう無事に終わったのよ!?もう問題解決はしたの?あなた一体何をしてきたのよ!」
「ええ、今からご説明しますね。」
ファニスによる説明はこうだった。
彼はまず、王子の権限で仮の銀行口座を作り、そこに公爵領からの税収が入るように手続きをした。ネストルによる乱費を防ぎ、領地経営に必要な金を手元に残すようにするためだ。
次に、王宮に残っていた帳簿を元に、前年度の税収を割り出した。
それを更に分析した結果、国で定められている基準よりも2割多い額で、領民から税収を得ていることが分かった。
その2割分は、勝手に取引単価を値上げて、得ていたため、ファニスは、公爵家が取引している全ての品の単価を見直した。すべて適正価格となるよう見直しを行い、作成した改定後の価格表を関係者全員に通達した。
最後に、アルティーノ家が隠していた借金を王子名義で借り上げ、毎月の税収額から天引きするように手配し、見かけ上は、アルティーノ家の借金は0となるようにした。
以上が、約半日でやってのけた彼の所業だ。
「う、うそでしょ、、、た、たった半日でこれを全て??、、これが、王子側近の実力なのね、、、」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です。」
ファニスの迅速且つ的確過ぎる行動に、アレシアは、なぜかショックを受けていた。
「姉様、僕たちのやっていたことって一体…」
「ティモン、非凡人と自分を比べてはダメよ。人は皆、自分だけの良さがあるの。心を強く持ちなさい。」
「…姉様。うん、僕もっと強くなる。」
相変わらず、どこかズレてる姉弟ですね・・・
ファニスは心の中で呟いた。
「アレシア様、私はお力になれましたか??」
「もちろん!こんな半日で解決してしまうなんて!本当にありがとう。大変な手間を掛けさせてしまったわね。」
「いいえ、私への御礼は不要です。私はイオン王子殿下からのご指示で動いただけですから。」
「嫌な予感がするのだけど…」
「御礼は王子に直接お願いします。」
「それはもちろん!御礼は伝えるわ。こんなに良くしていただいたんだもの。」
「王子から、お手紙を預かって参りました。」
「え??手紙…?」
差し出されたのは白い封筒だった。
中を開くと、美しい文字でアレシアに対する美辞麗句がびっしりと書き連られていた。
「何の嫌がらせよ、これは…」
しかめ面をしながらも、1枚、2枚と美辞麗句ゾーンを斜め読みし、何とか最後の便箋までたどり着いた。
最後の文だけ内容のある文字だった。
『御礼は王宮で聞くから。美味しいお茶とお菓子を用意して待ってるよ。』
「…なっ!!こんなの…誘いに乗るしか無いじゃない…見事にハメられたわ…」
手紙を握りしめたまま、アレシアは項垂れた。




