表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/62

49

 次に優先する買い物としては、足を守るブーツのような防具だ。

 草臥(くたび)れた皮革のサンダルでは心許なくて、このままでは足を踏み入れられない場所が出てくるはずだ。


 セットになっている物があれば、全身一式で揃えてしまうのも手ではある。

 お買い得で性能も担保された、そんな良質な品は転がっていないものか。


「お勧めの防具はありますか。特に足がこんな状態なんですが」


 自分の目利きには自信がないので、手っ取り早く訊いてしまう。相手の掌の上になりかねない行為ではあるが。


「体型に合う品物を用意するには、時間が掛かる。すぐに大きさを調整できるのは籠手と、脛当て、大腿甲くらいだな」


 あっさり、目論見は崩れてしまう。

 盾を新調できただけでも、僥倖だったと思うしかないな。

 今は注文だけしておくしかないか。


「父さん。大きさを調整できる頑丈な靴なら、あったじゃない」

「む?」


 ラーニアさんには心当たりがあるのか、二人で相談を始めてしまった。

 そう長くも無い時間、放置されてしまう。


「試作品だからな。安くしてやろう」


 相談が纏まったらしく、アダラトさんからそう提案される。


「それは有り難いですが」


 現物を見てみないことには、有難迷惑の可能性もある。

 いや、こだわりの強そうな彼からの提案で、そんな粗悪な物が出されるはずはないか。


「少々、お待ちを」


 そう言って、ラーニアさんは天幕に引っ込んだ。

 しばらくして、数足の皮靴を持って戻ってくる。

 なんの変哲もない皮靴に見える。


「大きさの違う靴の中から合う物を、ってことですか?」


 あまりに、普通の対応策。

 調整できるという話はなんだったのか。


「まあ、慌てないで」


 そんな言葉が投げかけられる。自信あり気な笑みも添えられていた。


「はあ」


 気の抜けた返事をするくらいしかできない。

 ラーニアさんは、露天の一番手前にある敷物の上に靴を四足並べた。そのうちの一つに手を添えて、こちらを見てくる。


「ほら、これ」


 靴に使われている布の紐を摘んで言う。


「ああ」


 腑に落ちた。

 一般的に流通しているかいないかと、ゲーム内で流通しているかいないかは別だからな。靴紐で調整するという技術は目新しいのか。


「これで足に合わせた後に、布紐を編み込んで固まる樹脂を浸み込ませれば、紐の部分も保護された、頑丈な革靴の完成ね」


 なるほど。

 ゲーム内の技術も融合させて、防具にまで昇華させるらしい。靴紐がなにかに引っ掛かるといった事故も、樹脂で固めた布の紐で表面を固めてしまえば起こらない。


「子供用はないですよね」


 折角なので、ニオにもこの靴を履かせておきたいが

 当然のように、首は横に振られた。突然言われても、やはり難しいか。


「ごめんなさい。注文してくれれば用意はできるわ」

「ですよね。では、頼んでおきます」


 俺がそう頼むと、ラーニアさんは微笑みながら小首を傾げる。


「値段を確認する前に、依頼なんてしていいの?」


 背筋が、ぞくっとするような悪寒が生じる。

 商売人相手に、商談中に気を抜き過ぎた。


 しくじったか――。


 冷や汗が滲んでくる。

 アダラトさんが、じろりと、ラーニアさんを睨む。


「おい」


「なに? 父さん」


 女商人は唇に人差し指を添えながら微笑んだ。

 嫣然としたとでも表現すればいいのか。ナブーさんがその姿に釘付けになっている。

 俺は誤魔化されたりはしないけどな。


「安くしてくれるという話でしたよね」


 念を押すように確認を取っておく。


「冗談よ」

「どちらの意味でですか」

「父さんがした約束を、反故にしたりはしないわよ」

「そうですよね」


 心臓に悪い人だな。


「子供用が八十万ゴード。この靴の中の、どれかを加工した防具は、百万ゴードね」


 安くなっているのか、妥当なのか、まるでわからない。

 結局、完全に掌の上にいる気分だ。

 俺の靴の選別と調整。

 さらに、ニオの足の採寸をしている間に、俺の籠手と太腿甲も選んでもらい調整した。

 ニオには、ひとまず革製のサンダルを調整して履かせた。二束三文の、防具とは呼べない間に合わせの代物である。

 ここまでで、値引きもしてくれたという(げん)を信じて、九百万ゴードで購入を決めた。


 束の間、空を見上げると――。

 いつの間にか、太陽は中天を過ぎていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ