1話 俺は何度でも幼馴染に告白する
「菜穂、俺と付き合ってほしい」
夕日の射す放課後の教室。俺の告白に、幼馴染の女の子は思い切り顔をしかめた。
「絶対、やだ。わたしが公一と付き合うなんて、ありえないじゃない」
綺麗な凛とした声で、容赦なくばっさりと断られる。
まあ、予想はしていたことなのだけれど。
教室にいるのは、俺の他には一人だけ。俺が告白した相手。つまり、幼馴染の神宮寺菜穂だ。幼稚園の頃から高校一年生の今日まで、家族ぐるみの付き合いがある。
そして、俺は菜穂のことが大好きだった。
菜穂の良い点はもちろん容姿だけじゃないけれど、容姿だけ取り上げてもとても可愛い。菜穂は活発で明るいタイプで、少し茶色に染めたショートカットの髪が雰囲気によく似合っている。
制服のセーラー服もバッチリ似合っていて、スカート丈は短めだけれど、おしゃれの範囲内。中学の頃は清楚な雰囲気の女の子だったけれど、今は少しギャルっぽい雰囲気で、正直、どちらも好みだ。
というのを、全部、菜穂に口で言ってみた。
菜穂は顔を真っ赤にして、その白い指先をびしっと俺に突きつける。
「ば、馬鹿じゃないの! お世辞を言っても意味ないんだから!」
「お世辞じゃなくて、本気で可愛いと思っているから付き合ってほしいんだけど」
「……っ! と、ともかく、わたしが公一みたいな陰キャで気持ち悪い映画オタクと付き合うなんてありえないんだから! 公一なんて欠点だらけで、いいところなんて一つもないし!」
「そうかな。自慢じゃないけど、俺は成績も学年上位。球技も陸上競技もスポーツ万能で、中学では野球部のエースで全国大会出場。手先も起用で絵も得意だし、雑学にも詳しい。あと見てくれも悪くないという保証付き。けっこういいところがあると思うんだけど。自慢じゃないけどね」
「絶対、自慢してるでしょ!? そういうところが嫌いなの! それに、幼馴染のわたしにわざわざ言わなくても……公一にいいところがたくさんあるのは知っているから」
菜穂は最後の方をとても小さな声で言った。直前までの自分の発言と矛盾していると気づいているのだろう。
俺はなるべくかっこいい(と自分が思っている)表情で笑みを浮かべた。
「そう。菜穂はいつでも俺のことを誰よりも理解してくれるよね。だから、結婚しよう、菜穂」
「……するか! 公一のアホ! バカ! 変態! 女たらし!」
菜穂は言葉の限りを尽くして俺を罵倒(?)すると、怒って教室から出て行ってしまった。
俺は肩をすくめる。
「五回目の告白も失敗か」
俺は机の上のカレンダーを眺める。最初に菜穂に告白したのは、中学三年生の2月。それから半年も経たない7月の今日まで、菜穂には五回告白して五回とも失敗した。
まあ、今回も断られるとはわかっていたのだけれど、それでもショックはショックだ。
もっとも、それでも俺は諦めるつもりはない。
もちろん、菜穂が本当に俺を大嫌いなら別だけれど、なんやかんやで菜穂は俺と一緒にいてくれる。
家ではわざわざ俺と交代で夕飯を作って、一緒に食べてくれる。学校でだって、放課後には二人きりの映画研究部で映画を二時間きっちり鑑賞していた。
それに、「公一は優しいよね」なんて言って優しく笑って、ときどき俺に甘い表情を見せてくれる。
最初、告白したときは断られるとは思わなかった。両思いだと思っていたし、周りの友人達も菜穂は俺を好きだと思っていたらしい。
でも、結果は五回の告白で撃沈というのが現実だった。それでも、菜穂のそばにいられれば、俺は幸せなんだけれど。
教室の扉が開く。菜穂が戻ってきてくれた!と期待したら、入り口にいたのは別の女の子だった。
銀色のロングヘアの清楚完璧な美少女だ。すらりと背が高い。
「冬見くんもこりないよねー」
くすくす笑いながら彼女は言う。冬見、というのは俺のことだ。冬見公一が俺の名前。
そして、目の前の美人は塩原詩音さん。俺のクラスメイトだ。
ハイスペックな主人公が、平凡な幼馴染を溺愛する一途なラブコメです! 本日あと数話更新します!
面白い、今後に期待、更新がんばって!と思っていただけましたら
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