ー敵ー
「イグニエ様の姉様ですか。魔王の娘、ですよね」
「そうじゃよ。それぞれに役割のある10姉妹よ。今から行ってもらう迷宮、アザレアスの迷宮には私の姉、アタマルがいるのじゃ。では門をつなぐぞ」
イグニエがアザレアスの迷宮?とやらの迷宮にまで続く門を俺たちの前に開く。
「本来ならこのようなことはできないんじゃが妾達姉妹は繋がっているゆえにな。意識さえ戻ればその場所へと他者を送ることは可能じゃ。じゃがわしはカースドの奈落から離れるわけにはゆかないゆえ迎えを頼んだのじゃ」
イグニエが俺とマルクスに頼むと俺たち2人は門をくぐる。
門をくぐった先はイグニエの言ったアザレアスの迷宮の一階だった。
「すまんな。その迷宮のどこにいるかはわからぬゆえ一階に門を繋げた。2人でアタマルを探してくれ。頼んだぞよ」
アザレアスの迷宮の入り口でそれだけイグニエが伝えるとイグニエの声は聞こえなくなる。
「それでは主人。どうしますか?」
「そうだな。とりあえずは下の階層に行こう。誰がアタマルかはわからんがマルクスはイグニエと波長の似てるやつを探ればいいさ。主人なんだから分かるだろ?」
「そうですね。イグニエ様に似ているのであればわかります」
俺たちはとりあえずアザレアスの迷宮の下の階層にまでくだっていく。降って30分くらいで俺たちは10階層にまで辿り着く
「主人。ここまでの魔物弱すぎますぜ」
「お前同族を普通に殺してるけどいいのか?」
あれだけイグニエが魔族についてのことを言っていたのにマルクスは襲いかかるやつを全部倒していくから思わず聞く。
「ふむ。愚問ですな。魔王である主人に襲いかかるものなど魔族にあらず。もはや魔獣です。魔族と魔獣には明らかに違いがあります。魔獣には意志はなくただ人間や魔族を襲うだけ。魔族は多少知能のあるもの。ゴブリンとかも含まれますな。ゴブリンの場合は知恵を与えてやらねばいけませんが。これに関してはイグニエ様はエキスパートですよ。この前迷宮のゴブリンに知恵を与えていましたから」
それは知っている。前に死体の処理を任せる時ゴブリンが喋っていたからな。
10階の階層から降りるまえに階段の前に1人鎧を着た人がいた。
「ふむ。どうやらあのアホ勇者もたまには使えるようだ。ここにいれば敵はせめてくるとな」
「貴様は誰だ?」
マルクスが前に出て言うと鎧を着た騎士は腰に装備した剣を抜いて
「我が名は騎士アルバー。王の名により貴様を断罪する」