第11話 ギュラー砦攻防戦 4
異世界召喚 30日目
ようやく朝日が、稜線から顔を出し始めた朝…
ギュラー砦は、緊張していた。
砦前のモスコーフ帝国軍、野営地前に全軍が整列していたのだ。
「よし、全軍進軍!」
盾を構えた歩兵を先頭に、ゆっくり進軍してくる。
「敵軍、動き出しました」
ギュラー砦正面城壁の見張りが、声をからして叫ぶ。
「弓兵用意、落石の準備もしておけ」
イング公爵が、矢継ぎ早に指示を出す。
ギュラー砦の配置は…正門城壁上から、第2門へと続く両側の城壁上は、イング公爵率いる70の小隊、約1400人。
この部隊の役目は、正門の守りと梯子を城壁へかけて侵入しようとする帝国軍への防備…そして、もし正門を破られた場合の城壁上からの弓での援護。
第2門城壁上から、第3門へと続く両側の城壁上は、王都守備騎士率いる20の小隊、約400人。
この部隊の役目は、正門を突破された時の援護と第2門の守り。
正門を破られた場合の迎撃は、聖石を付与された武具を扱う傭兵100名。
それと、第2門の前にルデン辺境伯と治療から復帰した50名の騎士。
第3門から後は、10の小隊200名が治療所の警備を兼ねて配置。
昨夜の軍議では、正門突破への守備は、騎士と傭兵の混合部隊で…との配置案が出たが、ガス傭兵隊長より、様々な戦さ場でやって来た者が多いから、傭兵だけの方が連携迎撃を行いやすい…との強い申し出があり了承されていた。
代わりに、イング公爵からは、第2門前に騎士が騎兵で備え、突破されたら騎兵の突撃で敵の勢いを削ぐ。
との案が出され、ルデン辺境伯と治療から復帰した50名の騎士がその役目を負う事となった。
「矢を構え…撃てぇぇー」
イング公爵の号令で、100本以上の矢がモスコーフ帝国軍前衛へ降り注ぐ。
…が、歩兵部隊の盾に阻まれ倒れる兵士はいない。
歩兵部隊は、城壁にかけよじ登る為の大きなはしごを担いでいる。
しかし、ギュラー砦を攻撃するにしては、
…はしごの数が少ないが…
と、正門城壁上の兵士たちが訝しがっていた、その時…
正門城壁の橋が降りていく…正門扉が開いていく。
城壁上の多くの兵が、気付き、どよめく。
みると、正門裏に陣取っていた傭兵部隊が、正門の橋を降ろし門を開け、正門を背にし剣を抜いていた。
そして、正門裏に多く配置していた、騎馬を防ぐ丸太上の移動柵を動かし騎馬が、通れるようにしていた。
これでは、正門を突破された時に、敵を少数ずつ殲滅する策は出来ない。
「疑ってはいたが、まさか傭兵100人…全員が内通者とはな。それも、傭騎兵が…」
ルデン辺境伯は、目を大きくあけ吐き捨てた。
「辺境伯、ここは…」
「わかっている。あやつらを切り刻んでやりたいが、まずは、自分の役割を果たす」
傍の騎士へこたえ、きびすを返す。
「後方へ退却する、急げ」
ルデン辺境伯以下50の騎兵は、第2門を閉めずに第3門へ駆け出した。
「よーし、やろう共うまくいった。後は、執務室の大金貨を取りに行くぞ」
ガスは、傭兵達に叫ぶと第2門へ走り出した。
その時、降りかかる矢の雨を物ともせず、正門からモスコーフ帝国軍、騎兵隊が突入してきた。
この戦力差…
勝ってあたりまえの面白みに欠ける戦において、騎士各々の目的は、黒騎士との一騎打ちだった。
100人切りをした黒騎士を切り、名声を手に入れる。
正門を突破した騎兵は、城壁上の兵を見渡した。
「いないな、第2門へいくぞ」
内側からは、両側の壁に一つずつ城壁に登る為の階段が付いているが、城壁上の兵には目もくれず騎士達は、第2門へ向かった。
門の開いている第2門を突破すると、内通者の傭兵達が丸太を使い、第3門を打ち壊そうとしていた。
…しばらく待てば、壊せるだろう…
しかし…周りの城壁上を見渡すが、ここにも黒騎士はいない。
砦には、帝国軍がなだれ込み、内側にある城壁を登る階段を上がろうとしていた。
城壁上では、それぞれ騎士率いる小隊が騎士を先頭に敵を止め、槍で城壁内へ突き落とし、必死の防戦をしていた。
しかし、その間にも続々と正門から帝国軍がなだれ込んでくる。
「よし、そろそろいいだろう。樽を落とせー!」
階段で、防戦しながらイング公爵が叫んだ。
すると、城壁上の兵達は、傍の樽を城壁内に次々と落とし始めた。
樽は、城壁内側に落ち砕け、中の油を飛び散らせる。
瞬く間に、あちこちに油の水溜りが出来ていく。
「火を放てー」
城壁上で、いまだくすぶっていた松明が、あちこちから投げ入れられた。
バウゥゥ〜
一瞬大きな音がし…
そこは…地獄と化した。




