第8話 異世界召喚 8
異世界召喚 3日目
部屋の隅の2つの籠の中に、博影と、沙耶用の服が収めてあった。
ちょっとゴワゴワするが、薄い灰色のシャツとズボンに着替える。
沙耶も、同じ色のブラウスと、ロングスカートに着替えた。
「な〜に、お父さん。女性の着替えをじろじろ見て、イヤラシイ」
ブラウスの胸元のボタンを留めながら、沙耶が睨んでくる。
いや、たしかに沙耶の小学生以来、着替え姿を見ていなかったし、お風呂も…胸の膨らみが目立ち始めた
小学五年生以来、一緒に入っていないし…
正直言って、今、沙耶の着替えに見入ってしまっていた。
特に家の中で、テイシャツ一枚でいる時などは、
胸がかなり、大きくなったな〜
姿勢も良いし、お尻も形が良いな〜
とは、思っていたが…
「女性の着替え…って、沙耶、まだ子供だろう」
笑いながら、沙耶の言葉に被せる…が、内心かなり照れてしまっていた。
「もう、沙耶も17歳です。女性です! お父さん、悪いけど、今はお父さんの方が子供だから!」
ムキになって言う所が、まだ、幼いのだが…
心の中で苦笑し、沙耶のスタイルに見入ってしまった事を誤魔化せて安堵した。
たしかに、スタイルはかなり良いな…と又心の中で認めた。
ティアナが迎えにくるまでに、いくつかの事を確認する、
沙耶が、ティアナの前で私の事を…ひろ…呼ばわりしたのは、見た目が沙耶より年下になっており、詮索されたり、無駄な疑惑を持たれたりしないように…
姉と弟
と、いう事にしているとの事。そうすれば、男女であるが同じ部屋で寝泊まりしてもおかしくない。
又、別々の部屋は、絶対嫌だったから…と
ティアナが、専属で対応してくれており、その他は、部屋の掃除や食事を持って来てくれるメイドが、
部屋の外廊下に少し離れて立っている。
他は、女性騎士? しか、まだ見たことがないとの事だった。
それと、残念そうに念押しされた…ここは、夢の中ではないよ…と…
強い子だ。僅か五歳で姉夫婦と死に別れ、今まで、一緒に暮らして来た。
特に泣き言を言われた事もない。特に手が掛かった事もない。
私が二日間目が覚めずに、どれ程不安だっただろう。
その間も、落ち着き、良いふうに進められるよう行動して来たのだろう。
ティアナとの、2人の立ち位置の近さなどから、かなり打ち解けて見える…仲良く見える…
という事は、そういう行動をしてきたという事だろう。
沙耶の手を取り、思わず抱きしめた。強く抱きしめる。
「お父さん? どうしたの?」
不意な抱擁に慌てる沙耶をそのまま抱きしめ、
「沙耶 、頑張ったな 。もう、大丈夫だ! 一緒に頑張っていこう」
沙耶も、強く私を抱きしめてきた。
「ん、お父さん、無理せず頑張っていこう」
ちょっとお互い照れ始めた抱擁を解き、外を眺めながら…
「沙耶、ティアナ達が喋っている言葉、日本語ではないね」
「違うと思う。言葉は理解できるし、普通に喋っていてもティアナが理解してくれるから通じているのは、わかるけど…
一度、ティアナに見せてもらった文字は、全くしらない文字で読めなかったよ」
「そうか。なんだかティアナの喋った言葉は、普通に使っている日本語のように、口元から出て
そのまま理解…する感じと違い…
アタマの中に入って、理解できるような…ほんの少し、ズレてるような感じがする…」
沙耶も違和感を感じているようだが、私の感じとは、又異なるようだ。
「沙耶、人前と自分達のあいだで使い分けてるとボロがでるから、いつも、ひろ…でいこう!」
「了解しました、ひろくん」
おどけて、満面の笑みで敬礼しながら沙耶が答えた。