プロローグ
私には感情がない。
『何も感じるな、自分の意見を持つな。微笑みを絶やすな。』
そうやって幼少期から16歳になる現在まで、両親から感情を表に出すことを禁じられ、次期王妃として厳しく育てられてきた。
物心ついた頃から、涙を流した記憶がない。
私には、それが良いことなのか悪いことなのか、それすら判断ができない。
自分の好きなものも嫌いなものも分からない。したいこともしたくないことも分からない。
黙って親の言うことに従うだけ。
それを嫌だと思うこともない。
だって、私には感情が無いのだから。
笑うってなんだろう?
怒るってなんだろう?
悲しいってなんだろう?
それって生きる上で必要なものなのだろうか。
私には分からない。
毎日毎日、王妃になるための教育だけを受けて育ってきた私には、感情なんて必要ないのだと思う。
王妃になるためだけに今まで生きてきた私。
王妃になったら、そこで私の人生は完結するのだろうか。
それとも、また違う誰かが、次に向かう道を示してくれるのだろうか。
そんなことを考えるが、不安はない。気持ちが揺らぐこともない。
私には心そのものがないから。
あの日まで、私は自分のことを本気でそう思っていた。
出だしは若干暗めですが、これからすぐに明るくなる予定なので、気持ちの乱高下にご注意下さい!
きっと書いているうちにまたラブコメ要素強めになるような、そんな予感がしています笑
これからよろしくお願い致します。