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第7話 ファビの治療 1

異世界召喚 101日目


イシュ王都を出発し、4日目




宿場町セベリの町の住民達が朝食を食べ終わる頃、博影、ブレダ、チェルは、システィナ達がいる天幕にたどり着いた。


クーノィ、ウーノィ、ティラの3人の体調はかなり回復してきており、かなり薄めのシチューも食することが出来るようになっていた。

おそらく、数日中には、ここを出立できるようになるだろう。


再度、魔法陣で3人の身体を活性化させた。何度も平伏するブレダやクーノィ達三人に別れを告げ、宿場町セベリに向かった。


宿場町セベリの宿屋に着くと、マクシス将軍が先に出発の準備を済ませ、船着場で待っているという。

すぐに、宿で出発の身支度を済ませ、ダペス家騎士2人と川辺の船着場に急ぐ。


ダペス家騎士2人は、ここ宿場町セベリを拠点とし、近くの小都市へ足を伸ばし、情報収集しながらセベリで連絡を待つという。

道すがら、テュルク族の話をし、セベリ郊外のブレダに会いに、この後すぐに情報収集へ行くように頼んだ。


川辺の船着場で待っていたマクシス将軍への説明もそこそこに、マクシス将軍、博影、システィナ、ルーナ、チェルは、貸切の川舟に乗り出発する。


出発が遅れるであろう事を見越し、マクシス将軍は、船頭を2人から3人へ増やしていた。

あまりに急ぐと、怪しく、目立ってしまうが、今日中に、宿場町ルセに着かなければならない。


ほぼ徹夜で行動していた博影達は、川舟の船底へ術袋から取り出した干草をひき、シーツをかぶせ簡易ベッドを作ると…

あとのことは、マクシス将軍へお任せし、3人と一匹…固まって眠りについた。


システィナ、ルーナ、チェルは、昼過ぎには起き、昨夜の出来事をマクシス将軍へ説明した。

博影は、魔法陣を最大力で展開させ、叉、数時間持続的に魔法陣を展開させ続けたことで、かなり疲労していた。

博影が、目を覚ましたのは…日が落ち、月夜の明かりに照らされる宿場町ルセに到着した時だった。


宿場町ルセでは、みなで宿屋裏の酒場で夕食を取ったが、酒場が若干異様な雰囲気だった。

大きな声を出すものはなく、みな一様に顔を突き合わせながら喋っている。

博影達巡礼者や、商人などのよそ者を気にしている風には見えないが、あまり居心地はよくない。


お酒もほどほどに、部屋に引き上げた。



翌朝…


夜明けと同じくして宿場町ルセを出発する。


通常であれば、馬を乗り継いだとしても城塞都市グリナまでは2日はかかる。しかし、魔法陣を多用し馬の疲労を回復させながら急ぎ、真夜中、午前零時を過ぎる頃にグリナに着いた。


普通、人口1万人を超える規模の城塞都市、叉交易が盛んな都市では、複数名の門番を常駐させ、一日中正門は開けている場合が多いが、グリナの正門は閉じていた。



マクシス将軍によると、普段は開いているが、5日前に……


太陽を崇める、聖イリオス教の司教が、モスコーフ帝国への反逆罪で拘束され、投獄されたらしい、

警戒の為、日の入りと共に門を閉めているようだった、

マクシス将軍の名を使えば、容易に正門は開くが、下手に目立つことをせずに、城壁外に天幕を立てた。


翌朝、日の出と共に正門が開き入城するが、城塞都市グリナの市民証を持たないものへのチェックは厳しかった。

一時ほどかかったが、無事グリナへ入場することが出来た。


城塞都市グリナ…人口約2万人


カラデニス海に通じる、港町スタンツァや港町ガリアからの海の交易品と、東ドウイ川上流からの交易品があつまる。

物と人が行きかう都市…交易都市として賑わう都市である。


多様な価値観の者達が集まる都市、地域のため、自由な気風の風土であり、そのため太陽神の元、多種多様な神々を認める聖イリオス教を信仰する人々が多い地域であった。



寛容な教えであるため、人に寛容になれる。

人に寛容になれるからこそ、寛容でない統治には反感が強くなる。

その象徴に聖イリオス教の司教が祭り上げられ…結果、投獄となったようだ。



マクシス将軍によれば、聖イリオス教の司教や司祭による陳情は多々あったようだが、


…反逆罪を疑われるような、不穏な動きは聞いたことはないが…


と、若干訝しがっていたが、今の博影たちには関係のないこと。

マクシス将軍には悪いが、博影は聞き流していた。


「ここだ」


マクシス将軍は、一軒の大きな宿へ博影たちを案内する。2階へ上がり、奥の一室へ向かう。


…トントン…


「はい、どなたですか?」


扉の向こうから、若い女性の声が聞こえた。


「フェビアン、私だ」


マクシス将軍が答えると、すぐに扉が開き、中から、20代と思われる女性が出てきた。

部屋の中に入る。


「将軍、よくぞご無事で…」


女性は、胸元に右手をそろえ頭を下げる。どうやら、その身のこなし…騎士のようだ。


「フェビアン、その方こそ長い間ありがとう」


マクシス将軍のねぎらいの言葉で、顔を上げた女性は微笑み、そして、傍らに立つ博影たち若い3人を見て

若干不安そうな顔をした。


「博影、さっそく…」


マクシス将軍に促され、奥の部屋に入る。そこには、ベッドに横たわった…痩せて骨が浮き出て見える少女がいた。


「お父さん、お帰り」


顔を扉へ向け、笑顔で将軍へ語りかける。


「ファビ…」


将軍は、少女に近づき優しく抱きしめた。


「ファビ、がんばったね。あの治癒師に来てもらったよ。診てもらおう」


将軍とファビの抱き合う姿に、沙耶の姿を思い出す。


…沙耶、どうしているだろうか…


「親父殿、ではさっそく」


マクシス将軍を促す。


「うむ、頼む…」


博影は、少女のベッドの傍らに立ち、他の者達は、後方へ下がらせた。


ファビは、顔色も悪く、呼吸も苦しげだった。


魔法陣を出現させ、頭部からつま先までスキャンする。すると…



…これは…心房中隔欠損症か…穴は…3cmほどか…

…又、脈をとってみると、不規則だった…



心臓は、イメージ的にいうと上2つ、下2つの部屋で出来ている。

心房中隔欠損症とは、その上の2つの部屋を分けている。

真ん中の壁に穴があいている状態である。

そうすると、右と左の部屋が繋がってしまい、血液が行き来することが出来るようになる。

そうなるとまずい…


なぜなら、右の部屋と左の部屋の圧は違っていて、肺に血液を送る経路の右の部屋より、全身に血液を送る経路の左の部屋の方が圧が高い。

穴が開き、血液が行き来できるようになると、右の部屋の圧も高くなり右の部屋から血液を受けている肺に、高い圧の血液が送られ肺が高血圧になる。


肺が高血圧になると、肺の機能が低下し、取り込む酸素が不十分になる。


取り込む酸素が不十分になると、疲れや息切れなどが強くなり、体を動かすことが少なくなる。


少なくなると、廃用症候群を起こし、全身状態が、より悪くなっていく…

という、負のスパイラルに陥っていく。


そして最終的には、心不全を起こす。


スキャンしていた魔法陣を消し、足元に魔法陣を出現させ、ゆっくり回転させていく。



まずは、3cmほどの穴の周りの細胞を活性化させ、細胞分裂を促し、穴を埋めていく。

穴を埋めると、左右の心臓の動きをチェックする。


肺の血管の状態を確認、身体を活性化させ損傷している血管は修復する。

そして、この2年間で徐々に低下してきたとの事だったので、急激に身体を活性化させると、体がついていかない。


二時間かけ、ゆっくりと身体を活性化させた。


ファビは、息苦しさから開放され、

全身倦怠感から開放され、

自分の体が、良くなりつつあることを感じ、安心したのであろう、すやすやと、寝息をたて眠りだした。


「親父殿。これで大丈夫だと思います」


博影が振り返り、マクシス将軍へ告げた。


「ただ、心臓ですので、しばらく経過を見たいと思います。2~3日様子を見させてください」


将軍は、ファビの傍へ行き、顔色の良くなった娘を見て、ただゆっくり頭を…ほほをなでた。


疲れた…と椅子へ座った博影の足元へ、マクシス将軍が近づき、片膝をつき頭を下げる。


「博影、なんと礼を言えばよいのか…なんと言って、この気持ちを伝えればよいのか…」


マクシス将軍は、顔を上げることが出来ない。


「親父殿。親父殿が、娘を思う気持ちに私は通じるものがあった…それだけの事です。

私は、治癒師の立場でこの場所にいますし、親父殿は、ファビの父親としてこの場所にいる。

気は早いですが、今夜はファビを交えてこの部屋で祝杯をあげましょう」


博影は、椅子から立ち、マクシス将軍へ立つように促す。

システィナや、ルーナたちも、マクシス将軍や、フェビアンに声をかける。


いまだ、モスコーフ帝国領内で、最大の注意が必要なことに変わりはないのだが、博影は、旅の目的が達成でき、大きな安堵感と、幸せな気持ちに包まれ、旅がまるで終わったかのような気持ちになりつつあった。




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