ー奈落での出会いー
「妾のこのありようを見てわからぬか。ムガよ」
「い、いや。確かに囚われてますね。ドMなんですか?」
俺はイグニエに言うと「ちがうわ!」お顔を真っ赤にして答える。それにしても口調が女っぽいから魔族の女性なのか?照れたときも妙に可愛いし。あ、娘って最初に言ってたな。
「じゃがお前と手を組む前に条件じゃな。妾を解放せよ。さすれば妾の全てをお前に捧げよう」
全てを捧げる?うさんくさいな。そんなこと簡単に言えるわけないだろ。
「妾を解放してくれたなお前の奴隷になってもよい。人間は魔族、魔物を家畜にする奴が好むらしいからな。人間というのはすえ恐ろしい存在よな。妾からすれば魔族の方がマシに見える」
は?魔族を家畜に?そんなばかな。聞いた話と全然違う。人間は魔族に追い詰められているんじゃないのか?
「俺がドーロン王国で聞いた話とは違うぞ。人間は魔族に追い詰められていると聞いたが」
「は?お前バカではないのか。いや、王国の外に出たことがないのであろうな。王国の外は塀か霧かはわからんが外が見えないであろう?」
確かに外は王国側の内側から見えない。
「人間とは姑息な生き物よな。お前は異世界人か?」
「な、なぜそれを!」
「ふん。知れたこと。この世界の情勢を知らない田舎者がどこにいようか」
田舎者とか言われてもな。知らんもんは知らんし仕方ないだろ。
「この世界は人間が統治し、妾達魔族は迷宮に押し込まれている。父である魔王はドーロン王国のどこかに監禁されている」
「なぜドーロン王国だと?」
「簡単なことよ。妾がここにこの鎖で封印される前に父が王国の兵士に連れていかれるのを見たからよ」
なるほど。王国もクソというわけだ。あの王が俺の固有スキルを知った瞬間俺をゴミのような目で見た理由にも納得がいった。
「それで?お前は妾のこの鎖を解けるのか?人間の持っているスキル封じ、魔力封じでできた鎖だから妾にはどうしようもない。妾はスキルと魔法以外はてんでだめなか弱い魔王の娘だからな」
自分でか弱いとか言うかよ。ま、とりあえずは
「鎖よ。束縛をやめろ」
俺は鎖に対して言うとイグニエを縛っていた鎖が解除され、イグニエは部屋の地面に倒れ込む。イグニエは裸なのかと思ったら普通に布切れを体に巻いて体を隠していた。
「驚いたわ。言葉だけで妾の鎖を解除するとは。いや、この部屋にこれた時点で相当驚いてはいるが」