第14話 公都ルピア殲滅戦 1
異世界召喚 79日目
都市ゼンダ攻略戦後‥2日目の夕方‥
「どうだい、博影の様子は?」
一階へ軽食を取りに来たルーナへ、食事を中断しカローイがたずねた
「見た目は、普段通りですが、部屋から出る気力が‥わかないようです」
カ
ローイに目を合わせ、寂しげな口元で答えた
「そうか、やはり都市での戦には参加させるのは‥」
カローイは言葉を飲み込んだ、別に、ルーナやブルガ公爵を非難しているわけではないのだ
「遅かれ早かれ、都市での戦はいずれ経験することですし、まだ、都市ゼンダ戦は市民の数が少なく、良かったと思います」
「そうだな、確かにいずれわかることではあるし又、世界の違う博影がショックを受ける事も、ルーナも、ブルガ公爵も予想していた事‥
ただ‥この戦でショックを受ける博影の奥底を我らが理解できぬように、博影も、この戦は理解できないだろうな」
この世界では‥国と国との戦や、小国との戦の場合、都市に住む人々を殲滅する事がある
それは普通の事である
都市は、都市の周りにある、村々への課税で繁栄している
戦で勝ち自国の利益を上げようとする場合、都市があっては課税による利益はあがらない
よって、都市を殲滅し周りの村々からの課税は、自国を繁栄させるために使うのだ
軍事拠点、商業拠点、又は周りを統治するために必要な場合は、都市を破壊せず、残し統治する
その場合でも、降伏した市民は農奴、又は奴隷とされ、適さないものは殺される
生産効率が悪いこの世界では、人口1000人の都市を維持するために、10倍の約総数1万人の村々が必要になる
「博影の心は‥時間が癒してくれるだろう…としか、言えないな‥」
「はい、公都ルピアまで、あと、都市ニャニンと都市ビザドの殲滅戦…ルピア公国に残る騎士は、僅かでしょうから、博影様の役割も終わったと思います」
「そうだな、ブルガ公爵が公都ルピアを落とし、スポイツアに帰ってくるまで2週間はかかるだろう
時間は、十分ある
ルーナ、ブルガ公爵の宿泊館は、二時後、風呂が使えるようになっている
博影を連れ出してみてくれ」
食事が終わり、一気にワインを飲みほし、カローイが席を立つ
「ありがとうございます。食事が終わり次第、勧めてみます」
ルーナは、一礼し2人分の軽食を持ち2階に上がっていった
都市ゼンダ戦後‥5日目昼‥
スポイツアへ、都市ニャニン殲滅の知らせが入る
伝令の行程を考えると、おそらく明日都市ビサドへ進軍
4日後、公都ルピアへ進軍となるだろう
その知らせを聞いた博影は‥
その後は‥ルーナや、カローイの話も耳に入っていないかのような様子だった
夕方‥
カローイ達と夕食を共にした後、
「ルーナ、すこしスポイツアの繁華街を散歩してくる。一時で帰ってくるよ」
と、ルーナに声をかけ宿を出る
夕日が落ち、
あちこちの明かりで、ほのかに灯されている通りを歩く
途中で、もはや店じまいをしている馬商人から、無理やり丈夫そうな馬を買い
まだ、あいている正門を通り都市の外へ出た
空は‥夜空は‥地上で流されている血に汚されず、大きく輝いていた
馬を止め、星々を見上げる
馴染みの星座は一つもない
…本当に違う世界に来たんだな‥と、心にしみる
ここは違う世界だ‥では、
ここの世界の価値観の中で生きていかなければ‥
しかし‥もし、自分に救える命があるならば‥
一人でも救いたい‥
このあまたの星々の下‥命一つなどなんの意味もなさない気がする
自分の考えなど、ただの自己満足‥偽善であるかもしれない
馬をすすめる
目を星空から、地上に移し
目を閉じる‥
「敵兵を多く殺した自分が‥敵の市民を助けたいと考える‥‥意味のない行為だね‥」
……
「そうだな、意味のない行為だ」
人などいるはずもない、前方の暗闇より声が聞こえた
「だが、その意味は命を長らえたものが考えて行けばいい」
騎馬が近づいてくる
「お前の意味のない行為によって生きている私は‥生きていることに怒り、お前を恨み、自分に絶望し、そして‥死にたいと思った
今でも、私の答えは出せないでいる」
「シス‥?」
「だから、生きて私の命の意味を見つけたい。お前と生きて、見つけてみたい」
システィナは、博影の右横に馬を並ばせた
「私も、博影様についていきます」
いつの間にか、追ってきていたルーナが左横に並ぶ
「博影、無理するなよ。俺は、ここで待っている」
カローイと、ダペス家の騎兵10人もいつのまにか後ろに来ていた
「では、カローイ様、行ってまいります」
騎兵10人が、カローイに一礼する
「頼む、このバカが無理な事をしないように見張ってくれ」
カローイは、剣を抜き胸元で構え出陣を送る
「いや、その‥」
冷め切った心が‥急に多くのぬくもりで満たされていき戸惑う
「泣くな博影、いくぞ」
システィナは左手で、博影の腰を叩いた
「いきましょう、いざ公都ルピアへ」
ルーナの笑顔を合図に、動き出す
カローイは、暗闇の中、すぐに見えなくなった13人の背中をいつまでも見送りながら
博影達が進んでいった方角の夜空を見上げた




