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第2話 伝説の医者

私はマリアに言われ、町を出た

ここから北へ行くと小さな祠があり、そこには石化病を初めて治したとされる伝説の医者「ドクター・アイリス」がいるらしい

私もよく北には行くけど祠なんて見たことが無い

私はマリアから貰った地図の場所へと向かってみた

しかし、やはりそこに祠は無かった

その時、背後からたくさんのモンスターが襲いかかってきた

こっちの世界で死ぬと、その者の魂は砕け、永遠に失われてしまう

そうなれば二度と生者の世界に転生できなくなってしまう


「くっ…!」


私はバックステップで攻撃をかわし、杖を構えた

ただ、2つ問題があった

それは私が賢者であり、攻撃手段が魔法であるということだ

呪文詠唱中に敵に襲われたらひとたまりもない

そしてもう一つは、相手がプラチナゴブリンであることだ

プラチナゴブリンはその経験値の高さから生者の世界では多くの戦士たちが討伐に勤しんでいる

そのせいでこの一帯にはたくさんのプラチナゴブリンがいる

そして一番厄介なのはHPが大きい上に魔法が全く効かないというところだ

それでいて他のゴブリンと同じように異種族であっても女に容赦なく襲いかかる

つまり、賢者かつ女である私にとっては相性は最悪と言わざるを得ない

私はプラチナゴブリンの攻撃をかわしながら町へと走って戻った


「アンジュ、大丈夫!?すごいボロボロになって…」

「え?」


私はすぐ近くの鏡を見てみると、服はかなりボロボロになっていて、重ね着してなかったら見えちゃいけないものが露わになっていてもおかしくない状態だった

どうやらプラチナゴブリンたちの攻撃をかわしていたつもりがかなり当たっていたようだった


「何とか大丈夫みたい。それより、祠なんて無かったよ」

「そんな…」


マリアは少し考え始めた

マリアの独り言から推測するに、おそらく生者の世界にはその祠があるのだろう


「もしかして…まだ生きてるんじゃ?」

「え?」


私はマリアにそう考えた理由を話した

死者の世界には、誰かが死ぬと、その者が生きていた頃に使っていた物や場所が現れる

マリアの話を聞く限り、その祠はドクター・アイリスに非常にゆかりの場所なのだろう

それにもかかわらずこちらの世界にないのであれば生きている可能性が高いとしか言いようがない


「アンジュ、ドクター・アイリスが生まれたのはもう140年も前よ。そんなに長生きしてるなんて…」

「あってもおかしくないと思うよ。私が生きてた時でさえも平均寿命は100歳くらいだったんだから」

「………」


マリアは何も言わなかった

どうやら可能性があるのは自分でも理解はできているようだった

ただ、問題はドクター・アイリスが今どこにいるかだ

マリアの話では祠には誰もいないらしい

そこで私はある人のことを思い出した


「マリア、ちょっと来て」

「え?ちょっ、アンジュ!?」


私はマリアの手を引いて町の奥に建つ占いの館に行った


「この気配…あんた、アンジュだね?」

「はい、リィン様」


この方は占い師のリィン様で、1500年も前に亡くなった方だ

彼女は死んだ後もこの世界で占い師を続けており、その的中率の高さは非常に有名である

死後はだいたい数百年くらいで別の命に生まれ変わる

しかし彼女は1500年近く生まれ変わることなくこの世界にいるらしい


「それで…」

「何も言わんでよい。あんたの考えてることは手に取るように分かっているからね。それに占ってほしいのも、あんたの友人の方だろ?」

「す、凄い…」


マリアはリィン様が、私が何も言わなくても私が思っていることを言い当てているのに感激していた


「そして、そちらのお嬢さんは、死んだと思った者がもしかしたら生きてるかもしれないからどこにいるかを占ってほしい。違うかね?」

「凄い…当たってる…」

「それでリィン様…」

「分かっとる。それで、誰を探してほしいのじゃ?」

「ドクター・アイリスを探してほしいんですけど」

「ふむ、ドクター・アイリスか。あい分かった」


そう言うとリィン様は水晶に手をかざした

すると突如水晶が強い光を放った


「ふむ…確かにドクター・アイリスは生きておるようじゃな。しかしここはどこじゃ?見たこともない場所のようじゃが…」

「見たことない場所…ですか?」


リィン様はその場所の特徴を教えてくれた

聞く限りではどこかの王国の城下町といった感じではある

そして、ドクター・アイリスはそこの病院の一室にいるそうだ

私はリィン様に言われた町の風景を描き起こしてみた

しかし、できあがった絵を見ても私もマリアもピンとこなかった


「儂に分かるのはここまでじゃ。すまんな」

「いえ、ここまで分かればあとは聞き込みをしてその場所を突き止めるだけなので。ありがとうございました」


マリアはそう言うと館をあとにした

私が館を出ようとすると、リィン様が私を呼び止めた


「アンジュよ、お前さんほどの魔力があれば、おそらく薬に頼らずとも石化病を治すことがはずじゃぞ。なのになぜ薬にこだわる?」

「私は…それではダメだと思うんです。確かに私は死んでいますし、私の魔力があれば治せると思います。でもそんな奇跡を起こしてしまったら、人々は今後私を信仰し、奇跡に頼り、そして医学は廃れていくと思います」

「ふむ…」

「私だっていずれは転生するかもしれません。今ここで奇跡を起こして医学が廃れ、そんな中で私が転生してしまったら、病気が蔓延したとんでもない世界になってしまいます。だから私は生者に薬を作らせることにこだわっているんです」

「そうか。まあアンジュがそうしたいならそうすれば良かろう」


私はリィン様に頭を下げ、館をあとにした

そして、マリアと一緒に町の人たちに私が描いた絵を見せて心当たりが無いかを聞いて回った

しかし、誰に聞いても首を横に振るばかりだった

おそらくこの町にはこの風景を見たことのある人はいないのだろう

私とマリアが私の家で困り果てていると、そこにミゼルがやってきた


「二人してなんで頭抱えてるの?」


そういえばまだミゼルにはこの絵を見せていなかった

私はミゼルに絵を見せてみた


「懐かしい…。これ、私が小さい頃に入院してた病院よ」

「え!?」


私とマリアは思わず立ち上がってしまった


「ミゼル、これどこの病院!?」

「え?な、何?いきなり」


マリアはミゼルに事情を話した


「えっとね、確か日本のえっと…桜木学園都市って言われてるところの西側にある大学病院よ」


聞いたことない場所だ

日本の学園都市で聞いたことがあるのはこもれび学園都市くらいだ

ミゼルの話によると、日本には6つの大きな学園都市があり、桜木学園都市は4番目の大きさらしい

そして私が知っているこもれび学園都市は一番大きい学園都市らしい


「じゃあ早速その日本の学園都市に…」

「アンジュ、待って」


私が家を出ようとしたところでマリアが私を呼び止めた


「あなたには無理よ。仮に行ったとしてもすでに死んでるあなたが行けるのは死者の世界の方のよ。そんなところに行ってもドクター・アイリスには会えないわよ」

「あ…」


言われてみれば確かにそうだ

ドクター・アイリスはまだ生きている

だから死者である私が行っても会うことはできない

仮に行くとしたら神様の許可が必要になるが、死者が生者の世界への干渉が厳しく制約されている以上、許可は下りない

最近許可が下りた人だって最愛の人が亡くなったから迎えに行きたいという人ばかりだ


「私が行ってくる。二人はここにいて」


そう言うとマリアは呪文を唱えた

すると次の瞬間、マリアが姿を消した

おそらく生者の世界に行ったのだろう

ただ、マリアが戻るにはおそらくかなりかかる

なにせ、マリアができるのは死者の世界と生者の世界の行き来のみで遠方へのテレポートはできない

私はミゼルと一緒にマリアが戻ってくるのをのんびりと待つことにした

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