第10話 ブスタ大平原の戦い 3
異世界召喚 70日目
黒騎士(博影)、ルーナは伝令兵により退却を知った
前後から、挟まれたブルガ公爵は、中途半端にあがくことをせず、すぐに退却戦に移った
黒騎士、ルーナが見守る中、つぎつぎと、騎兵がティザ川に飛び込んでいく
深手を負い、もはや聖力を使えなくなった騎士は、鎧の重みで、沈む
騎馬も、鎧の重みで沈んでいく
ここまでたどり着きながら死んでいく……人と馬‥
「ルーナ、ここは任せた」
黒騎士は、ルーナへ一言放ち川岸へ駆けだした
そして、ティザ川のほとりに、弓を射る時のように魔法陣を出現させた
魔法陣は、徐々に回転していく、黒騎士は、黒の甲冑の上に黒のローブをマントのようにまとい、魔法陣へ向け駆けだした
「黒騎士さま‥いったい何を‥?」
退却している自軍の様子を、いまだ信じられないルーナの目の前で、黒騎士は、魔法陣へ向かって走り、飛び込んだ
すっと、魔法陣に吸い込まれ…瞬時に黒騎士は、矢のように空へ放たれた
放物線を描くように、徐々に水面に落ちていく
川幅200mある、テイザ川の向こう岸近くへぎりぎり着地した
そして、黒騎士は10mほど先へ進み、魔法陣を最大で展開させた
その直径約、30m…中央に立ち、アーチェリーを取り出す
撤退してくる自軍に、魔法陣の上を通る様指示を送った
黒騎士の両隣をすり抜けていく騎士と騎馬は、魔法陣により若干身体を活性化され、川へ飛び込んでいく
一時的に活性化された騎兵は、200mのテイザ川を、なんとか流されずに渡っていく
約500の騎兵の集団が駆けてきた。ブルガ公爵と、騎士バチギ率いる殿隊である
「黒騎士、乗れ!」
ブルガ公爵が、叫んだ
「公爵、先に行ってください、足止めします。後は、手筈通りにお願いします』
ブルガ公爵は、若干迷ったが、毅然と立つ黒騎士に思う所もあり
「分かっている、貴様も無駄に命を懸けるな。必ず、来い!」
と、大声で怒鳴りティザ川へ飛び込んでいった
黒騎士の目の前には、ルピア公国騎兵隊1000、傭騎兵隊1500、モスコーフ帝国騎兵隊1700…が、隊列をなし迫ってきた
…この数、減らさなければ‥
傷を負っている自軍騎兵1000と、歩兵1000、
もしもの為に控えさせていたスポイツア守備騎兵隊500
では、奇襲しても意味をなさない可能性がある
黒騎士は、足元の魔法陣を消し、前方に魔法陣を出現させ、次々と黒い矢を打ち込んだ
一度に3人、4人と矢に貫かれ、頭を飛ばされ騎兵が倒れていく
しかし、敵軍は両翼に大きく広がり突撃してきた
「くっ、これでは足止めにもならない」
焦る黒騎士の左右を騎兵は通り抜け、テイザ川へ飛び込んでいく
正面の部隊の一団は、騎馬から降り、大盾を構え、じりじりと迫ってきた
「ここまでだな」
黒騎士は前方の魔法陣を消し、後方に魔法陣を出現させ、魔法陣へ向け駆け出す
その黒騎士へ向け、数十のランスが投げられ、黒騎士の甲冑を打つ
しかし、黒騎士はそのまま回転する魔法陣へ飛び込み、対岸へ飛んでいく
‥くっ、魔法陣の力が足りなかったか‥
自軍の兵士や騎馬への治療で魔力?を大きく使ってしまい
最初と異なり、空へ放出された勢いが足りず、対岸手前の水面に落ちた
岸まで約、10m、深さは腰下程度である
しかし、早くも敵軍は岸まで約20m程に近づいてきた
岸に上がっている時間はない
黒騎士は、敵軍へ向き、眼前50m先ほどの川底あたりに魔法陣を斜めに出現させた
本当は、まだ遠くに、川の中ほどに展開させたいのだが、体から離して魔法陣を出現させられるのは、50mが限度であった
魔法陣を回転させる…出来るだけ速く‥
すると、魔法陣が水を大量に吸い込み、後方へ流していく‥
水面には、渦ができた
近くの騎兵は、渦に飲み込まれていく
だが、両翼に広がり、ティザ川に飛び込んだ騎兵は、若干流されながらも、このままではあまり影響はない
‥まずい‥もっと、魔法陣を広げないと‥
渾身の気力をこめ、集中する。魔法陣は、直径約20m程まで大きくなり、その渦の大きさは、30m以上になり
川上の騎兵を飲み込み…川下の騎兵を押し流した
飲み込まれた騎兵は、浮かぶことなく流され
流された騎兵は、濁流にのまれ…力つき、沈んでいった
黒騎士も又、足元をすくわれ‥流されようとしたとき
黒騎士の体にロープが巻き付き、引き留めた
「ぐぅぅ、上がって来い、長くはもたぬぞ」
騎士バチギだった
騎士バチギ以下、3名の騎士が全身の力でロープを手繰り寄せる
しかし、もはや嵐の際の濁流と化した大河の流れに逆らい、引き上げる事は、困難だった
だが、黒騎士もここで魔法陣をやめるわけにはいかない
…ティザ川を渡河している敵軍を何としても‥
今後の戦に響く
スポイツアを攻められるかもしれないのだ
その先は、王都
沙耶と生きていかなければならない
…ここで、殲滅する…
ずっずっっ
バチギ達の足元がずれる、黒騎士も感じた
頭で考えるより早く、腰の黒い短剣を引き抜き
スパッとロープを切った
一瞬にして、黒騎士は濁流に流され沈んでいった
丘の上より、歩兵部隊とその光景を見ていたルーナは、騎馬で駆けだした




