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死者の集い『ゴーストパーティー』  作者: 戸塚悠太
第一章『一竜編』
6/6

第一章6 『占い』

「俺は……どうしたらいいんだ……」

ラジュカは商店街が立ち並ぶ路地の裏にうずくまっていた。商店街は、朝だというのに意外とたくさんの客でにぎわっていた。全速力でここまで走ってきたのだから、当然ここには一竜も竜弥もいない。だが、先ほどのことを思い出すと……

「ーーーーー!!!」

泣き止んでちょっぴり目元が赤くなっていただけだった顔が、とたんに真っ赤になる。誰もいない路地裏で、勝手に自分が思い出して、勝手に恥ずかしがる。もう何度も同じことをこの路地裏でやっている。ラジュカの頭の中には一竜しかいなかった(悪い意味で)

「ヘイ少年」

「……だえだ」

ラジュカだけだった路地裏に、新たな客が入ってきた。ラジュカは今、膝を抱えてうずくまっているため、相手の顔は見えない。目の前にいると思われる相手は、中性的な声からは性別も判断しにくかった。ラジュカは警戒心を剥き出しにして口を開いたものの、さっきまで泣いていたせいでうまく露悦(ろえつ)が回らなかった。一竜の件に加え、新たに恥ずかしいことが増えてしまった。

「キミ、今困ってないかい?」

「なん、あよ」

「なんて?」

「なんだよぉぉ!!」

「わお。おっきな声だね、少年」

ラジュカは相手に、感情のまま怒鳴り返した。意外にも、相手は驚いていない。1人にして欲しいラジュカからしたらただの邪魔者だ。

「……1人にしてくれ」

「少年、少しキミのことを占わせてくれ」

「……聞いてんのか?」

ラジュカはいらだちながら、相手の方を向いた。

そのとたん……

「少年ッ! やはり、やはりそのようだねッ⁉︎」

相手はラジュカの顔を両腕で(はさ)み込み、キラキラと輝く空色の目で見つめてきた。赤毛の混じった金髪を肩まで伸ばしている。見た感じ女。そして、何を言っているかはわからない。

「なん、なんだよ!」

ラジュカの怒りは爆発し、目の前の女を無理やり引き離すと、あらい息を吐いて元の場所に座り直した。

「……すまない。少し嬉しくなってしまってね。私は大空から来た占い師、ソラ=ドランフューチャーという」

「……俺も大空から来た。だけど、あんたみたいな人知らない」

「うーん。そうだろうねぇ。何せ、私は本来なら目立つことができたはずなのだが……時期を逃してしまってね。おかげでこんなみすぼらしい格好をしている」

「……ふん」

うさんくさい女だ。ソラと言ったか。占いなんて、そんなの信じるやつがどこにいる。

「キミを占ってあげよう」

「さっきもそんなこと言ってたな。……勝手にやってろ。金は持ってねぇぞ?」

「いいんだ。そんなの」

勝手に占おうとしてきたソラに、一応金は持っていないことを伝えておく。それでも彼女は構わず近づいてきた。

「手」

「んあ?」

「手、出してー」

なるほど、こいつは手を触れることで、触れた相手を占うんだ。そんな占い聞いたことないな。特に信じちゃいないが、とりあえず右手をソラに差し出した。

「ーーーー」

ソラは、俺の手に触れてしばらくすると、とても苦い顔をした。こんなの、俺の未来がろくなもんじゃないと言っているようなものじゃないか。ひどいやつだ。顔に出すなよ。

「ごめん。見なかったことにしていい?」

「……何そのめっちゃ気になる言い方」

「あの、その……じゃぁ、一つアドバイスしといてあげるよ。キミはこの先、金髪の女の子と共に災難に()い、知らない土地で目を覚ます。その時、まず最初に会った人と仲良くしなさい。その人が、全てを解決してくれる」

「……そうか」

まぁまずそんなよくわからん状況になることはない。つまり信じなくていい。ラジュカは呆れたような目つきでソラを見た。

「キミ、信じてないだろ」

「当たり前だ。こんなバカみたいな話、信じる方がおかしい」

「よし。もう一回だ。ほら、今度は左手」

「……なんだよ」

ソラはムッとしながらラジュカの右手を話、今度は左手を握った。

「っぷ、くく……」

「何笑ってやがる」

ソラはラジュカの左手に触れながら、突然吹き出した。

「キミ……一竜って子? その子にあんなカッコ悪いことしちゃって、きゃはははははっ! すごいッ! すごいバカみたいだね、キミッ!」

「お、まえ」

「ごめん! 私のこと信じさせたくて、とりあえず、キミの昨日の光景を見たんだけど、まさかあんな……」

「くそおおおおおお! うるせええええええ! ああ! バレちまったちくしょうっ!」

ラジュカはこの上なく恥ずかしい思いをした。そんなことにも構わず、ソラは隣で路地裏を転げ回りながら、バカ笑いしていた。

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