第9話 ギュラー砦攻防戦 2
異世界召喚 27日
「そうか…」
ベッドに横たわるカローイは、砦の前に敵が野営地を築いた事を聞き、短く答えた。
周りのベッドで治療を受けている、ダペス家の騎士達は憤慨している。
「イング公爵、ルデン辺境伯の所へ行ってくる」
カローイは、起き上がりふらふらとベッドから立ち上がった。ベレッタの制止をやんわりと止め、カローイが歩き出す。
博影が支え、不満そうなベレッタもカローイを支え、ルデン辺境伯の執務室に向かった。
執務室前の衛兵に取次を頼む。
すぐに入室が許され、3人は執務室に入った。
執務室にはベッドが入れてあり、ベッドに横たわるルデン辺境伯と、傍の椅子に座るイング公爵が、今後の事について話し合っていた。
「カローイ、博影もう動けるのか?若いな」
辺境伯が、気軽に声をかける。
「歩くだけで、やっとです」
2人に支えられながら、カローイは頭を下げた。
「3人とも、そこの椅子に座れ。カローイ、なにか考えがあって来たのだろう?」
ルデン辺境伯と、イング公爵はカローイを見た。
「はい、失礼ながら私の考えを述べさせて頂きます。今回の夜襲へのモスコーフ帝国軍の対応ですが、
夜襲を読んで罠を仕掛けていた事は、モスコーフの盾と呼ばれる、クィントス・マクシス伯爵であれば、悔しいですが理解できます。
しかし、夜襲隊を森でやり過ごして、追撃隊をギュラー砦前の森に配置するなど、援軍の陣容、夜襲隊の陣容などを詳しく知っておかないと、とても軍を二手に分ける事は出来ないと考えます」
「うむ、そうだな。その事を、ルデン辺境伯と話していた所だ」
イング公爵は、ルデン辺境伯を見た。
「第3次ギュラー砦防衛戦も、マクシス伯爵であったが、もっと手堅い戦であった。マクシス伯爵は、少数だとしても相手を見くびる事はしない。
しかも、今回はおそらく夜襲隊出発の知らせを受けるとすぐに、軍を二手に分け、追撃隊を出発させている」
ルデン辺境伯は、マクシス伯爵と戦った経験を持つ。刃を交えた相手だからこそ、戦の違いを感じていた。
「辺境伯、追撃部隊には多くの歩兵がいました。あの陣容からすると、こちらが、夜襲の準備を行う時から、こちらの夜襲を知り動いていたのではないかと考えます」
カローイは、砦内の内通者を疑っている。
「たしかに、あれ程の歩兵を連れての森の中の行軍…すると…ますます、ギュラー砦内の情報を外に流す者…内通者が、いるという事だな。
しかし、その内通者が誰か見当がつかんのだ。傭騎兵、市民兵、そして騎兵…誰でも疑う事が出来る」
イング公爵は、腕を抱え込む。
「内通者は、数人でしょうか?」
それまで黙って聞いていた博影が、不意に会話に入る。
「1人、2人…ごくわずかだと考えている」
イング公爵が、腕を組みながら博影に答える。
「タタン公爵率いる約7000の部隊は、砦の前に野営地を築いています。その陣は、隙があるように見える…そして、いくらこちらが少数とはいえ、いや、少数だからこそ奇襲を警戒する。
タタン公爵の首狙いの奇襲があると警戒する。と考えますが、馬防柵も築いていません。
これは、逆に残りの騎兵全軍での奇襲を誘い狙っているのかと…」
博影は、言葉を選びながらゆっくりと話す。
「なるほど、たしかに無防備な野営地は誘いかもしれん。しかし博影、誘いと内通者の数との関係は?」
ルデン辺境伯が尋ねる。
「内通者が多ければ、どんな奇襲であっても、内部から、又は後方から奇襲隊を攻撃し混乱させられるので、タタン公爵は慌てる必要はないでしょう」
「なるほど、博影の話よくわかる。しかしだ、イシュ王国内の貴族で内通している者がいるかもしれん、だがここでその貴族の部隊が裏切ると王国内の貴族は領地ごと滅ぼされるだろう。もし、裏切るなら王都直前の戦からだろう。
市民兵も同じく、家族を残して来ている。
傭騎兵は、ギルドを通じて雇った者、もし、ギルドの依頼を裏切れば2度とギルドから仕事は貰えぬし、これだけの戦の裏切りなら、ギルドから刺客を向けられ殺されるだろう。
と、考えると個人か2人くらいではないかと考えている」
辺境伯が答えた。
「まぁ、どちらにしても、良い話ではないな。それに、砦に篭っても数で押され結果は見えているしな」
イング公爵は、ため息混じりに苦笑する。
「そこでです。自分に大筋で案があるのですが…」
「よい、話してみよ」
ルデン辺境伯が、ベッドから起き上がり博影の案を待つ。
博影が、椅子から背中を少し離し…ゆっくり話し出した。




