第5話 異世界召喚 5
異世界召喚 3日目
【登場人物】
博影:義理の娘と共に異世界召喚された主人公。理由は不明だが、召喚された際に15歳に若返り、そして、治癒の力を持つ魔法陣を扱えるようになった。
沙耶:義理の父と共に異世界召喚された元気な高校2年生。
ティアナ:異世界召喚の儀式を行った15歳の少女、聖イシューレ教に仕える助祭。
ティアナの話から…
公爵様の命により、ティアナが自分を召喚した。
召喚した理由は、イシュ王国の王が病に臥せっており、異世界の治癒師を召喚して治療して欲しいと、考えた為。
イシュ王国は、近年、戦が続いており、この状態で王が死去すると、後継問題などもあり国の存亡の危機になる。
元の世界に戻す方法は分からないが、善処していきたいと考えている。
大まかな事は、以上だった。
ティアナは、優しい言葉を使っているが…
さらにきくと、やはりこの世界には、人の人権や平等と言った概念はないらしい。
いわゆる権利をもつ人々は、王族、貴族、騎士、市民などで、その他の農民などは、権利を有する者たちの所有物といったところらしい。又、奴隷もいるとの事だった。
という事は、無理矢理連れてこられた自分の人権などないし、呼び出した公爵に従うのが当然とする考えのようだ。
召喚された、自分達の身分はどうなるのか…
ティアナによると…
中興の祖と呼ばれる第6代イシュ国王の側近が異世界召喚された者であり、治癒術では、他と比べものにならないほどの能力があったらしく、その事が、今回の召喚の大きな理由だそうだ。
召喚された異世界人の話は数人あるが、記録として残っているのは、その側近だけらしい。
また、記録は僅かで、どのような人生を送ったかさえもわからないとの事だった。
又、公爵様は、召喚の儀式で自分(博影)が魔法陣を操り異世界召喚の生贄の女性と、動物を治療した事で、力を認めているとの事だった。
「ティアナ。あの女性と動物は助かったのか?」
「はい、博影殿の治療で命が助かり、ほぼ、元の状態まで回復しています」
ティアナも、嬉しそうに答えた。
しかし、もともと生贄の役目…その後は、どうなるのか…
ティアナによると、女性は元々騎士に準ずる立場だったらしく、功績を認められ騎士となった。
黒い動物は魔物の子供で、城の地下牢に厳重に閉じ込められている。
例え魔物といえど、力を認められた…博影殿が助けた魔物なので処分される事はないだろうとの話だった。
なにはともあれ、命が助かり有り難いし、助かった命が続いている事に安心した。