第21話 公都ルピア殲滅戦 後&(温泉)
異世界召喚 85日目
ルピア公国が、都市ゼンダに騎兵・歩兵を集め
戦の準備を行ったことから始まった、イシュ王国とルピア公国との戦は
公都ルピア落城、ルピア公国騎士団の壊滅という結果となった
イシュ王国軍も、公都ルピアを手に入れたが、
城塞都市ルピアに前線拠点を築くことが精一杯で、とても南部の都市に手を伸ばし
どれほどの兵力を集めているかわからない、モスコーフ帝国軍と戦うことは出来ない
公都ルピアは…
司令官・ガヴイル・ブルガ公爵、副官・騎士バチキ・シュワンが、施政者としてしばらく収めることになった
騎兵1500名
歩兵4000名
も、しばらくそのまま守備隊として常駐することとなった
拠点作りのため、スポイツアから、カローイも呼ばれていた
…異世界召喚 85日目…
戦が終わり2日後、ルピアへ商隊が到着し、場内地下一階の炎で焼かれた騎士たちの処理を始めた
鎧や武器を一通りすべて剥ぎ、遺体は城塞都市ルピアの裏門へ運びドウイ川へ流す
地下一階から森へつづく脱出トンネルは、森側にあるドウイ川へ通じている大きな排水扉をひらき
2000名の市民兵をそのままドウイ川へ流した
騎士は、丁重に葬る…との案も出たが、黒騎士の案でドウイ川へ流すことにした
ルピア城把握や、周辺の地理の把握などなど、守備隊はすることが山積みであった
そのような状態で、葬る作業までしたら、拠点作りが遅れる
敵への見せしめ、叉ドウイ川へ多くの遺体を流し
下流の水を汚染し、下流にある敵の都市の生活へダメージを与える
との黒騎士の案であった
ブルガ公爵は、こういう時の博影の心情は理解できないときもある
王子達や都市ゼンダの親子など、幾人かを救ったかと思えば…
このように、勝つためには、
状況を有利に運ぶためには
この世界でも、なかなか行わないことを、非情に徹し提案し実行する
公都ルピアに残っていた、2000人の下級市民は、そのまま、今までどおり暮らすことを許された
そして、博影は…
「失礼します」
公都ルピア城の2階にある執務室の扉を開けて中に入る
今は、防衛や城塞都市の内部の確認などで、執務室前の衛兵も置けないほど、忙しい状態であった
「博影、そこに座ってくれ」
ブルガ公爵に促され、博影とルーナ、システィナの3人は一礼して椅子に座る
ブルガ公爵と騎士バチギは、話し合いを中断し博影へ体を向けた
「博影、呼び出してすまなかったな。体調はどうだ?」
やや疲れている表情で、ブルガ公爵が博影に聞いた
「ブルガ公爵、もう大丈夫ですよ。戦が終わって2日…ゆっくり休ませていただきました
そろそろ私も、なにかお役に立てることがあれば、働きたいのですが?」
…やれやれ、こいつのお人好しぶりにもすこし腹が立つな…
と、システィナは博影のつま先を軽く踏んづける
…うっ…と少し博影の表情が変わるが、そのまま公爵と話し続ける
「いや、博影。いまは治癒師としての仕事も特にないし、モスコーフ帝国も、しばらく戦を仕掛けてはこないだろう
よって、博影には、一足先にイシュ王都への帰還を命じようと思っているのだが?」
ブルガ公爵、騎士バチギ…2人とも博影が喜ぶだろうと思い、口元がほころんでいる
博影は、しばし黙り込んだ
…んっ? うれしくないのか?… 騎士バチギの表情が若干戸惑う
「ブルガ公爵、一足先に王都への帰還の話、大変ありがたいです。娘とも会いたいですし…
しかし、この城塞都市ルピアは、前線拠点として大変重要な都市、
カローイたちも、まだまだ仕事があるようです
私も、もうしばらく、残らせていただけないでしょうか?」
笑顔の博影とは対照的に、システィナは
…この馬鹿!…
と、声が聞こえそうな表情…ルーナは、なぜか嬉しそう
意外な返答に、公爵は腕を組み苦笑いする
「博影、それはありがたい申し出だが、我々は、博影に王都でしっかりと養生してもらいたいのだ。
この度の戦、博影には、感謝している
おまえなしでは、1500人の騎士を残したまま、この戦に勝ち、公都を占拠することは、出来なかっただろう
今後再び、モスコーフ帝国に動きがあった際には、ぜひ、また、おまえの力を借りたいのだ」
騎士バチギらしからぬ、物言いに…いや、騎士らしからぬ物言いに、システィナは、内心驚いた
身分のない博影に、上級騎士がこのようなもの言いをするとは…たしかに、今回の博影の果たした役割りは大きかったが…
戦ばかりの、人々の心がすさんでいるこのような世の中で…
いや、このような世の中であるからこそ、
最善をつくし、協力する博影に…その仲間を助けようとする、自己犠牲の姿勢に…
一目置いているのだろう
システィナは、なぜかすこし顔がほころんだ
「と、いうわけだ博影。カローイ達も、ギュラー砦から連戦で疲れている
早めに王都への帰還を命じるつもりであるから、博影達は、先に帰還してカローイたちの報告をすれば
ダペス家の者たちも喜ぶと思うぞ」
ブルガ伯爵は、カローイたちを残して先に帰りにくい博影の考えをも緩め、後押しする
「ブルガ公爵、ありがとうございます。では、一つだけしたいことがありますので、それを行って報告してから、王都へ帰還してよいでしょうか?」
…それは構わないが、なにをしたいのだ?…
とのブルガ公爵の問いかけに
…出来てからご報告します。すこし、城内の庭を掘らせていただきます…
と、かわし執務室を後にした
城内を出て、システィナとルーナも…なにをしたいのか?…博影に問うが
博影は、ついてくるように話し答えない
ルピア城、敷地内の奥の井戸の前に来た
「昨日、城内を散策しているときに、この井戸のことを知った。この井戸は、ろう城用に深く掘られているようだが、生暖かい水が沸いている。だから…」
とまで話し、博影はアーチェリーを取り出し、井戸の中に魔法陣を出現させ、回転させ始めた
矢を引き、井戸の奥底を狙い放つ
慎重に一矢ごと…
その一矢ごとに、井戸の底は深く、深く掘られていく
4回矢を放ったとき、
しばらく待つと井戸の上から水がゆっくり溢れ出してきた
それは、水ではなくそのまま触るには熱い温水だった
その後、ブルガ公爵へ報告し、許可をもらい市民200名を使役し、井戸を囲むように風呂用の建物を作らせる
中には、大きな浴室と脱衣場をつくる
そして、湧き出てきている温水の半分以上は、木材で水路を作り、貴族エリア、市民エリアへと城壁を通し流していく
そして、それぞれのエリアに大きな浴場を作らせた
黒い術袋のなかの、拳より小さめの魔石を取り出し、
傷の回復、細菌感染の回復、疲労回復、精神のリラクゼーション効果
などを魔石に念じ、温泉井戸の中へ放った
浴場は、急ぎ作らせ1週間で出来上がった。ブルガ公爵へ、造った意図も含め報告する
前線拠点として、戦が考えられる都市に治療効果のある浴場が出来たことを、ブルガ公爵は大変喜んでくれた
…これで、少しはこの城塞都市の騎士、兵や暮らす人々のためになれば…
ブルガ公爵に失礼して、博影、システィナ、ルーナの3人で城内の浴場を使用してみた
博影は、なかなか良い効果だと感じた
ちなみに、一緒に入ったことで、ルーナとシスティナから少し迫られたが、キスまでに押しとどめた
その、数日後…
博影、システィナ、ルーナとカローイ、ダペス家騎士10名は、ブルガ公爵、騎士バチギへ挨拶を行い、公都ルピアを出発し王都へ向かった




