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第8話 ファビの治療 2

異世界召喚 104日目


イシュ王都を出発し、7日目





ファビの治療を行った日、翌日とファビの心臓に大きな問題はなく、食事も徐々に入るようになり、体調が回復していった。



治療後2日目、ベッドに座ることを日に何度か繰り返した。

最初のうちは、若干めまいを訴えたりした。


治療後3日目、ベッド周りの伝え歩きなどを行っていった。

わずかベッド周り一周ずつを、休みながら日中繰り返した。


ファビも、動ける体が、息苦しさのない体が、とてもうれしいらしく、笑顔で博影の指示通り行った。部屋には、終始笑いが絶えなかった。


治療後4日目、ファビの気分転換をかねて昼食は中庭で頂く。

ゆっくりと、部屋から廊下に出て階段を降り中庭に出る。


「やったー」


ファビは椅子に座ると歓喜の声を上げた。


「お父さん、この調子なら来月の私の誕生日には、マクシス城に帰れてるかな?」


「あぁ、大丈夫だ。昨年は、お祝いするどころではなかったが、今年は、昨年の分も上乗せしてお祝いしよう!」


娘に笑顔で語りかけるマクシス将軍も、この4日間は久しぶりに気を許せる時間を過ごせているようだ。


「博影様たちも、来てくれる?」


対面の椅子に座ろうとしている博影に、どことなく心配そうな…不安そうな目でたずねる。

返答に困る博影にかわり…


「そうだな~たぶん大丈夫だと思うけど、博影は治癒師だから、治療の都合でいけないときもある。もし、来月いけないことがあっても、来年は必ず行く。なっ、博影!」


システィナは、そういうと博影の背中を叩いた。


「あぁ、ファビ。今年、もしくは来年は必ず行くよ」


博影も笑顔で同意した。


…来月は行けそうもないが、来年、もしくは来年までの間に1回くらいは行けるだろう…


ここは、モスコーフ帝国領内。博影は、決して気を抜いているわけではないが、安易に考えていた。


「そうね。私達3人、必ずお邪魔しに行くよ」


ルーナも、笑顔で答えた。


「うれしい! それと…あの…博影様は、心に決められた方はおられるのですか?」


唐突にファビが聞く。


…えっ?…


水を飲んでいた博影は、予想していない言葉に水を引っ掛ける。


「ごほっ、ごほっ」


「ん? ファビは博影が気になるのか?」


マクシス将軍は、ファビに笑顔で問いかけ、笑っていない目で博影を睨む。


「ファビは、まだ12歳…まだ、いろんな勉強してから、好きな人のことは考えればいいよ」


にっこりと微笑みながら、ルーナが被せる。

しかし、その上ずった口調に…


…相手は12歳の子供なのに、余裕がないな~ルーナは…


と、思いながらシスティナは笑った。


「いえ、私のお母様は15歳でお父様の元へ嫁いだ…と聞いています。私も来月で13歳です。

それに、私は良いお婿さんをとって、マクシス家を繁栄させていかなければいけません!」


さっきまであどけない、子供っぽい少女だったファビの目は、真剣な女の目に変わっている。


「お父様のお考えを聞かせてください!」


急に…まるで問い詰められるかのように答えを求められた親父殿は…


「んんっ…それは…そうだが…まだ、早いんじゃないか…」


言葉を濁す親父殿に…


「私は、お父様のお考えを聞いているのです。早いか、遅いかではなく、博影殿が、マクシス家にふさわしいと思われるのか、ふさわしくないと思われるのか、いかがですか?」


ファビが、容赦なく親父殿に意見を再度求める…そのやり取りに、傍らに立つフェビアンは苦笑していた。どうやら、フェビアンの様子からすると、いつものことなのであろう。


しかし、ファビの恩人である博影の前でふさわしくないと言えるわけもないし、

博影は、治癒師としての力、黒騎士としての力もあり問題もない…問題は、モスコーフ帝国の敵というところだが、ファビの前で、言えるわけもない。


「んんっ、父が悪かった。ファビ、たしかに、博影は治癒師として世に二人といない力を持つ。おそらく、教皇と同等かそれ以上である。

マクシス家の婿として、迎え入れるのに何の問題があろうか! 父は、大賛成である!」


…どこの世界でも、一人娘に父親は弱い…


「なっ? 親父殿、それは難しいでしょう!」


システィナが、思わず口を挟んだ。


「システィナ。なぜ難しいのです?」


ファビが、システィナに問う。まるでファビには、マクシス家を仕切る奥方の威厳が見えるようだ。


「いやっ…それは…その…博影には…心に決めた者がいるのです!」


ルーナを笑っていたシスティナだったが、ルーナよりも慌てふためき、12歳のファビにしどろもどろに答えた…が…その答えに思わず…



「えっ?」


と、博影がびっくりする。


「博影様、心に決めた方がおられるのですか?…」


ファビが、悲しそうに上目遣いで博影を見た。


「いや…その、俺もはじめて聞いた…」


「博影が、心に決めた者は私の事です」


周りの反応が見えないように目をつぶり、システィナが答える。


「えっ? シス、いつのまに…いえ、博影は私…クルコ家再興の為、私の夫に…」


首まで真っ赤になったルーナは、最後の言葉まで言えず詰まった。


「システィナ、ルーナ。あなた方は、博影様より年上ではありませんか、年齢的に、私の方が良いと思います!」


…昨日までの素直なファビはどこに行ったのだろう…


テーブルの下で、与えられた肉をほおばりながらチェルは思った。


…私達が年上って…中身は、40歳のオジサンなのに…


システィナも、ルーナも心の中で反論した。


「博影…たしかに、力があるものは多くの妻を持っても良い…が、第一夫人…正妻というのは大切である。正妻は、ファビ…ということで良いのであろうな!」


…我が娘、1対2では分が悪い…父として加勢をせねば…


マクシス将軍が、いらぬ加勢をし始め、場は、こう着状態に陥る。


ふぅ~と、ため息を少しつき、フェビアンが、ファビに優しく話す、


「ファビ…女性として、あなた自身の魅力で、博影殿の気持ちを掴まねばなりません。年下だから…とか、家が…では、いけません。

ファビが、博影殿のことをどう思っているのかが、大切だと思いますよ」


さすが、マクシス将軍の信頼を得る上級騎士、フェビアン・タートル 27歳…と、博影は思った。


「だって、だって、システィナも、ルーナもずるい。あんなにおっぱいが大きいもの、私じゃ、大人になっても勝てないよ。

胸の小さなフェビアンも、わかるでしょう? そう思うでしょう?」


基準が異なると思うが、ファビは真剣なようだ。


「なっ、私の胸は関係ないし…いや、おっぱいの大きさは関係ないでしょう!」


ファビを大人の女性として諌めたつもりが、予想外の言葉でフェビアンも思わず答えがバタつく。


「だって、だって、博影様は、よくシスティナやルーナのおっぱいを見てる。それに、一緒のベッドで寝ているというし!」


ファビは、思わず、テーブルに両手をつき立ち上がり、博影に詰め寄る。


…いや、ファビ…言葉も力強く出せるようになったし、動けるようになった。よくなったね…


と思いつつ、


…なぜ、俺に火の粉が……俺…そんなに、胸を見てる?…


と、博影は苦笑する。


「いや、ファビ。システィナとルーナとは、付き合いが長いし、野宿するときは一緒に寝るから、ついつい、宿でも一緒に寝てるだけだよ」


「ついつい~、一緒に寝てるだけぇ~!!」


システィナ、ルーナ、ファビ、フェビアンの4人が同時に博影を問い詰める。博影の答えで、女性全員を敵に回してしまったようだ。


…なぜ、こんな話しに…


と、苦笑いしながら、40歳のおじさんのスキルを出す。


「ファビ、正直に話すと、システィナと、ルーナとはキスをする仲です。だから、俺は2人のことが大好きですよ。

ただ、今は治癒師としての仕事があるし、娘のこともあるので、結婚などは考えていません。

ファビがどうだとかではなく、まだ自分に余裕がないのです」


博影に、大好き…とみなの前で言われ、システィナは、目をつぶり腕を組み黙る。

ルーナは、下を向き、まるでチェルの相手をしているように装う。


…だが、二人とも口元はほころんでいた…


「わかりました。私も博影様に…大好き…といってもらえるように、がんばります」


ファビは、椅子に座ったが、両手のこぶしをぎゅっと握り、博影を見つめている。

ただの幼い子供かと思っていたが、母親を早くに亡くし苦労することもあったのだろう。以外に、芯が強いことに驚いた。


その後は、ファビの今までの生活のことや、今後したいこと…などの話しでテーブルが盛り上がり楽しく昼食は終わった。


部屋に戻り、やはりファビは疲れたのであろう、すぐに、ベッドへ入りすやすやと寝付いた。



この様子なら、後10日もすれば、ゆっくりとした旅ならば…旅立つことも出来るようになるだろう…と、博影は思った。



午後2時…


部屋の中にこもってばかりも怪しいので、博影は、システィナ、ルーナとチェルをつれて城塞都市グリナの市民街を散策に出かけた。


実は、毎夜、親父殿のファビの快気祝いの晩酌に付き合わされる博影は、毎日二日酔いと、三日酔いが重なっているかのような状態が続いていたので、歩き、汗を流したかった。

剣の修練をしたいところだが、宿屋で、剣の修練など出来るわけもないし、都市への出入りチェックが厳しいこの状態で、わざわざ森へ行くわけにもいかない。



市民エリア中央にある、大きな広場に出た。この都市の規模にしては、かなり大きな広場だった。広場の隅に、甘い食べ物を扱っている店があった。

甘いものは高価ではあるが、なかなかこういった機会はないのでお店に入る。


シスと、ルーナは、甘いものは別…とばかりに、ガッツリと注文し食べていたが、博影は、水だけ飲んでいた。

チェルは、昼間からおおっぴらに人の目に触れさすわけには行かないので、屋根から屋根へ伝ってついてきている。

チェルにも、良い気分転換になるだろう。



外が、なにやら騒がしくなりつつある。

システィナとルーナを店の中に残し、博影は店の外に出てみると…


広場の中央には、3mはあろうかと思える高さで、小さな広さの舞台が組まれていた。


…なにか、始まるのか…


と思っていると、武装した騎士、およそ…

騎兵100名

騎士200名

歩兵(市民兵)500名

が、大通りより行進し、広場中央の舞台を3重に囲んだ。


「処刑が始まるようね」


いつの間にか、右傍らにシスティナが来ていた。


「でも、警備する兵がかなり多い。それも、騎士までいるなんて」


左傍らにルーナが来た。


「処刑? こんな町の中で? 人々の前で、処刑を行うのか?」


…たしかに、前世界でも中世では人前で行われてはいたが…


「あぁ、この世界では処刑は人々の娯楽の一つだ。騎士や、貴族の処刑は、人前では行われないが、盗賊や盗人、人殺しなどの罪人は、こうして市民の前で処刑される。

だが…警備の数が多いし、騎士がいる…なにか、おかしいな…」


自分達に関係のないこととはいえ、目の前にモスコーフ帝国軍の騎士がいると緊張する。


大通りから、また30人ほどの騎士団がやってきた。中央に、両手を後ろで結ばれた罪人がいるようだ。


罪人は、舞台の下で大きな長い丸太に両手、両足を結ばれ、顔に被せてあったフードがとられた。


博影たちからは、見えなかったが、その顔をみた市民から、泣き声に近い声が、悲鳴に近い声が上がった。


その罪人は、執行人たちに丸太を担がれ舞台へ上げられた。丸太が、舞台中央に立つ。


…一段と、悲鳴が大きくなった…


…マリナ様…マリナさまぁ~…


あちこちから、その罪人の名前を市民が呼ぶ市民達が、舞台へつめよる。


モスコーフ帝国市民兵、騎士は剣を抜き、市民を威圧し押し戻した。


丸太に縛られ、舞台中央に立てられた罪人は…


女性だった…




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