第13話 都市ゼンダ殲滅戦 2
異世界召喚 77日目
都市ゼンダには、軍隊は…騎兵隊はいない退却した。わずかにいた貴族も逃げた
市民も多くのものが逃げ、現在1500人ほどとなっている
…降伏します、お金も払います…との事だった
黙って聞いていたガヴイル・ブルガ公爵は、一言
「いまから、一時後攻撃を開始する。その際に、都市内にいるものは容赦しない。以上だ、お引取り願おう」
使者の笑顔がみるみるうちに崩れていく
…なぜですか? 私たちは降伏すると言っているのですよ 戦う意思はないのですよ…
ブルガ公爵へ、詰め寄ろうとする使者に、二人の騎士が、無造作に両脇を掴み
天幕の外へ引きずり出し、陣地外へ放り出し、剣を使者へ向けた
使者は、慌てて正門へ逃げていった
一時後、
都市ゼンダへ進軍が始まった
硬く閉まる正門へ、数騎の騎兵がロープで丸太を全速で引きずり正門へ放つ
正門は一撃で粉々になった
都市ゼンダからは、弓兵の攻撃もなく、正門の向こうに、兵士の姿も見えなかった
「後方支援部隊は、このまま待機、他の部隊は突撃する。いにしえの情けだ、苦しまぬように剣を振るえ!」
ブルガ公爵の号令の下、粉々になった正門跡へ、次々と騎兵が突入し、歩兵も続いていく
「ルピア公国軍兵士の姿が見当たらないな」
突入していく兵士を見ながら、治癒師のように白いローブを着る後方待機の博影は疑問に思った
皮鎧を着けている軽装備のルーナは、答えず傍に従う
イシュ王国軍
騎兵1500、歩兵4000の中で、おそらく博影一人が、これから起こる戦を把握していなかった
しばらくすると…都市ゼンダ内より、人々の悲鳴や怒号があふれ出してきた
…これは…どういうことなんだ…
「ルーナ…これは…軍隊同士の戦の様子ではないようだけど、イシュ王国軍は…民間人を…市民を相手にしているのか?」
正門から200m後方で待機していた博影は、ひきつけられるように、正門へ歩いていく
「都市ゼンダに軍はいません。これは、都市ゼンダへの殲滅戦です」
博影に付き添いながら、ルーナは沈痛な面持ちで答えた
正門に近づくにつれ、人の悲鳴が大きくなっていく…
しばらくすると、都市ゼンダのあちこちから煙が上がりだした
火をあちこちに放っているのだろう
正門をくぐる…そのまま都市の中央へ続く通りをルーナと歩いていく
そこは…
魔物の支配する都市となっていた
先ほどまで、共に行軍していた仲間は…
目を血走らせ
大声を張り上げ
獲物を探し走り回る
その姿は…人ではない…魔物に見えた
その魔物たちは
無抵抗の…人々を切る…
建物を壊しながら…略奪を行う…
助けを懇願する…女を往来の道の真ん中で犯す…
そこには、
男女の区別なく
老若の区別なく
大人と子供の区別もない…
ただ、ひとしく
奪われ…
犯され…
剣で刻まれていく…
広場の中央まで来た、博影は立ちすくんだ
自分の身を、女の…子供の悲鳴が貫いていく
自分の身を、人々の助けを求める声が…絶望する声が貫いていく
「なぜ…なぜ、こんなことを…」
やっと発した一言にルーナが答える
「これが、敗者のありようです…」
…これが…戦争か…これが戦なのか…ここは異世界…夢の中ではないのか…
なぜ、無抵抗の者を殺す
なぜ、弱きものを殺す
なぜ…このような無慈悲な事ができるの…か…
周りの音が聞こえなくなった
…心が…こころが、壊れる…
体がふらつきだし、倒れそうになる博影を、必死にルーナが支え抱きしめる
きゃー…うぁーん…
近くの建物の中から、子供の悲鳴が、子供の泣き声が聞こえた
とっさに、駆け出し建物の中に飛び込んだ
奥の部屋には、短剣を構える一人の女と、うずくまり泣きじゃくる小さな子供
その眼前に、剣を構える3人の兵士がいた
間に割って入る
「待ってくれ、ちょっと待ってくれ」
今にも剣を振り下ろそうと血走っていた兵士は、博影を見て気を少し和らげる
「博影殿、おどきください。これは、不義理を行ったルピア公国の市民が受けるべき償いです」
戦において見せしめを行うことは、よくあることだ
だが…だからといって子供まで
ズサッ…
「うっ…ぐぅ…」
腰に熱さを、体を貫く鋭利な痛みを感じた
女が、博影の腰に短剣を刺していた
みるみるうちに、白いローブが赤に染まっていく
「貴様―っ」
ルーナが、女に体当たりし博影より離すと、剣を振り上げ、切り捨てようとする
「待ってくれルーナ、やめてくれ。あなたたち、申し訳ない、この女と子供は、私に譲ってほしい」
殲滅戦なのだが、兵士たちも治癒師・博影の慈愛の気持ちは聞いている
「わかりました、博影様のご要望ならお任せします。しかし、傷は大丈夫ですか?」
「ありがとう、大丈夫だ。ルーナ、剣を抜いてくれ、その後、治療するから」
「わかりました」
剣を降ろし、自分のしたことにわなわなと震えている、女を目でけん制しながら、博影の腰に刺さる短剣を抜いた
博影は、魔法陣を出現させ治療を行った
…では、われわれはいきます…
兵士三人は建物より出て行った
部屋の隅で震えている、子供二人に近寄る。震えていた女は、さっと子供たちに覆いかぶさり泣き出した
「なにもしないよ、絶対になにもしない。それよりここにいると命の危険がある。さあ、僕と行こう」
ルーナにも手伝わせ、三人をなだめ、建物の外にでる
悲鳴や怒号が聞こえなくなっていた
殲滅戦も終わりを告げた
そして、火の手が強くなり都市ゼンダを焼いていく
全軍、都市ゼンダより離れ、遠巻きに、燃える様を見ていた




