第16話 公都ルピア殲滅戦 3
異世界召喚 83日目
スポイツアを出発し4日目、昼過ぎ…公都ルピアが見えるところまでたどり着いた
ドウイ川に接する裏門をのぞき、公都ルピアをぐるりと囲むブルガ公爵の本陣へ向かう
衛兵に伺いを立てると、すぐに本陣天幕へ通された
天幕内には、博影、ルーナが入る。中では、ブルガ公爵と騎士バチギが椅子に座り作戦を練っていた
「ブルガ公爵、お忙しいところお邪魔しまして申し訳ありません」
深々と一礼する
「よい、堅苦しい挨拶は抜きだ、顔色がよくなったようだな。で、話の内容はなんだ?」
2人を手招きで椅子に腰掛けさせ、水をすすめる。博影は意を決し…
「公爵、公都ルピアの降伏を認めてはもらえないでしょうか?」
「あぁ、別にかまわない、もちろん内容次第だが…」
あっさりと、意見を取り入れてもらえるなど考えてもいなかった博影は、次の言葉が出てこない
騎士バチギが、割ってはいる
「博影、状況は変化した。公都ルピア以下、南の都市はすべてモスコーフ帝国へ降った
そのため、我々は城塞都市ルピアを無傷で手に入れ、前線拠点としたいのだ
ルピアをモスコーフ帝国に取られると、ドウイ川を上りイシュ王都へ攻めあがりやすくなるからな」
「だが…公都ルピアへ、降伏勧告の矢文を放ち一時たつが、なんら、反応を示さない
城壁の上に兵も見当たらぬし…騎兵200と、歩兵4000くらいは、残っているはずなのだが…
このままでは、らちが明かぬし歩兵を先行させ、城壁を登ろうかと考えている
門は壊したくないしな」
騎士バチギは、なにか罠があるのではないかと考えている
イシュ王都軍も、度重なる戦で騎兵が消耗している
南の都市が、モスコーフ帝国に下った為、公都ルピアを無傷で手に入れ、この軍でそのまま守備に就きたいと考えているようだ
「ブルガ公爵、騎士バチギ。私たちに先行させてもらえないでしょうか?
なにもなければ、そのまま門を開けますし、伏兵があれば、魔方陣の力で若干時を稼ぎ、力で門を壊します」
ブルガ公爵はしばし、考え…
「わかった。敵の策にはまり騎兵を損失するようなことは、避けたいと考えている
我が部隊にとっても、ありがたいことだ。だが、博影、無理はするな
もし、敵が待ち構えていた場合、すぐに引け!」
その後、打ち合わせをし正門へ向かった
「小国の商業都市といえど大きいな」
ダペス家の騎士が、城壁を見上げ感心する
「たしかに、南部の都市がモスコーフ帝国に降った今、ここを前線拠点にすることが一番の良策だな
これ程の規模の城塞都市なら、帝国軍も簡単には、攻めてこれない」
システィナも、城壁を見上げた
治癒師の格好から、黒の甲冑を着け黒騎士へと変わった博影(黒騎士)。そして、ルーナ、システィナ、ダペス家騎士10人も、皆動きやすい鎧と剣で武装した
ブルガ公爵と、騎士バチギに一礼し突入の準備に入る
黒騎士(博影)は、魔法陣を城壁上部へ向け斜めに展開させ、回転させ始めた
その魔方陣へ、ダペス家騎士10人が次々に飛び込む
魔方陣に吸い込まれ、次々に城壁上部へ打ち出されていく
ルーナ、システィナ、黒騎士と続く
城壁上に集まり、公都ルピアをみなで見下ろす
王都イシュほどではないが、大きい
公都ルピアは、都市の中央に貴族エリアや城を配置していない。裏門のドウイ川に接する方に、貴族エリアや城を配置しているようだ。奥に、低めの城壁が見える
しかし…都市は閑散とし、人は見当たらない。人の息づく様子が見られない
城壁の階段を警戒しながら降りていく
城壁上部には、連絡係として2名残り、正門周辺を見張る
他の騎士は、博影より先に進み、3mほどの間隔で散開し周囲を警戒する
動きがすばやく、迷いがない
この10人の騎士は、みな若くまだ20代ばかりだが
さすが、カローイと様々な戦場を渡ってきただけのことはある
騎兵としての経験だけではない
正門へたどり着き、周囲を警戒しながら跳ね橋を降ろし、正門を開く
ブルガ公爵は、数名の騎士と城壁上に上がり周囲を確認する
騎士バチギは、正門を入ったところで、正門の外と中に騎兵部隊を分け、警戒させる
歩兵は、約500人ほどが、20~30人ほどの小隊に分かれ、都市偵察に散っていった
城壁上で警戒していた2名も加わり、博影達は、騎馬を受け取り大通りをすすむ
貴族エリアへ向かう。まったく人の姿が見えない
「待ち伏せと考えていたが、違うのか…?」
13人は、大通りを騎馬で円陣の隊列で、進んでいった
貴族エリアの城壁にたどり着く、同じように魔方陣を使い、城壁に上がり門をあける
まだ、ブルガ公爵たち後続の部隊は来ていない
周囲を警戒しつつ、先に城へ向かう。城の正門もあけ、城の中に入る
「ここにもいないな…これほどの城塞都市をみすみす明け渡すとは思えないが…」
システィナも、傭兵時代を通じ、このような事は初めてだという
「ですね。敵に奪われるくらいなら、火で燃やしますね」
ルーナや、ダペス家の騎士も同調する
ブルガ公爵も、部隊を都市へ入れた後、火計を仕掛けられることを危惧し、正門の中と外に本陣を構えている
ブルガ公爵たちは、すべて確認しながらすすんでくるので、おそらく、城へたどり着くまでに二時ほど掛かるだろう
ブルガ公爵を待たずして、城の内部を捜索するわけにもいかず、博影達は、入り口の大広間に留まった
「あれは、黒騎士ではないのか…?」
甲冑の口元の隙間より、広間で休憩している黒騎士を見て、言葉の主は驚愕する
「おそらく、100人切りの黒騎士だな。黒の甲冑など、普通つけんわ、間違いないだろう」
広間の壁に、陳列してある数体の甲冑の一つ…その口元より、黒騎士達を覗く影があった
「これは、貧乏くじを引いたと思っていたが、いやいや、俺らは当たりだな」
その男は、黒騎士から目を離さずにほくそ笑んだ
「やるんで? 命令は、監視ですぜ」
「おいおい、敵本隊は遠く離れた正門にいて、わずか13名だけでノコノコと俺らの前に来た。手早く片付ければ、俺らの存在も知られまい」
男たちは、そっと甲冑よりはなれ、覗き穴へはめ石を戻し去っていった




