第1話 再会
鐘の音が鳴り響く
私は毎朝、この鐘の音と共に目を覚ます
いつものように身支度をし、朝食を済ませて家を出る
しかし、今日はいつもと様子が違った
町の広場に行くと、人々が集まっていた
「ミゼル、どうかしたの?」
「あ、アンジュ、実は…」
私は親友のミゼルに事情を聞くと、どうやらこの近くに人が倒れていたようだ
やがて町の男達が倒れていたという人を連れて帰ってきた
私はその顔を見て驚いた
なぜなら町の男達が連れて帰ってきたのは、私の恋人のクレマンだったのだ
その時、私の横に一人の女の子が現れた
「アンジュ」
「あ、マリア…」
そこにいたのは私の親友のマリアだった
彼女は生きながらにしてこの世とあの世を行き来することができる不思議なチカラを持っている
「やっぱりクレマンはこっちに来ていたのね」
「ということはクレマンも…」
「ううん、彼はまだ生きているわ。でも、今は石化病で生死の境を彷徨っている状態よ」
「そんな…」
石化病とは、体の末梢部から徐々に石へと変わっていく病気で、適切な治療を受けなければ確実に死ぬと言われている
クレマンと再会できたのは嬉しいが、こんな再会は望んではいなかった
「アンジュ、クレマンの体はもう1割くらい石化していたわ。ドクター・アントンが診てくれているとはいえ、早くしないと本当に死んでしまうわ」
「でも私にはどうすることも…」
「ううん。すでに死んでいるアンジュだからこそできることがあるの」
「私だからこそできること?」
そう。実は私はすでに死んでいる
数年前、町の北西にあった教会の裏の山が崩れ、教会ごと瓦礫に埋もれてこの世を去った
当時のことは忘れたくても忘れられない
今この町にいるのは、みんなその事故の被害者たちだ
「アンジュ、彼を助けるためにはあなたのチカラが必要なの。お願い、チカラを貸して」
クレマンと再会できたのは嬉しい
しかし、彼にはまだ生きていてほしい
天寿を全うしてほしい
私と再会するのはそれからでいい
私はマリアに協力することにした