表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/301

第3話 囚われのシスティナ 2


博影は治療所に行くというので、ベレッタが砦城壁上から、システィナに案内しながら説明した。


ベレッタに、ギュラー砦戦の結末を聞いたシスティナは、信じられなかった。


しかし、城壁上のどこを歩いても、こげた肉のにおいがする。正面眼前に兵が1人もいないことから、ベレッタの話が真実だと思うしかなかった。


今回の戦で…


6000人を焼き殺した…その重さは、勝者のはずの兵たちの口や体をも重くしていた。


博影も同様に…博影は前世界から人を助ける仕事をしていた。

博影の心が、壊れてしまうのではないかと、ベレッタは心配していた。


戦翌日から、生気なく、黙って治癒師の仕事や戦の後片付けを行っている。

その博影が、戦後2日で唯一


…自分が切ったあの傭兵は? 助けられる? 助けてほしい…


と、感情が揺れ動いた。


1人ではあるけれど、その1人を博影の傍に置くことで、博影の心が癒されるのではないかと、ベレッタは考え、事前に辺境伯と公爵に許可を貰っていた。


システィナの立ち振る舞いから、傭兵をする前は…

と思い、正門城壁上にてシスティナに生い立ちを尋ねたが、システィナは、話したくないと言った。


システィナに、どうするつもりか聞いた。

システィナは、わからない…

と答え、


少なくとも博影に、砦の者に害を及ぼすようなことは決してしない。自分の亡き、両親の名誉に誓ってしない…

と、ベレッタの目を強く見て言った。


ベレッタは、システィナにお願いした。

博影と黒騎士が、同じということは一部の者しか知らない、黙っていてほしい。今後…


この砦の戦のやり方を否定する者も表れるだろう。

100人切りの噂が広まれば…博影は、名をあげたい者達に狙われるだろう。


博影がこの策を立て、叉魔方陣を発動し帝国に打ち勝った…と言われれば、今後も、戦に利用されてしまうだろう。

だから、黒騎士のことは伏せてほしい。


異世界から来た博影を、これ以上、この世界の都合に巻き込みたくない…と…


システィナは、わかった…とだけ、ベレッタに答えた。



その日から、博影とシスティナとの不釣合いな生活が始まった。


朝、昼、夜と2人は食事をともにした。

もちろん、博影があちこち呼ばれシスティナが1人で夕食をとることもあった。


治癒師の仕事が一段落すると、博影は剣の練習や森へ行き魔法陣の練習などしていた。

システィナは、砦の中では付き添っていないが、森へ博影が行くときは、付き添った。


同じ部屋で寝食を共にしたが、2人の間にはほとんど会話はなかった。

3週間たち、ギュラー砦新守備隊が来た。

多くの兵や武器と、多くの新鮮な食料も持ってきた。


その日の夕食は、いつものパン、チーズ、干し肉ではなく、肉、野菜が多く入ったスープだった。

どんなときでも、よい食事はうれしいものだ。


博影の部屋で、2人夕食を取った。

その際、右利きのシスティナは初めて左手でスプーンを使った。

使えるが、時間がかかる。


若干、苛立ちスプーンの動きが粗雑になったとき、システィナのスープ皿が机の上で傾き、中身が少々こぼれ、左手の袖口についた。

右手のない、システィナは袖口がぬぐえない。

博影が席を立ち、布でシスティナの袖口を拭く。テーブルを拭き、席に戻り叉食事をする。


システィナは、スプーンを持てないでいた。


うつむいていた…

涙があふれてきた…


…右腕のない自分には、もはや傭兵は出来ない、戦は出来ない。家を再興することも出来ない。なぜ私は生きているのか…なぜ殺してくれなかったのか…


…なぜ、あの時…家族と死ねなかったのか…


ただ、うつむき…

声なく、涙をあふれさせるシスティナに、博影は、横に寄り添い抱きしめた。


…こんな時に優しくされるのはいやだ…いやだ、いやだ…


しかし、博影に抱きしめられたまま泣き崩れた。


泣きながら、促されるままに食事は終わらせ、ベッドで眠った。


次の日の夜から、システィナは博影のベッドにもぐりこみ、後ろから博影に抱きついて眠るようになった。


男女の関係を求めてるわけではない、ただ…


昔のように人の温もりを感じて、眠りたかったのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ