第4話 戦いの予感
異世界召喚 66日目
朝…
市民エリアでは、人々が動き始め朝市が開かれている。
貴族エリアでも、あちこちの使用人が動き出していた。
「ふ~ん、おまえはいつもそうやってご主人様をおこしているの?」
早くもチェルは、博影・沙耶の眠るベッドに上がり、博影の口元や顔をなめている。
博影より娘の事は聞いていた。しかし、一昨日までは博影の隣で寝るのは私だった。
システィナに、博影に対しての男女の恋愛は、…ない…が、ちょっと妬けるので、
私もなめて…いや、キスして起こしてみようと考えた。
「ほほ…は、う~ん年下だしな。口は、恋人ではないし、やはり、…おでこかな?」
一人ぶつぶつ言いながら、システィナの唇は、ゆっくり博影のおでこに近づいていった…
うっ~ん、沙耶がぼやっと目を覚ましだした。その目の前には、すやすや眠るお父さんの寝顔、寝顔をなめて起こすいつものチェル…
そして、お父さんの顔に、顔を近づけていくシスティナ…
「ちょっ、ちょっと何してるのっ!」
沙耶が、チェルを跳ね飛ばし飛び起きた。チェルは思った…
…ナンダ? オキヨウトオモエバ…オキレルナ…
システィナは、気にせず、博影のオデコに口を寄せた。
「だめぇ~」
沙耶は、博影の頭を引き寄せる。せっかく博影のオデコにキスしそうになっていたところを、沙耶にオデコを持っていかれ…
「んっ? 沙耶どうした?」
システィナが、不思議そうに沙耶の目を覗き込む。
「どうしたじゃないでしょう、キスはだめ!」
…いててて…
沙耶に頭をぐりっとねじられ、持っていかれた衝撃の痛さで、博影が目を覚ました。
「そうか、キスは、オデコにキスはだめか…」
と、システィナはつぶやくと、沙耶の両腕の中から、博影の頭を引き出し、自分の豊満な胸の谷間に博影の顔を押し付けた。
「んっ…んーっ」
「博影、おはよう」
満面の笑みで、システィナは博影に微笑んだ。
30分後…
顔を洗い、着替えを済ませた一同が、ダペス邸の一階食堂にあつまり、朝食を取っていた。
カローイ、ベレッタは朝から、戦功会議に出るという。
辺境伯、公爵、部隊長等があつまり、ギュラー砦戦の戦功報酬等を決め、元老院へ報告するのだという。
ルーナは、王都騎士校へ剣の練習に…
ティアナは、イシュ教会へ治癒師としてお手伝いに…
そして、博影と今日は遊ぶと言っていた沙耶は、イシュ城の女中から教わっていた下着等の作成が途中だったので、しぶしぶイシュ城へ…チェルはお供に…
そして、博影は…もう一回寝る…が
カローイより、昼前には、城へあがり国王の体調の確認をするよう言われた。
システィナは、昼まで寝ている博影の横のテーブルで、本を読んですごした。
昼、システィナと登城し国王の昼食にお誘いを受け、システィナと2人、昼食を頂きながら、国王の体調面も確認する。
かなり回復しており、1日の公務も問題なさそうだった。
夕方、ダペス邸食堂にて全員で夕食をとる。
「戦功会議の前、王都のギルド長が、今回のギュラー砦での侘びに来た。侘びとして、傭騎兵100を、半年の間無償でギュラー砦に常駐させる。モスコーフ帝国にも、その旨伝えると…」
カローイは、ナイフで牛肉を切り分けながら話す。
「ギルドが、侘びとはいえそこまでするなんて、かなり異例よね」
ベレッタが、首をかしげる。
「いや、夜襲の際、貴重な騎兵隊が壊滅させられ、センデス方面の守備の要、ギュラー砦が陥落させられそうになった。その重要性を感じたということだろう。
叉、ギルドが半年間ギュラー砦に常駐することで、モスコーフ帝国も仕掛けにくい。
実質、半年間はギュラー砦で戦はないないだろう」
多くの犠牲の上になりたった勝利であるが、ギュラー渓谷にしばらく平穏な時間が訪れることは、死者へのたむけになるだろう。
みな、その日あったことを語りつつ夜は更けていった。
翌朝、昨日のようにほとんどの者がダペス邸から出払った後、博影を訪ねて、騎士が2人やってきた。
どうやら、ギュラー砦で博影から治療を受けた騎士から話を聞き、治療の依頼に来たようだ。
2人とも、腰を戦で痛め、その痛みが続き足に痺れが出ていた。ベッドに寝てもらい、魔法陣を見られないように目隠しをし、魔方陣でスキャンする。
腰椎のヘルニアと、深層部の筋を痛めていた。ヘルニアとなっている、椎間板を椎体の間へ戻し、深層筋ともども身体活性を施し、組織を再生した。
ついでに、全身の刀傷も再生を施す…。
およそ、1時間ほど掛かったが、
2人の騎士はかなり丁寧なお礼を言い帰っていった。
博影から治療を受けると、直りきらなかった古傷や痛みが直ると、評判が徐々に広がっていき、その日から、1日5~7人の騎士や貴族が、ダペス邸を訪れた。
帰城後、10日たち戦功会議も終わった。
博影は、治癒師として金貨20枚の報酬を貰った。
これは、モスコーフ軍の武具等を換金した配当も含まれている。
博影としては、黒の術袋の中に、かなりの金貨や銀貨が納められていたので、それほど、金貨に執着心はなかった、。
治療した騎士たちの報酬も出来る限り気持ち程度で受け取るくらいだった。
戦の後処理も終わり、いよいよ王都を後にし、明日、ダペス城へ帰る日がやってくる早朝…
王都の南に位置する城塞都市スポイツアより、慌ただしく早馬が正門をくぐった。
「えっ? 相手はルピア公国なの?」
ベレッタは、信じられないと驚く。
朝から開かれていた元老院会議から、昼に戻ってきたカローイは説明する。
「あぁ、たしかにルピア公国だ。国境付近にある、ルピア公国領・都市ゼンダへ、およそ、騎兵2000、歩兵5000の兵が集まっているらしい」
「中立を詠う商業国家のルピアが、騎兵2000…ほぼ全兵力なのでは? なぜ…モスコーフ帝国と繋がっているのかしら?」
ベレッタの疑問に…
「いや、それはわからない。ダペス家は、スポイツアの守備の任を仰せつかった。今回の戦の指揮官は、ガヴイル:ブルガ公爵…
騎兵2000
歩兵3000
が、明日朝出発する。スポイツア守備隊の
騎兵500 歩兵1500
と合わせると、問題ないだろう。
相手は、ルピアの騎馬隊…侮るわけではないが、イシュ軍の敵ではない。
われわれ守備隊は、ギュラー砦からの帰還兵で
騎兵200、
明日昼出発する」
「そう…今回は、問題なさそうね」
ベレッタが、若干安堵する姿を見て、沙耶も安心した。今回の戦に父が行くことはないだろうと…




