神の名
「仕事をサボっている主神様を探していれば、いきなり神界が震え始めてその元凶まで来てみれば上位の2柱がいるとはどういう事ですか!」
綺麗な金髪を靡かせて主神の胸ぐらを掴む女神。周りの石が浮き上がっているあたりかなり怒っているようだ。
「戦神もそこを動くともっと酷いことになりますよ。」
後ろの戦神に笑顔を向ける女神だがその目は笑ってない。戦神なんか「ヒェッ」とか悲鳴あげてビクついたが戦神よりもしかして強いのか?
「えーと貴方は?」
「狛村 珀兎、一応人族です。」
「一応?・・・というか何故人族が神界にいるんですか?ここは神しか立ち入れない場所のはずですが。」
そう言われたので事の経緯を話す。話していくうちに主神の顔色が青白くなり女神の掴んでいる拳が固くなっていく。戦神の方も顔色が悪くなっている。
「だから異世界の神から人族の情報が来たのですね。」
「もしかして俺のことか?」
「えぇ、狛村という人族がこちらのイレギュラーで転移してしまったから助けてやってくれと。ステータスがおかしなことになっているとも聞きました。」
「まぁゲーム・・・遊びのぶっ飛んだ数値になっていたからな。戦神には慣れる手伝いをしてもらっていたんだが。」
「戦う必要はないでしょうに・・・ましてや戦神も本気なんて出さないでください。神界を荒らすなら怒りますよ。」
「すまぬ・・・」
「それに主神様?サボっていた空間が繋がったの貴方のせいですよね?お話があるので行きますよ。戦神は狛村を泊まる部屋まで送ってあげてください。明日また主神様に話をさせますので。」
「了解した!」
そうして主神様を引きずっていく女神に敬礼をする戦神。完全な上下関係がそこにはあった。
「それでは行くとするか。」
「というかあの女神は誰なんだ?」
「万能神。あらゆる物事をこなす、まぁ主神様に近い神だ。一応は我と神格は一緒だ。」
「その割には上下関係があったようだが?」
「ははっ、万能神が怒っている時に変なことをしてみろ、とんでもない罰を受けるぞ。」
「例えば?」
「正座100年。」
人間だったら死刑だ。そんなくだらない話をしながら戦神と歩いていると一軒家があった。
「ここが今日寝泊まりするところだ。」
「もしかして戦神の家か?」
「我らは寝ない。ここは神に謁見にきた者たち、そうだな龍や精霊が来ると言えばいいか、それらの宿屋だ。」
「異世界には龍や精霊がいるのか。」
「まぁな。ちなみにものすごく強いがハクトと比べたらハクトの方が強かろう。」
それなら安心だ。こっちの世界では神の休憩所を作るとは言えゆったりスローライフを送りたいからな。
「それではまた明日。多分万能神が呼びに来るゆえにそれまでに起きてろよ。」
「分かった。」
そう言って戦神は去っていた。その後宿屋を見て回ったが風呂場も台所もないのは神は汚れたりしない上に供物しか食べれないからだろう。
まぁ仕事で1週間程食べない時もあったから特に問題もないのでそのまま寝た。
そして今はと言うと
「この度は誠にすまんかったのう。」
目の前に土下座している主神がいた。起きた後日課の鍛錬をしていたら万能神が呼びに来て、ついて行ったらボコボコになった主神がおり会った瞬間これである。
「いや、わざとじゃないんだし・・・」
「そうは言っても主神様のせいなので謝罪は当然です。」
神の謝罪は土下座が基本なのだろうか。
「それにハクトさんも地球に戻れないのお辛いでしょ?」
「・・・」
正直言ってありがとうございます!と言いたい。両親は大往生しており、仕事も面倒になっていたので地球に戻れないと知った時は内心すごい喜んだ。
だが言葉が出ない俺を見て万能神は可哀想だと思ったのか主神をどつく。
「本当に主神様はいつも余計なことばかり!とりあえずハクトさんには地球の神からも便宜をはかるように言われているのですがどうします?」
「特には。正直やりたいことも無いし主神から頼まれたの神の休憩所でも作るさ。」
「ありがとうございます。そうなるとskillや道具など渡すべきですね。」
「それだと助かります。」
「なら私から鍛冶の神に手配しときましょう。それとこちらを。」
そう言って万能神が渡して来たのは虹色に輝く玉だった。ビー玉ぐらいの大きさで宝石みたいに綺麗だが玉からは何か分からないが力を感じる。
「これは?」
「私の権能、万能の力を込めています。これを素材にすれば役に立つものが出来るでしょう。それと戦神!」
「おう!」
万能神が呼ぶと戦神が現れ俺に赫い玉と緑の玉、黄の玉を、渡してくる。
「俺のも渡そう。あとは治癒の神と農業の神のもな。あいつらも主神が済まなかったって言われた。」
そう言って戦神が主神を見ると主神が立ち上がった。顔はボロボロだが。
「ならばわしからも渡すとしようかのう。」
主神が手を差し出すと光だしおさまった時には手のひらに無色の玉があった。
「これと、わしは『テリオス』このクリステリアの主神じゃ。」
そうして俺に無色の玉を渡すが正直持つのがやっとだ。
「それじゃ我も教えよう。我は『イスラ』戦の神だ。」
「私は『アルテ』万能の神よ。」
「わしらはお主の力になるゆえ相談せよ。」
神の真名を教えられたというなら俺もそれに答えるべきだろう。
「公安特務0課狛村 珀兎。これからよろしく頼む。」
神々の手はは意外にも普通の人間と変わらなかった。
「では鍛冶神の所に行くかのう。」
「それはいいがこれってどういう素材なんだ?」
「それはのう、神の力の一端を使えるようになる。」
「神の力というとテリオスのなら創造ってことか?」
「そういうことじゃ。と言ってもわしの力は使い勝手が悪いから基本は万能や戦の力じゃろう。」
そうしてテスラからどのような力なのかをある程度教わる。聞いた限りでは確かに創造よりも万能や農業の方が使い勝手が良さそうだ。
「ここじゃ、ここ。鍛冶神のおるか?」
そう言って森の中にポツンとある家の扉をノックする。神界はいきなり目的地につくから心臓に悪い。そう思っていると扉が開きそこには火の粉を周りに散らしているボサボサの神の女神がいた。
「何か御用ですかい、テリオス様?」
「こやつの道具と武器を作ってもらいたいのだ。」
「それはいいですがこいつは?」
「わしのせいでこっちに迷い込んだ異世界の民だ。こやつ.、ハクトと言うのだがハクトにはわしから神の休憩所を作るよう頼んだゆえにいいものをと思ってのう。」
「そうでしたか。ハクトとやら、あたいは鍛冶の神モーラだ。一応火の神でもあるが基本的には鍛冶の神として扱われている。」
「俺は狛村 珀兎、よろしく頼む。」
そう言って握手をする。その後モーラとテリオスと一緒に制作を開始した。
制作をしている時かなり熱が入り時にイスラも混ざり3柱と一緒に作ったりアルテに怒られながら制作をした。
そして早いもので神界に来てから1ヶ月。ステータスやskill、制作した武器や道具にも慣れたので人間界に降りることになった。
「ハクトが来てからあっという間だったのう。」
「そうですね、久しぶりに楽しかったです。」
「完成したら我も行くぞ。」
「早めに終わらせろよ?」
テリオス、アルテ、イスラ、モーラが見送りに来た。
「こっちも楽しかったよ。それとミラとアスタにもお礼を言っておいてくれ。」
ミラは治癒の神、アスタは農業の神だ。2柱は忙しく滞在時もほとんど会えなかったがどちらも世話になったのでお礼をいいたかった。
「わしから伝えておこう。ではそろそろ時間じゃ、頼むぞハクトよ。」
「あぁ任せろ。」
そうして後ろにある扉を開くと眩い光に包まれる。こうして俺の異世界生活が始まった。
「お前は何者だ!」
目の前には天をつく程の大樹と金色の毛で9本の尻尾がある巨大な狐がいた。
どうやら俺の異世界生活はハードらしい。
乾いた笑いが口からもれたのであった。