ー利害の一致ー
「この奈落は妾の自由意志で変えられる。どうじゃ?妾と組む気になったじゃろ?」
「いやその前に無能化のスキルについての説明を求む」
俺はイグニエに聞く。無能化のスキルについて少しでも知りたかった。奴らに復讐する為に。河田だけじゃない。中野さん以外は絶対に殺す。その為に己のスキルを知らねばならない。
「ふむ。よかろう。お前はよき目をしておる。妾の好きな目じゃ。誰かに復讐したいような目をな」
よくわかるじゃないか。
「そうだ。俺は復讐がしたい。だから無能化のスキルについて教えてくれ」
「ふふん。であれば妾と手を組もう。そうすれば無能化のスキルについて詳しく教えてやろう」
交換条件か。だが魔族といえど本当に知っているかもわからんしな。
「だめだ。俺はお前を助けた。だから先にお前が俺の無能化のスキルについて話すべきだ。お前と手を組むかを考えるのはそのあとだ」
「痛いところをついてくるな。だが仕方あるまいか。妾は確かに助けてもらった身だからのう。では話そう」
イグニエは一息整えると
「無能化のスキルはあらゆる魔法、そしてあらゆるスキルを無能化し、さらには敵の行動さえも無能化するスキル。だが強力ゆえに無能化のスキル持ちは武器を持てず、攻撃もすることはできるが当たってもたいしてきかんのじゃ。無能化のスキルはしかも発動できなくても持っているだけで武器も持てず攻撃しても意味はないデメリットが発動するんじゃ。だから無能化をつかえずに死んでいくものも多いんじゃ」
確かにこのスキルはクセがありすぎる。俺も下手をすれば死んでいた。片腕もなくすわ防具の鎧もほとんどつかえなくなるわで。死ぬ気でやったらやっとこの無能化がつかえるようになった?ってとこだろうな多分。
「無能化は自分の心の中に誰かに頼れるとかそういうものが自分では思っていなくても心の中にカケラほどでもあれば応えてはくれない」
カケラほどでも誰かに救いを求めていたのか俺は?片腕を食いちぎられた時か?あの時もそう思っていたのか?本能的にだろうか?
「無能化が使える人間なんて初めてみたわ。妾にその力、かしてくれぬか?妾もお前の復讐に手をかそう」
「俺の復讐に手をかす?どうやって?」
「妾はこの迷宮を変幻自在に変えることもできる。じゃから妾の力で一層目に最高クラスの魔物を配置することもできる」
ほう。それは確かにいい提案だな。
「いいだろう。手を組んでやるイグニエ」
俺はイグニエにてを差し出すとイグニエも手を差し出す。イグニエの手は魔族のわりには人間の手と変わらず皮膚の色も普通の人間のように白い肌をしていた。