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第6話 見捨てられた者達

異世界召喚 100日目


イシュ王都を出発し、3日目





店じまいをしている馬商人を、無理やり起こす。


…このシチュエーションも二度目だな…


と、博影は苦笑し馬を2頭買う。


二人ずつ馬にのり森へ向かう。二人ずつというのは…結局、システィナだけでなくルーナとチェルもついてきた。


今宵は、月夜…右半分が輝く、上弦の月夜である。星座は見知ったものはなかったが…月夜は同じだな…と思う。

前世界に比べれば、少し小さい月ではあるが…


女性の名は、ブレダと言った。

ブレダ・博影を先頭に、馬を駆けていく。チェルは、馬を驚かさないように離れてついてくる。


そして、小さな小川そばから森の中へ入ると、三角錐の天幕があった。

馬を近くの木につなぎ、術袋から干草や果物を取り出し与えておく。


天幕に入る前に、薄くアルコールで濡らした布で4人とも口を覆う。

水で濡らす程度でよいのだが、念には念を入れる。ちょっと刺激が強いが、我慢できる程度だ。


天幕に入ると、男2人、女1人寝ている。3人とも手や顔にしわがより、とても、20代には見えない。そして、意識が朦朧としているようだ。



さっそく、3人まとめて魔方陣でスキャンする。


胃には問題はない…小腸…か…小腸に多くの菌が繁殖しているようだ。

小腸の壁に菌がつき、毒素を吐き…その毒素で、小腸の壁がやられ水分が大量に失われているようだ…脱水症状が見られる。


…やはり、コレラのようだな…


博影は、システィナとルーナに、まず小川の水を汲み、天幕の外で術袋から出したかめに入れ、燃える水と薪で水を沸騰させるように指示した。

中に少量の塩を入れる。そのかめを天幕内に運ばせ、魔法陣を起動する。



小腸に繁殖している菌を消滅させるイメージを作る。かなり、多量に繁殖している。

そして、損傷している小腸の組織を修復…小腸の機能を活性化させる。


魔法陣をかめを置く場所まで広げる。

沸騰させたかめの中のお湯を、人肌以下に冷まさせ、ゆっくり3人の胃へ、小腸へ流し込んでいく。


活性化された小腸は、塩を含む水分を徐々に取り込んでいく。

二時ほどかけ、ゆっくりとすすめ、最後に全身の機能の活性化と、皮膚の活性化を行い終了する。


傍らで、心配そうにブレダが見守る。


「ブレダ。これでおそらく元気になっていくと思うよ」


と、博影がブレダに告げると…ブレダは、泣きながら何度も、何度も、土に頭をつけ博影に感謝をする。

喜び、泣くブレダを起こし…


「明日からは、消化の良いものを食べさせていくといい。それと、水は煮沸したものを使用すること。生野菜は、食べないこと。

嘔吐したものや、糞便は直接触らないように処理する。

また、その嘔吐された場所や周りの道具などは、強めのお酒をまくか、布に湿らせて拭いて消毒すること!」


と、今後のことも考えブレダに指示した。


魔法陣で、身体を活性化させたまま…一時ほどすると、体温が下がり、冷たくなっていた3人の体は体温が戻り、しわしわになっていた皮膚も血色を取り戻していった。顔に生気が出てきた。


…うっ…ううっ…


3人とも意識が、はっきりしてきたようだ。


「クーノイ、ウーノイ、ティラ…私がわかる?」


ブレダが、3人へ声をかける。


「ブレダ…俺達は助かったのか…」


クーノイが、うめくように話す。


「そうよ、もう大丈夫、大丈夫だよ。この人が、博影が助けてくれた…」


ブレダは、嬉しさのあまり泣きじゃくり、もはや声にならない。


「そうか、我ら3人を助けていただき…なんとお礼を言ってよいのか…博影殿…感謝の言葉もない…ありがとう…」


「今はまだ、しゃべらないで。別な天幕を用意したので、そちらへ移動しよう」


システィナと、ルーナに横に別に天幕を用意させていたので、そちらへ、一人一人抱えながら移す。

せっかく、回復に向かっているので、清潔な環境で万全を尽くす。

3人は、あたらしい毛布と、暖かな天幕でゆっくりと眠り始めた。


「ブレダ、明日の朝、再度様子を確認したいから、今夜は、横にもう一つ天幕を張って寝るよ」


ブレダにつげ、天幕を出ようとすると…


「博影様、お待ちください」


ブレダに呼び止められる。


「実は、まだ助けていただきたい者がいるのです」


ブレダが、また博影の足元にうつ伏した。しかし、ブレダは、うつ伏したまま…なかなか言い出せない。


…そうか、もしや…


博影は、察した。


「ブレダ、もしかして村の者が…多くの村の者も、コロリ病にかかっているのか?」


博影は、ブレダの左肩に手を置く。


「…はい、その通りです…」


ブレダは、さらに地面にうつ伏した。


「そうか、わかった。村の者達は、どこにいる?」


博影の言葉にブレダは救われる。


ブレダによると、ここより山の方角に馬で半日の距離にある、ゴルジという湖の湖畔にいるという。

システィナと、ルーナに3人の世話を任せ。ブレダとチェルと、今からゴルジ湖畔へ向かうことにした。


ブレダ達が、ここまで来た際に乗ってきたヤギが、天幕の奥に繋いであるという。

途中、険しいところもあるので、そのヤギに乗っていくことにする。



…ヤギか…かなり時間がかかりそうだが…



しかし、暗闇の中にたたずむ、そのヤギは…馬ほどの大きさと、黒い…大きな巻貝のような角を二つ頭に生やし、とても、ヤギとは思えない、威風堂々とした生き物だった。


速さは、馬に負けるが、持久力、瞬発力ともすばらしい能力だった。

博影は、魔法陣を多用し、黒ヤギ二頭の体を活性化させ、ゴルジ湖畔へ急いだ。約三時間ほどでつく。


そこは…まるで、見捨てられた者たちが集う場所であった。墓場であった。



ブレダによると…


一月前…部族内に、コロリ病にかかったものが現れ、なんとか、治そうと試みていたが瞬く間に、周りの者達へ広まった。


部族が生き残るため…コロリ病にかかったものを、この湖畔に集め…他の者は、避難している。


ブレダ達が、一縷の望みをかけて、あちこちの都市を回り、薬や治せる治癒師を探していたらしい。

しかし、その途中…

クーノイ達三人もコロリ病を発症した。


ブレダは、途方に暮れ、近くの宿場町セベリに来たところ、瀕死の少年の治療を行った博影に会った…との事だった。


5つの大きな天幕があり、その中を覗いていくと、生きているか、死んでいるかわからない干からびた人々が、隙間なく体を横たえていた。


三つ目の天幕の中を覗くと、一人ゆっくりと立ち上がり、近寄ってきた。


「父さん?」


ブレダが、声をかける。


「ブレダか、なぜ戻ってきた。すぐに、去りなさい」


父さんと呼ばれた男が、弱々しいがしっかりとした口調でブレダに声をかける。

どうやら、一人残り、亡くなっていく者を見取っていたらしい。


「父さん、コロリ病を治せる治癒師に来てもらった。博影様、お願いします」


「治癒師?…治癒師殿…来ていただき、ありがとうございます。しかし、残念ながらもはや手遅れです。全員、意識が混濁しています。

あなた様にコロリ病がかからないうちに、どうかこの場を離れていただきたい」


その男は、博影に深々と頭を下げた。


「まずは、やってみましょう。あきらめるのは、それからでも良いでしょう」


博影はそう言うと、術袋から先ほどと同じようにかめや薪、塩、燃える水を取り出し、ブレダに水を汲んでこさせお湯を沸かす。


五つの大きな天幕のほぼ中心の位置にかめを持っていき、そして、魔法陣を出現させる。


魔法陣を拡大させ、五つすべての天幕が魔方陣内に収まるようにする。

およそ直径120m。これほど大きな魔方陣は、博影にとって初めてだった。


そして、クーノイ達に行ったと同じようなイメージを…およそ、300人に対して行っていく。


小腸に繁殖している菌を消滅させるイメージを作る。そして、損傷している小腸の組織を修復…小腸の機能を活性化させる。


そして、沸騰させた、かめの中のお湯を、人肌以下に冷まさせ、ゆっくり300人の胃へ、小腸へ流し込んでいく。


活性化された小腸は、塩を含む水分を徐々に取り込んでいく。

二時間半ほどかけ、ゆっくりとすすめ、300人全員の全身の機能の活性化と、皮膚の活性化を行う。


クーノイ達と違い、ほとんどの者はかなりの重症だった。まだ、全身の機能の活性化をし続けたほうがいい。

黒い術袋より、手のひらほどの魔石を取り出し、小腸のコレラ菌の消滅と、小腸の活性化、全身機能の活性化、皮膚の活性化を、イメージし博影の魔力を魔石に流し込む。

そして、魔石はかめの中に入れる。


これで、およそ5年ほどは、このかめを中心に120mの範囲で効果が続くだろう。


ブレダが、父さんと呼んだ人は、テュルク族の族長でウルディと名乗った。


族長ウルディと、ブレダにお願いをする。


「まだ、これで終わりではありません。環境を清潔にしなければならない、部族のものを呼び戻し

新しい天幕へこの人たちを移し、体を清潔にし、着替えさせてください。

そして、この天幕や着ていたものはすべて燃やしてください」


叉、再度口から移ること、嘔吐物や糞便の処理をしっかりすること、アルコール消毒のことなどの、注意点を伝える。


どうやら、徐々に意識を取り戻してきた者が出てきたようだ。すこし安堵し、その場に座り込んだ。


いつのまにか、チェルが傍らにきており、まるで…ご苦労さん…とでも言うように、博影の顔をなめる。


博影は、憔悴しきりもはやチェルをどける力も残っていない。ただ…もうチェル、十分だよ…頭をなでるだけだった。


「そっ、その魔物は雷獣か? 雷獣の幼生か…? 博影どのには、驚かされることばかりだな…」


ウルディと、ブレダは、何度も、何度も博影にお礼を言い続けた。


そろそろ、周りが明るくなってきた。博影たちも、急ぎの旅の途中である。ウルディに、用事が済んだら叉、寄る旨を伝える。

魔石を入れたかめは、5年は使えるので、みなが元気になったら、もって行くように説明した。


疲れ果てていたが、急がなければならない。ブレダにお願いし、叉宿場町セベリに向かった。




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